あなたの街の都市伝鬼! 2 (電撃文庫 き 5-2)

【あなたの街の都市伝鬼! 2】 聴猫芝居/うらび 電撃文庫

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今度は学校の七不思議!? 人体模型から二宮金次郎まで続々登場!

 伝鬼達の食費のせいで金欠な出雲。たまらずジェット女の舞佳に弁当を作って貰うことになるが……交換条件として、学校の七不思議を編纂することに。
 でも事情を知らないサキの心には、自分でもわからないモヤモヤが溜まり──出雲をめぐってなぜか張り合う舞佳とサキ、そこに水着で金髪巨乳な謎の先輩も絡んできて、さらには伝鬼VS妖怪の肝試し大会まで!?
 可愛さも怖さもさらに増量! ほんわか怪奇譚、第2弾!!
学校の怪談もフォークロアの方に入るのか。都市伝説と妖怪の区分がどのラインで分けられるのは興味をそそられる所でもあるんだよなあ。例えば、この巻でも登場する赤マントなんてものは初出は昭和初期頃。他にも都市伝説を調べてみると、明治から大正時代に生まれたものも珍しくなく、既に百年の年月を経たものも居るのである。それだけ古い存在なら妖怪と呼ばれてもおかしくないようにも思うのですけれど、あくまでこれらは「都市伝説」なんですよね。となると、フォークロアと妖怪との境目というのは、やはり幕末――江戸時代と明治時代になるんだろうか。
なんてことを、今回初出がかなり古参になる都市伝説と、妖怪衆がたくさん出てきたのでついつい思いめぐらしてみたり。
しかし、幾らなんでも出てくる伝鬼、妖怪の全員が女性人格というのは幾らなんでもやりすぎなんじゃないだろうか。……そうでもないか。【ほうかご百物語】はその点バランスよく男女を配していたけれど、むしろ此方が例外なんだろう。もっとも、いつまでも「可愛いは正義」が通用するかは定かではないが。
枕返しは可愛かったですよ?
面白いことに、枕返しや薬缶吊るのように、妖怪には他愛のない不思議が具象化したものが多いんですよね。これは、それだけ妖怪が発生した時代の「不思議な出来事」、つまり未知の領域が広かったせいなんだろうなあ。妖怪のせい、という説明で不可思議な現象の理由付けを済ます事により、未知に形を与える。妖怪の存在理由には少なからずそういった方向性があるようなのだけれど、そう考えると都市伝説はその点、ちょっと方向性が異なってきているのかもしれない。
……って、さっきからなんか訳の分からない事ばっかり書いてるな。作品の内容とはほとんど関係ないんだけれど、こう都市伝説と妖怪を分けて揃えて違った括りで同じ土俵に立たせた上で対立までさせるという構図が珍しかっただけに、ついついと思考の方向が変な方向に行ってしまったようだ。
考えるべきは、そう、サキさんがいかに本妻としての存在感を発揮しているか、有象無象の女性伝鬼、妖怪たちの出現に対して対抗しているか、と言った方である。
さて、その点について考えるときに注目すべきは、サキさんのホームグラウンドがあくまで出雲の部屋であり、滅多に外に出てこないところである。彼女は、あくまで出雲の部屋で彼の外出を見送り、彼の帰りを待っている存在なのである。勿論、同級生のふりをして学校に現れるなんてことはない。じっと覗き見ている節はありますけれど、学校という同じ空間に入り込もうとはしないのです。これは、今回のように学校を舞台とした物語が展開する場合必然的に出番は減少するものの、むしろ帰る場所にでんと揺るがず在ることで存在感自体は増しているのである。これには、出雲がサキにベタ惚れで、あくまでサキこそが本命であるという好意があってこそなのだけれど、同時にサキが愛佳たちの出雲へのアプローチに嫉妬こそあからさまに示しながらも、ジタバタせずに腰を据えて動かなかったのも大きな要因なのだろう。ここで軽々しく出雲につきまとい、学校にまで首を突っ込んできていたら、本妻の威厳など示しようもないからだ。家でどんと構えて、外でのヤンチャは見過ごして、最後には自分のところに帰ってくるのだという確信に基づいて、余裕を持って泰然自若。
これぞ、妻の面目躍如である。
ラブラブですね。
個人的には、愛佳の出雲に恋する過程の素敵さもわかるだけに、敵わじと知りつつも、出雲に余計な負担は追わせまいと自重しながらも、それでも我慢しきれずに好意が溢れてしまうのを抑えられないジェット女の乙女っぷりは応援してあげたいところなのだけれど、それでも本命は揺るがずサキさんだからなあ。
それでも、愛佳も決定的な一歩を踏み出した以上、そのままなあなあでは済まさないはず。何気にこれ、出雲は関係ないんですよね。彼の意思決定は既にハッキリしているので、むしろ愛佳に対してハッキリさせなきゃいけないのはサキの方。サキも愛佳の発言を聞いて思うところがあったようだし、今後変化も生まれてくるかと思えば楽しみである。

しかし、愛佳にしても先輩にしても、人間として生きているとやっぱりしがらみは多いんだなあ。完全に妖怪や伝鬼としてだけ存在している連中が、自分の存在に疑いも持たずにどこかお気楽であるのに対して、少なからず人間社会の中に組み込まれて生きていると、自分の在り方にどうしても自問し続けないといけない部分が出てくるのだろう。自分があやふやであることが愛佳の不安や自己嫌悪の根源なら、その怪異としてのアイデンティティを明確に肯定してくれた上に、後輩として可愛がってくれた出雲に、伝鬼としても人間としても惹かれていったのは当然か。
出雲のあのふらふらしているように見えて、頑固で自分勝手なくらい揺るぎない部分は、確かに魅力的だと思うよ、うん。妖怪・伝鬼に切った理屈なんざ後からいくらでも考えてやるという啖呵はカッコ良かった。
そして、枕返しは可愛かったですよ?

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