鳩子さんとラブコメ 2 (富士見ファンタジア文庫)

【鳩子さんとラブコメ 2】 鈴木大輔/nauribon 富士見ファンタジア文庫


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僕こと平和島隼人は、平和島財閥の跡継ぎ候補。いずれ財閥のトップに立つべく、メイドの鳩子さんから帝王学を学ぶ日々なんだけど―「今日もいい天気でいい朝ですね。誰かさんの顔を見ないで済むならもっとよかったのですが」「あんたがこの世に存在さえしなければ、戦争をなくすよりはるかに手っ取り早く世界は平和になるでしょうに」…犬猿の仲である鳩子さんと、元お嬢さまの杏奈の二人は、今日も僕を間に挟んでバトルを繰り返している。おまけに「実は杏奈は僕の将来の婚約者」なんて、鳩子さんが言うもんだから、鳩子さんに一世一代のプロポーズをした身としては立つ瀬がないわけで―。
……これ、思ってたよりもはるかに鳩子さん、ヘタレなんじゃないだろうかw
本作は鳩子さんが本当は何を考えているのか、については傍から見た言動を除いては隼人の憶測をフィルターにした記述しか判断材料がないのだけれど、それを加味してもいささかボロが出てきた感がある。一巻の段階では盤面を完全に掌握し、鬼手に迂回戦術、正面突破と自在に攻勢をしかけてくる隼人と互角に指し手を交わす辣腕の棋士、という心象だったのですが……果たして二巻を読む限り、鳩子さんは盤面を支配しているのか?
そもそも鳩子さんは誰と戦っているのだろう。彼女の最終目標がわからないだけに、彼女が何を思い、誰を敵視し、誰に対して戦闘を仕掛け、何を打倒しようとしているのかもすべて推測に頼らざるをえない。隼人と最終的に結ばれること、が目標であり前提であり、それを達成するためには幾つかの障害があり、それを取り除くために立ち回っている、というのなら色々と読み解けてくるものもあるのだけれど……。
どうも、鳩子さんの杏奈への態度というのはものすごくシンプルに「八つ当たり」っぽいんだよなあ。一巻見た時点だと、天然だけれどそれ故に強力なプレイヤーである杏奈に対して、対等な立場から決闘に挑み正面から叩き潰そうとしている、という感覚だったのだけれど、この巻を見ているとどうも既に負けな立場を諦めて受け入れた上で、その憤懣を当人である杏奈にぶつけているように見える。
鳩子さん、結構個人的には杏奈のこと好きだと思うんですよね。性格がドSだからって、本当に嫌いな相手にSっ気はぶつけないと思うんですよ。嫌いじゃないからこそ、八つ当たりにいじめてる、という対応で収まってるんじゃないかと思えてしまう。八つ当たりの対象は確実に隼人に対しても向けられているようなのだけれど、隼人はあれですもんね、暖簾に腕押し糠に釘。立ち回りが絶妙すぎて、どれだけイビろうとしても手応えが得られない。そりゃもう、面白いように反応してくれる杏奈に構いっきりになるのも当然てなもんです。
やたらとプライド高いくせに、負け犬根性がにじみまくってしまっている。今の平和島鳩子さんという人をそういう人だと捉えると……これはこれで面白いw
恋愛感情を冷徹にゲームの担保にした主導権の握り合い、という当初の受け取り方からはズレてきたけれど、個人的には僻み根性剥き出し……にはしてないけれど、奥に秘めてすまし顔で立ちまわるキャラクターというのは嫌いじゃない。その負の感情の吐出口になる隼人と杏奈が、それに全く精神的に応えない柔性の強いキャラなので、空気はそんなに悪くならないし。
まあ、そういう憶測も、鳩子さんが隼人をやっぱり好きで、でも結ばれることは諦めている、という前提ありきの話で、実際はどうかわからないんですけどね。ただ、こういう作品の場合は読者側で妄想をたくましくしていた方が、その場その場で楽しめるのです。読み方なんて自由です。国語の試験みたいな模範解答を要求されているわけじゃござんせん。どうせ読むなら、楽しく読むほうが良いですから。
まっ、これで杏奈が隼人が鳩子さんを好きで他には目を向けるつもりがない、と承知した上でなおも政略結婚するんだと言ってのけているのなら、もっと面白いのですけれど。隼人の回想では、そこまでは言ってないんだよなあ。

1巻感想