問題児たちが異世界から来るそうですよ?  降臨、蒼海の覇者 (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? 降臨、蒼海の覇者】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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いよいよ始まったアンダーウッドの収穫祭!飛鳥と耀は狩猟祭に参加し、十六夜は縁日荒らしを、ジンは“ノーネーム”の連盟旗を作るために動き出す。そんななか黒ウサギは、神格を返上したことで最強の“階層支配者”を退くことになった白夜叉に連れられ、魔王“平天大聖”の元に向かうが…!そしてお待たせしました!「水着着用が義務!!」(by白夜叉)の“ヒッポカンプの騎手”のメインゲームが始まりますっ。
ああーー、やっぱりこの作品の世界観って、大好きだわ。十六夜たちが召喚された時に感じた感動、あの四方全周すべてが地平線の彼方まで広がっているような開放感を、未だに感じ続けてるんですよね。もう刊行数は5巻に至ったというのに、全然行き止まりを感じないこの世界観の広大さは、まったく留まる所を知らない。
今回なんて、西遊記ですよ。元々、中華の天界・仙人界、そこに仏門が習合された世界観って、馬鹿みたいに野放図な許容力を備え持ってて、何でもありであると同時に厨二的なクラス分けがコマ目に成されていると同時に、それぞれの神様や妖仙には民俗学的な由来の積み重ねが重厚に織り成されているという、そりゃあもう実に遊び甲斐のある世界観なんですよ。
そして、この物語の世界「箱庭の世界」は、そんな中華の世界観を仏門寄り、道教寄りという括りなくフラットなスタンスで、丸ごと飲み込んじゃって、修羅神仏が闊歩する世界観の一翼をして機能させてしまってる。
ほんと、凄いよこの世界は。世界各国の神話や伝説の神々や妖魔の類が並列に存在し、それだけじゃなくペストやハーメルン、マクスウェルといった現象や伝承、概念的な存在をも、神や魔王として同等に扱い、それらが十六夜たち人間も含めて、すべてが対等の「箱庭世界」という舞台で遊ぶゲームプレイヤーとして扱われてるんですよね。
勿論、その力に応じて立場も視点も権力も名声も何もかも変わってくるけれど、逆に言うと力量さえ示せば、誰でも神にも魔王にもなれる。そう、何にだってなれるし、何処にだって行けるという心湧き立つ世界なんですよ。
それでいて、力さえあれば何をやってもいい、というわけでもなく、その世界にいる住人のほとんどが、共通の信義と誇りを旗として掲げ、非常にルールというものを大事にしている。遊びってのは、ちゃんとルールを守らないと楽しくもなんとも無いですもんね。
でも、遊びだからと言って、真剣じゃないわけじゃない。命を担保に、人生を捧げ、生涯を賭し、信念を貫く遊びがあって、何がおかしいだろう。
十六夜たちが全力で遊ぶゲームとは、そんな本気すぎるほど真剣なゲームなんですよね。だからこそ、彼らの活躍は痛快で、その破天荒で思い切りの良すぎる暴れっぷりは雄叫びを上げたくなるほどスカッとさせてくれるのだ。
これまで、十六夜たちにおんぶに抱っこのところがあった「ノーネーム」のリーダーである少年ジンも、コミュニティの頭首として、六本傷の若きリーダー相手に同盟締結交渉で見事な手腕を見せてくれたし、明日香や耀の飛躍的な成長、帰ってきたレティシアに新たに加わったペストたち。そこに、六本傷やウィル・オ・ウィスプとの同盟に、サウザンドアイズとの協力関係など、三人の問題児頼り、特に十六夜頼りだった「ノーネーム」が、グッと充実してきた感があって、高揚感もいや増すばかり。
さらに仲間もどんどん増えてきて、賑やかになってきた。賑やかさが、そく楽しさに繋がっていく。面白いなあ、面白いなあ。

今まで階層支配者という最強の実力者の一人という肩書きは知っていたものの、ちとその実力に実感のなかった白夜叉様も、神格返上して自由を得て身近になったせいか、その空恐ろしい実力のほどがようやく伝わってきた感がある。この人、本当にべらぼうに凄かったんだ。
そんな彼女と対等以上と白夜叉さま自らが認める【平天大聖】牛魔王。この人も結局登場はしなかったんだけれど、登場してないくせに伝言一つで物凄い存在感残していったんだよなあ。普通の牛魔王のイメージと全然違うよ。いや、むしろこの方が原点には近いのかもしれない。
そんな孫悟空や牛魔王と同格の七妖王の一人、蛟魔王……この人も実に面白いキャラクターをしていると同時に、敵じゃないってのがまた素晴らしい! 十六夜との真っ向からのガチンコ対決は、どちらも桁違いなだけに読んでるこっちまで煽られる煽られる。なにより、当人たちがあんなに楽しそうなんだもの。そりゃ伝染っちゃうって。
これほどの人を味方に迎えて対抗しなきゃならない、襲来予定の魔王ってどれだけとんでもないんだよ、と震え上がると同時に期待も増すばかり。

しかし、この世界では【斉天大聖】孫悟空は姐御だったのか! 三蔵法師が女性というのは古来からよくある発想でしたけれど、こっちが女性というのは新鮮だ!! すっごく新鮮だ!!

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