XIII番の魔符詠姫2 (一迅社文庫)

【XIII番の魔符詠姫(タロットソーサレス) 2】 手島史詞/桐野霞 一迅社文庫

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夜な夜な街を徘徊しては悪人から血を奪い、魔符詠姫の紅葉やマコトとイタチごっこを続けるキリク。日中は紅葉たちと比較的平和な学園生活を送っていた。ある日、いつものように夜の街を徘徊していたキリクは、見知らぬ魔符詠姫から襲撃される。紅葉よりも果敢で、マコトよりも攻撃的な魔符詠姫の執拗な追撃に逃走もできず追い込まれたキリクだが、別の“ヴァンパイア”によって助けられる。キリクを助けたヴァンパイアの名は良人。こちらの世界へ来る前にキリクの友人だった少年だった。その頃、敵であるはずのキリクと良好な関係を築く紅葉の姿を見て、マコトは自分の正義は本当に間違っていないのか、かつて自分の両親を殺したヴァンパイアの姿を思い起こしながら、深く悩むのだが…。
ああ、そうか。マコトって「ヴァンパイア」の正体について何も知らなかったんだ。単なる怪物、人類の敵、人食いの化け物、そんな風にしか捉えていなかったのか。だからこそ、キリクのなるべく人を傷つけず、ヴァンパイア狩りである「魔符詠姫」相手にすら気遣いを惜しまないというスタイルに、あれだけ戸惑いを抱いていたんだ。
逆に言うと、両親と姉をヴァンパイアにあれだけ無残に惨殺されて復讐の一念で狩りを続けていた彼女が、キリクの人となりを知ってしまっただけで、人の皮を被った怪物としてしか認識していないヴァンパイアの彼に対して手心を加え、追いかけっこを続けながらも本気で刈り取る気をなくしてしまっていた、というのはそれだけマコトが性格的に残酷にも残虐にも無慈悲にも成り得ない、普通の女の子だったというのが透けて見えてくる。
そんな彼女だからこそ、ヴァンパイアの正体が怪物や人外などではなく、パラレルワールドから流れてきた元・普通の人間であり、血を吸わざるを得ないのは生きるための不可抗力だった、と知ってしまった時の衝撃は大きかったのだろう。正義を標榜するからこそ、自身の正義に疑いを抱いてしまえば動けなくなる。一途であるということは強靭であるとともに、目標を見失った時に容易に自分の在り方をも失ってしまうということにも繋がっている。
そう考えると、事前にキリクと交流が生まれて心ならずもヴァンパイアへの偏見が一部なりとも解れていたのは、マコトの正義を揺るがす真実を前にしてワンクッション置けた事になるのではないだろうか。キリクと知り合っていなければ、マコトの受けたショックは遥かに大きく、拒絶するにしても受け入れるにしてももっと極端な形で影響が出た可能性もある。例えば、より頑なに凶行に走るようになるか、或いは二度と戦えなくなるほど打ちのめされるか。
マコトには、自分が戦っていた相手が怪物などではなく人間であったという信じたくない事実に加えて、自分の復讐の直接の相手との遭遇、さらに自分が相手の復讐のターゲットであったという更なる真実に直面する事になる。正直、心折れても仕方ないくらいの衝撃の連続なのだけれど、こうした決定的な岐路に立った時こそそれを支えようという周りの人の姿が浮き立ってくるものだ。情けは人の為ならず、じゃないけれど、彼女のこれまでの正義たる振る舞いは、敵を作る以上に味方を作っていたのだろう。復讐者でありながら、何気に面倒見も良く、甘い正義の味方だったからなあ。
そして、ある意味壊れてしまった彼女の価値観を辛うじて守ったのは、キリクとの交流の時間であり、敵である彼が手を差し伸べてくれた事こそが、最後の一線で彼女を守ったことを鑑みれば……まあ、意識しちゃうよなあ。エロいこともされちゃったし。

エロいこと、というと紅葉の天然の方向が完全に無知無自覚の据え膳に疾走を開始していて、色々と無防備すぎる(笑
恋愛以前に性の知識が小学生低学年レベルどころか幼稚園レベルなくせに、本能だけでひょいひょいと誘惑してくるものだから、危ないの何の。こう、自分が何サれるかわかってない娘さんにイケないことをしてしまうという倒錯感は、なかなかのものでして、ええ、ええ。
キリクもあんまり理性が持つ方でもなさそうなので、そのうち紅葉って事故的に魔符詠姫を卒業してしまいかねない!! キリクは、魔符詠姫をやめる方法とか知らないだろうし、紅葉は聞いてるのに分かってなかったみたいだし。マコト、教えてやれよw

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