も女会の不適切な日常2 (ファミ通文庫)

【も女会の不適切(アイ・ド・ラ)な日常 2】  海冬レイジ/赤坂アカ ファミ通文庫

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無慈悲にエスカレートする驚愕の否(≠非)日常系!!
〈も女会〉の日常が戻ってきた。少しの違和感と大きくズレた青春の日々。ある日ちだね先輩の〈卒業生を送る会〉の予行演習(本番は一年後)をしていると、僕たちは吹雪で学校に閉じ込められてしまった。そこで始まったのはなぜか肝試し。もちろんいつもの無軌道な活動の一環のはず……だが、それはリアル密室ホラー事件の始まりだった。〈彼女〉が変わり果てた姿で見つかったのだ! 犯人は? 動機は? いや、そもそもなぜ僕は今、〈愛〉と一緒にいるんだ?
先日、ファミ通文庫の方から連絡をいただきまして、公式販促POPの方に一巻の感想記事で書いた文章が掲載されました。見本も頂いたのですが、けっこうデカくてびっくり。文字も大きく刻まれてて、これはなかなか見た目インパクトあるんじゃないでしょうか。
加えて、献本の方もいただきました、ありがとうございます。

さて、本編の方ですが、流石に一度あんな展開を見せられたら、前半でどれだけ和気藹々と賑やかにやっていたとしても警戒を怠るはずもありません。所詮、ネタは割れているのです。二番煎じなど通用しませんよ、ぬはははは……。

なんで初っ端から普通にも女会にアイが混ざっとんねん!?

あんまりにもナチュラルに混ざっていたので、素でスルーし掛けましたがな。くぅ、まさか出鼻から仕掛けてくるとは。あらすじ読んでたら「アイ」が混ざっているのは事前に把握できていたんでしょうけれど、今回は読まなかったんで。
とは言え、彼女が加わっている事に違和感を感じないほどに、アイの存在が馴染んでいたのも確かな話。そのせいか、前回の黒幕がアイだったにも関わらず、今回もアイが何かを仕掛けてきている、とは全然思わなかったんですよね、不思議なくらいに。まあ全然不思議じゃないんですけれど。あれでアイって腹芸出来るほど器用じゃないもんなあ。嘘がつけずに態度に出てしまう不器用な性格ですから、彼女に何らかの思惑があったとしたら、露骨に表面に出てしまうと思うんですよね。それ以上に、前回アレだけのことをやらかしてしまったも女会の面々に対して罪悪感とか、居た堪れなさみたいなものをにじみだしてしまうはず。悪い子として、平気な顔で居られる娘じゃないんですよね。だったら悪いことするなよ、と思いますけれど、思い余ってヤッちゃう娘でもあるんだよなあ。……うん、確かにこれ、豆腐メンタルだ。
ともあれ、そういう違和感が全く見受けられなかった。アイ自身が、も女会に居る自分を十全受け入れている。その時点で、これは彼女の仕込みじゃないな、と判断はつきました。むしろ、この時点では主人公のリンネくんがなんかやらかして、現状を作り出していたんじゃないかと疑ってたくらい。それくらい、アイがも女会に居る現状は、そしてアイとリンネがいい雰囲気な状態はリンネくんに都合のいいものでしたしね。

ともあれ、さらに仰天、もしくは愕然とさせられたのは、連続殺人事件がおっ始まって黒幕が姿を表した後だったんですけどね。
リンネくんって、あれだ。女性陣が揃っていささか病んでるというインパクトに隠れてたけれど、この少年も相当にぶっ飛んでてぶっ壊れている。頭のネジが二、三本外れてしまっているに違いない。
それぐらいに、リンネくんが黒幕に対して選んだ対抗手段というのはあり得ない。前回何が起こったか、忘れたわけじゃあるまいに、普通ならそんなやり方は選ばないし選べない。絶対に腰が引けるだろうし、無意識にでもその選択肢は避けてしまうだろう。場合によっては恥知らずの非難は避けられないし、根本に愛を救いたいという動機がある以上、その行動は残酷極まりないナマス切りにするような痛みを強いる事になる。
それでも、彼は敢然とそれをやってのけてしまうのである。そりゃ、登場した黒幕や、アイが土壇場に至るまで全くリンネくんの策に気が付かなかったのも仕方ない。油断や慢心が原因ではない。常識的に考えて、アイがこれまでにやったことを省みるなら、そもそんな発想から生まれないからだ。
たとえば【グリモアリス】の主人公・誓護なんかあれは相当の仕手筋で、謀略家でしたけれど、ある意味誓護よりもリンネくんは「手段を選ばない」主人公なんじゃないだろうか。

まさか、この状況下において「仲間を増やす」なんて選択をするなんてなあ……。

だって前回、アイはリンネの回りにいる女の子たちを、文字通り心身根こそぎぶっ壊し、狂気に落してしまったんですよ? そんな彼女たちに、アイを助ける為に力を貸してください、命を賭けてください、なんて頼めますか?
頼みやがったんですよ、この男は。それも、自分を好きだと言ってくれたユーリに。なんちゅう神経してるんだ。
ただ、これは本当に発想としては見事なんですよね。この四次元に纏わる状況というのは、ある意味アイとリンネの二人きりの閉ざされた世界に基づく問題で、孤立した世界に取り残されたアイを置き去りにするか連れ戻すか、いずれにしてもそれはリンネとアイの二人だけで決着する話だと思ってたんですよね。それを、このリンネくんは自分一人で解決しようとせずに、二人だけの世界観の中で結論を出すのではなく、そこにユーリという外の要因を咀ませ、アイを自分たちの日常から突き放すのでも此方側に引き寄せるのでもなく、リンネが今立つ日常を、それを織りなす人たちを、アイが逃げ出し閉じこもっている世界の側に踏み込ませる事を選んだわけです。
ただでさえ、自分とアイのとばっちりで酷い目にあった娘たちに、アイを助けたいから、という全く以て自分本位以外の何物でもない理由だけで、この異常に一枚噛ませ協力を仰ごうとするリンネ。これを、手段を選ばないと言わずして何というのか。
でも、それだけリンネはアイに対して一途だ、とも言えるんですよね。その形振り構わない姿勢は、一巻の時のちだね先輩やらにふらふらしていた時に比べれば、非常に一貫していて好感が持てる。
逆に、それくらい一心不乱に愛を注ぎ込まないと、このアイさんってばすぐに精神的に死にかねない、とも言えるんですよね。あのアイの死の原因を見てしまうと、ちょっと目を離した隙に死んでしまいかねない怖さがある。だから、豆腐メンタルは……w

ここで、好感度がだだ上がりなのがユーリですよ。あんた、素の時はどんだけ健気で献身的なんだ、って話ですよ。アイとの友情に対しても、リンネへの愛情に対しても、ちょっとサイコ入ってるんじゃないか、というくらいに滅私なんですよね。まさかあのユーリがそこまでしてくれるとは、と感動したくらいに。
ユーリが、リンネの策に基づいて動いていた時のあのアイへの言動。あれは、その人に成り切っていたとは言っても、間違いなくユーリの言葉でもある、と考えたら、とても素敵な話じゃありませか?
これって、アイを助けるのはリンネかもしれませんけれど、リンネを救うのはユーリなんだろうなあ。この後、話がどう転ぶとしても、リンネは一生ユーリには頭があがらないでしょう。それだけの事を、ユーリはリンネにしてあげたし、これからもしてあげるはずですから。

1巻感想