千の魔剣と盾の乙女7 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 7】 川口士/アシオ 一迅社文庫

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ロックの故郷シュリガッハを訪れた一行は、ロックの幼なじみの少女、ノエルと出逢う。海に沈む伝説の都市アルモリカの財宝を探すノエルの夢に共感し、同行を申し出るロック。エリシアは自分の知らないロックを知るノエルの態度にもやもやした感情を抱くが、不満を言いだせず口をつぐんでしまう。そんなエリシアに挑発的な言葉を投げかけるノエル。ロックをめぐる二人の対峙により事態は思わぬ方向に…。アルモリカに待ちうける怪物の影、そして財宝の正体とは一体何か。魔剣ファンタジー、急転の第七弾。
ちょっ、ちょっと待ったぁーーー!! 今、聞き捨てならないセリフを聞いたぞ!?
銀を食べる竜、だと!?
そのセリフを聞いた時の、ホルプの反応。おいおい、こりゃ魔剣ホルプが【星図詠のリーナ】の傭兵ダールの左腕に宿っていた「魔銀」であるのは確定か。以前、前の自分の持ち主は傭兵だった、って言ってたもんなあ。それを事実として鑑みると、ホルプの堅物な性格の合間に見える妙に性格の悪いところや諧謔味というのは、ダールの性格の影響を受けている部分もあるのかもしれないなあ。

さて、今回は後から仲間になったナギに先を越される形で伝説の武器を手に入れられてしまったエリシアのパワーアップ回。であると同時に、エリシアがロックの魔王を倒すという夢に最後まで付き合う覚悟を決める回でもあった。ここまで一緒にパーティーを組みながら、今に至るまでロックの故に最後まで付き合うかを迷っていたエリシア。だけれど、最初の頃の荒唐無稽な夢を否定はしないけれど、自分が同行するのは現実味が無いし、実際問題として倒せるとは思えない、という立場だった頃に比べると、彼女の迷いはこの巻あたりではもう、自分の力量では足手まといになってしまうんじゃないか、という不安に基づくものに取って代わってるんですね。ロックがある程度呪いを克服した上に、それを利用した金環持ちでも倒せえる力を手に入れたのと、ナギが伝説の槍を手に入れ、ナギ当人もロックと運命を共にする気満々、という状況を前にしたら、出来ないだろうから真剣に考えない、という段階はとっくに通り過ぎてたんでしょうなあ。
ぶっちゃけ、この時点でついていけるものなら、付いて行きたい、という気持ちは固まっていたと思われる。
でも、同時にロックの夢に付き合う覚悟を決めるというのは、エリシアにとっては別の覚悟……ロックへの好意を認め、肯定して受け入れる、という事も意味していたのである。何しろ、伝説の武器の取得に技量の向上という以上に、ロックへのアプローチを全く自重しなくなったナギに、あらゆる意味で先を越されてしまっている以上、ロックへの気持ちをなあなあで誤魔化せる段階は通りすぎちゃってましたしね。
そう考えると、ロックの故郷で幼馴染と再会するという展開は、というか幼馴染にして魔剣使いであるノエルの存在は、エリシアの対比として用意されたと見ていいでしょう。好意を持っていても、ロックの夢について行けずに見送るしか無い娘、という役での登場というのは結構、残酷なことだとも思うけれど、だからこそああいう天真爛漫でサバサバした強かタフガールというキャラ付けで出したのかもしれないですね。誰にとっても後味の悪くないサッパリした道の分かたれになりますし。

それよりも、ちょっと意外だったのがリャナンシーである。以前から魔物となりながら妖精としての特質を残している、という話はあったけれど、未だに妖精たちと交流があり、彼らを守ろうという意志を残しているというのは予想外だった。
元々、その行動は得体のしれない面があったけれど、和解出来るかどうかはともかく、思ってた以上に交渉の余地があるのかもしれない。少なくとも、一概に邪悪と言える存在ではない事は明らかになったわけですし。
となると、逆に魔物たちの勢力争いの方をもうちょっと情報公開してくれるとありがたい事になってきたな。これ、思っていた以上に複雑で、人間サイドから見てもどうも全部一緒くたに敵は敵、と剣を向けなくても、思惑によっては何らかの駆け引きが出来るかもしれないですし。

さて、今回はあの魔王を倒すと公言して憚らないファーディアも登場。最近、この人ネタキャラなんじゃないかと思えてきた。物言いこそ傲慢で高慢で人を人とも思わないものだけれど……異様にチョロいんですよね。最初こそ、魔王は俺が倒す! 貴様らは邪魔するな、或いは部下になって傅くなら使ってやるぞ、という偉そうな言い草にはカチンと来るものがありましたけれど、会うたびにおんなじ事ばっかり言ってるものだから、段々と生暖かい目で見るようになってきたし。大体、足手まといは要らん、みたいに強がってるけど、毎回ボッチだし、こいつ。ほんとに仲間が要らないなら、毎回勧誘なんかしないもんなあ。
これで実力がなかったらただの道化なんだけれど、なまじ実力があるだけに余計にネタキャラになってる気がする。何しろ、結果的に見ると毎度ロックたちパーティーに上手いこと利用されてる形になってるしw 今回など、あの天然のナギに上手いこと言いくるめられて協力するハメになってたわけだし。
まああれだ、おまえもがんばれよ。

と、エリシアまで強力な武器を手に入れ、一皮むけてしまった以上、独りだけ一流半のままのフィルだけが取り残されてしまうことに。いいんですよ、貴女はそのままマスコットで。と言うわけにもいくはずがなく、次回はフィルパワーアップ回。ある意味、ハーレム完成回になる予感も無きにしもあらず、はてさてどうなる?w

川口士作品感想