ココロコネクト ステップタイム (ファミ通文庫)

【ココロコネクト ステップタイム】 庵田定夏/白身魚 ファミ通文庫

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お付き合いするということは、二人の仲も進展するということ――生まれて初めて恋人ができた桐山唯は、悶えていた。それを見かねた親友の雪菜が、太一&稲葉、中山&石川を巻き込んだトリプルデートを計画して……!? 大混乱の初デートから、五人が互いの第一印象を語る創部ヒストリー、稲葉と伊織の友情秘話に、藤島麻衣子と1年生'Sが立ち上げたプロジェクトの全貌まで! 愛と青春の五角形コメディ、美味しいところがぎゅっと詰まったココロコレクト第2弾!!
最終巻前の、最後の短篇集。
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後藤教諭によって、無理やり文化研究部なる一所に集められてしまったペンタゴンの馴れ初めの物語。
そりゃあ、五人が五人ともろくに面識も無し。その上独りだけで部活を立ち上げようという個性的な面々なだけに、最初から上手く行くはずもなく……というより、まだ誰にも心開いていない時だからこそ、後々明らかになっていくそれぞれの問題点が、けっこうあからさまに浮き彫りになって、態度に滲み出ている事がよく分かる。特に顕著なのが稲葉なのは言うまでもないけれど、伊織や唯もチラチラと垣間見せてるんですよね。この辺りは、ある程度仲良くなると余計に見えにくくなるものなのかもしれない。まだ良く知らない相手だと、それだけ自分の言動に対して注意深くなるんですよね。そうすると、余計に自分が隠そうとしている部分が浮き彫りになってしまう所がある。尤も、そうした違和感はまだ相手も親しくないからこそ気付かれないものなんだけれど……この時点である程度違和感を捉えていた稲葉は、やはり相当に観察力に優れているのだろう。それも、彼女の臆病さ、警戒心の強さから来るものなのだろうけれど。
でも、それだけに稲葉が不必要に近い関係になってしまうだろう文研部に残ることを選んだのは、運命的なものを感じる。彼女のみならず、五人が五人ともこの五角形に得がたいものを、離れがたいものを感じて、理由のない、合理的じゃない結論に基づき、五人の学生生活を始めることになるのです。
それって、やっぱり運命的な出会い、ってやつじゃないのかなあ。

ふたりぼっちの友情
この巻では、付き合い始めた稲葉と太一のイチャイチャっぷりを楽しめるという事だったので、嫌というほど「お前らもう結婚しろよ!」と言いまくるつもりだったのに……。
そのセリフ、まさか稲葉と……伊織に使うはめになるとは。
「お前らもう結婚しろよ!!」
……え、これ稲葉と伊織が親友になるまでの、友情の物語なんですよね。なんか、読んでて物凄い熱量のラブストーリーにしか見えなかったんですがw
うわぁ……なんか見縊ってました。この二人、自他共に認める親友同士でしたけれど、ここまでガッチリと絆で結ばれた、ZEROどころかマイナスから鍛え上げられたマジものの友情の結実だったとは。これ、異性間の話だったら太一でも割って入れないわ。ムリムリムリ。稲葉がガチで男前すぎる。どこだよ、デレばんw
ここまで相手を理解したもの同士の厚い友情を見せられると、稲葉と伊織なら……いや、彼女たちに限らず、文研部の五人なら、たとえあの「フウセンカズラ」の陰謀、或いは試練がなかったとしても、それぞれのトラウマや人間的な弱点、迷路の元を克服できたんだろうなと思える。確信に近いものを抱ける。確かに、「フウセンカズラ」の起こす現象は、五人の心象をさらけ出し直面させることで、五人の関係を尋常ならざる強固なものへと成長させたのですけれど、決して必要不可欠なものではなかったと、外からの介入なしで自分たちだけであれだけの関係を築けた伊織と稲葉を見れば、断言できます。正直、この話を読むまではあの五人の信頼関係は、あれらの事件あってこそ、と思ってたんですけどね。
ちょっと、この子たちを見くびってたかもしれない。

デート×デート×デート
藤島さんよりも、雪菜の方がよっぽど恋愛マスターじゃないかw
この学校、逸材が多いなあ(笑
というわけで、期待のトリプルデート編。カラー口絵の三人娘のファッションチェックは、これ至高の一品ですよ。特に、やはり好みは稲葉でしょう。この衣装、ガチで好みドストライクなんですが。
彼氏彼女として付き合い始めたにも関わらず、未だにちゃんとデートもできていない唯と青木、そして先の巻でくっついた中山ちゃんと野球部の武士・石川くんの関係のじれったさに爆発した雪菜と、完全に面白がってる伊織プロデュースで、安牌の稲葉・太一カップルを巻き込んで、トリプルデートが企画されるというお話。
初々しさが爆発している中山ちゃんと、色々踏み外してる唯、そしてもはや熟練カップルの域に突入してしまっている稲葉んの三者三様のデート模様が実に楽しい。むしろ、はっちゃけまくってる雪菜と伊織を見てるほうが楽しい気もするが、いずれにしてもニヤニヤ。
にしても、稲葉んは既にデレばんの域を通り越して本気で何年も付き合ったようなカップルになってるなあ。まったく、どんな修羅場を二人で潜り抜けてきたんだろうw
と、思いきや肝心なところでは、きっちりデレばん来ましたわーー!! はい、ゴチになりましたぁ!
一方で、傍目はチャラ男そのものな男だけれど、青木はこいつ、まったく器でかいよなあ。言動こそ軽薄で軽々しいんだけれど、その実懐深くどっしり構えて何でも受け入れる度量があるから、唯も悪い意味で切羽詰まらずに要られるんでしょうね。この娘、ついつい暴走する分自分を追い詰める傾向があるっぽいんだけれど、青木の存在は唯に迷走する自分を許容する余裕を与えてくれているようにも見える。
要は、お似合いのカップルという以上に、この二人は付き合ってお互いにより良い影響を与え合えるカップルなのでしょう。
もう、お幸せに〜、てなもんだ。

この我が道を行く疾走
いやあ、本当に藤島さんという人は自己完結した人だなあ(笑
以前にも同じ感想を持ったものだけれど、この人わりと足元緩いというかふらふらと精神的に覚束ないところがあるわりに、結局自分一人で結論出して立ち直っちゃったりするんだよなあ。あれだけ周りをよく見ているにも関わらず、それを全く自分と絡めて捉えていないというか、自分と絡めた上での関係を全く意識していないというか。以前にも藤島さんは部外者とはいえないくらい、ペンタゴンに踏み込んできた事があったんだけれど、その時も自己完結して一人で満足してとっとと立ち去っていっちゃったもんなあ。
面白いのは、この人は自分一人で完結しているくせに、その言動は否応なく周りを巻き込んで振り回し、大騒動を引き起こしてしまうという特性を有しているところでありましょう。そのお陰か、何故か藤島さんは孤独という単語からは程遠い(笑
……ただ、渡瀬は深刻に女の趣味が悪いと思うぞ。いや、あれがデレた姿は無茶苦茶見てみたい気もするが。

なんか、紫乃と千尋にもフラグが立っていい雰囲気だし、あっちゃこっちゃで恋愛風が吹き荒れてるねえ。

と、平穏で賑やかで幸福な日常が戻ったかのようなペンタゴンとその周辺ですが、それとなく不気味な風が吹き始めている描写がチラホラと。これが、最終巻の伏線か。前巻で、フウセンカズラたちが恐ろしく不穏な話をしていただけに、こいつは大波乱必至か。

シリーズ感想