EX! 14 (GA文庫)EX! 15 (GA文庫)

【EX! 14/15】 織田兄第/うき GA文庫

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 富玖山での騒動を零や量子と協力し、なんとか解決した一哉。
 それはシスター・ヘラを戴く【ARES】と、マスター・エグゼリオ率いる《協会》の、今後の新たな関係を象徴するような出来ごとだった。
 一方で、《協会〉に属することをよしとしない第一世代のエクスターたちは、ドクターグレイを追撃するため独自の作戦を行っていた。
 だが、そんな彼らの前に、恐るべき力を持つ存在・降魔体が、出現する。
 エクスターたちに壊滅的な打撃を与えた降魔体は、そのまま【ARES】本部へと来襲。
 姉の由真とともに由良もいるはずの本部を守るため、一哉は仲間たちと迎撃に向かうが――!?
 全人類に対して衝撃的な宣戦布告を行ったマスター・エグゼリオ。
 それは、これまでのエクスターたちの献身も、融和に向けての改造人間たちの努力も、そのすべてをあざ笑うがごとき行動だった。
 一方、いまやマスター・エグゼリオの牙城となった空中要塞《エレボス》に、姉とともに自ら赴いた由良は、
 そこで囚われの身となった十季子と再会する。
 それぞれの気持ちをお互いが初めて露わにする中、一哉自身もまた要塞へと向かっていた。
 三人のロストナンバーズを従え、恐るべき力を手に入れたマスター・エグゼリオに、一哉たちは最後の戦いを挑む!
 全ての大切なものを守るために!
正義の変身ヒーローと悪の組織の改造人間、その戦いが終わった後の……そう、戦後の相克と融和の物語もついに完結。この手の変身ヒーローものはいくつかシリーズ出てますけれど、15巻までやってキッチリ完結したんだから、大成功の部類なんだろうな、これ。
かつての悪の組織「HERA」やエクスター誕生の逸話から、ARESやNYXといった組織が結成されるまでの流れに、起源となった医療組織に関わった人たちの人間関係。現在のエクスターと改造人間たちの問題が始まる端緒となった部分まで歴史が明らかになり、この辺非常にすっきりした。
シスター・ヘラやミスラといった旧「HERA」の大幹部が全然イイ人だったり、HERA壊滅後に改造人間たちがARESを結成して、エクスターの協会と協力して一定の市民権を確保しつつ在るなど、どうもエクスターと改造人間たちの戦いの発端からして妙な違和感がつきまとっていたのだけれど、なるほどそういう事情が横たわっていたわけだ。なんか、ものすごくすっきりした、って二度目かこの言い回し。ともあれ、事情がわからず設定にもやもやしていたところや、過去の伏線なんかも綺麗に処理されていて、まさしくやりきった最終回だったんじゃないだろうか。まあ、この場合ラスボスはどうやったってエグゼリオになっちゃうわなあ。意外だったのは当人の意思を無視して、というよりも無理やり強制的に拡大解釈して事が起こってしまったところか。このあたりの無形の強制力、外部からの圧力が方向性を決めてしまうという形は、ちょうど一般大衆からのエクスターや改造人間たちへの手前勝手な押し付けに通じるものがあって……こういう大衆の意思を前にすると、どうしようもなく妥協と阿りが介在してしまって、嫌ですよねえ。
そういえば、本作ってこうして振り返ってみるとあくまでエクスターと改造人間たちの物語であって、そこには大衆としての人間は存在しても、個人としての「人間」は一人も登場せず、「人間」として主人公たちに関わる事がなかったのは印象的である。ラストで、エクスターと改造人間は厳密には人間とは違う存在であり、新人類であるみたいな定義がなされてしまっているんだけれど、表面化していないものの今後必然的に旧人類と新人類の対立というものは生じてくるはず。共通の巨悪によって、戦後なおも険悪だったエクスターと改造人間の間には交流と協力の輪が生まれ、エクスターと改造人間の間に生まれた大和を中心に一つの新人類へと纏まっていく流れになっていったわけですけれど、これって同時に「人間」にとってはそれこそ人類共通の敵が生まれた、という認識が生じてもおかしくないのが皮肉な所。局所的に両者が友好関係を結んでいるところはあるし、協会にしてもARESにしても、現状は人間社会の中に溶け込んで一定の地位を得ようという動きには終始しているものの、エグゼリオの宣戦布告は個人の所業とされつつも絶対に不信という楔を人の意識の中に打ち込んでるんですよね。まあ、これからはエクスターと改造人間の間には融和が訪れても、その外は荒れるんだろうなあ。

さて、肝心の三角関係はというと……なんか物凄いアクロバティックな既成事実で無理やり着地させられた!(笑 いやこれ、三人一緒を許容する説得力としては古今無双と言っていいくらいの代物なんだけれど、やっぱりアクロバティックだよなあ、これ。うん、そりゃ子供ができちゃったら責任は取らなきゃいけないよね。でも、生身では何にもしてないし、そもそも作ったのは大和くんじゃないわけで、本来なら責任とかないはずなんだが、それでも引き受けるよなあ、こいつなら。
しかしまあ、まだ手も出してないのに子供って……当人、だいぶ複雑なんじゃ。しかも、養育するにしてもまだ高校生の分際なんだから経済的にも全然自立してないわけだし、結局親にお世話にならなきゃいけないし。組織の方からもお金は出してくれそうだけれど、だからって……ねえ(苦笑
それに、結局三角関係の決着は女性陣が勝手に決めちゃったという傾向もあるわけで。この手の関係って何気に男には発言権ないんですよね。まあ、そのほうがうまくいくケースが多いんですけれど。
まあそれでも、目を覚ましたら心当たりないのにいきなり高校生の息子が居ました、なシスター・ヘラに比べたら幾らもマシか。相手も居ないのにいきなり母親とか、決心つかんわなあ。

ともあれ、主題となるヒーローと改造人間の融和に関しては、これ以上ない大団円でございました。大長編となりましたが、綺麗なまとめで実にお見事。ご苦労様でした。

シリーズ感想