うちの居候が世界を掌握している!  2 (GA文庫)

【うちの居候が世界を掌握している! 2】 七条剛/希望つばめ GA文庫

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 世界有数の大企業オリオン社のトップにして、貧乏工務店・飯山家の居候でもある少年、真哉。
 美少女三姉妹と共に一人の中学生として日々を送りはじめる。だが、通学早々、

「ふむ、出力調整を間違えたかな?」

 衛星レーザーでうっかり学校の一部を大破させてしまう!
 罰として図書室の整理を命じられた真哉は、そこで莉子の親友、小雪と出会った。

 一方、生徒の間だけで売買されるお宝級ゲームソフトが話題に。
 その秘密を追い求める中で、真哉は図書室で進む危険な計画と、オリオンを発展させ得る大きな才能を見抜く。

 ゲームの行方で世界経済が崩壊の危機!? 社長ぉ、勝てますよねっ?
 無敵アットホームラブコメ第2弾!!
今の時代の世界を滅ぼすほどの危機って、強大な武力による物理的な破壊なんかじゃなく、世界を構築する情報の崩壊……つまり、デジタルデータの抹消なんですよね。そして、それは莫大なリソースを必要とする物理的武力と違って、技術さえあれば個人単位ですら行えてしまう、つまりは今の時代はたった一人の人間によって容易に世界を滅ぼすことの出来る時代なのだ……なんてことはもちろん、アメリカ大統領から核ボタンを奪取すれば簡単に世界を滅ぼせるぜ、というのと大して変わらない戯言…なんだろうけれど。今の時代においては核が空から降ってきて何もかも吹き飛ばすよりも、あらゆるデータが吹っ飛んでしまいあらゆる価値観が消し飛んでしまう、というシチュエーションのほうが「リアリティ」を感じるのではないだろうか。
その意味では、この「犯人」が引き起こそうとした事件は、相当に薄ら寒さを感じさせる内容だった。世界中がネットによって繋がっている以上、犯人の目論んだことは決して不可能じゃなく、実現可能なものなんじゃないのか、という疑いを、ネットによる繁栄を享受しつつその技術や概念の深奥については無知に等しい身の上としては、どうしても弄んでしまうものなんですよね。
この犯人が非常に狡猾、というか興味深い点は、爆弾の拡散をネットに頼らず完全にアナログで行ったことでしょう。勿論、それにはそうしなければならなかった環境の必然性があったのですが、それ以上にこれだけの高度な「爆弾」を作るだけの腕前を持ちながら、この犯人にはネットやPCに対する幻想、或いは信仰というものが殆どないんですよ。普通、これだけの技術の持ち主、ウィザードと呼べるだけの腕の持ち主なら、自分がどっぷりと首までハマりこんだ「電脳世界」に、現実世界を上回るだけの信仰や誇りを持っているものなのに、この「犯人」にはそれが欠片も存在していなかった、というのが実に面白い。だからこそ、あんなアナログな拡散手段を思いつき、実行できたんじゃないだろうか。プログラマーなら、どうしても手段を電脳世界上に求めてしまう思考の枷から逃れられないんじゃないかと思うのだ。
コンピューターへの親愛と憎しみが混ざり合った、複雑なメンタリティを備えた犯人の懊悩の末の結論が、世界共通の価値観の消滅だった、というのは極端ではあるけれども、方向としては整合が取れているんじゃないだろうか。

……って、アレ? 自分、こんな話を書くつもりだったっけ? 時々、特に要点を決めずに感想を書き始めると、事前に全く考えてもいなかった方向に話がすっ飛んで行く事がある。帰結するなら、この作品は面白かったよ、と言いたいだけなんだが、意外と「何故、面白かったのか」という結論に至る過程を思い起こそうとすると、はたと困ってしまう場合は珍しくなかったりするんだよね。だから、取っ掛かりを見つけたらそこから特に何を書くかを決めずに無造作にえぐりこんでいたりするのだけれど、そうするとオマエ読んでる時そんな風に捉えてたっけ。そんな事考えてたか? というところまで話が転がっていく。それはそれで、感想記事を書くことでその物語を最初に読んだ時とはまた違った角度だったり、違う深度、違うアプローチで見直す機会を得ていることになるんだろうな……って、また話が逸れてる逸れてる。

ええっと、何を書きたかったのか原点に立ち戻ると……

長女の頭の悪さが可愛すぎる!!

というところにあったような気がする、今になっては遠い昔の話。次女の莉子に騙されて、コンビニに「インターネットください!」と無邪気に恥を晒しに行く長女桃香のどうしようもないおバカさ加減がもう可愛くて可愛くて。普通にしてれば活発で面倒見がよいお姉さん気質の女の子、で済んでいるのに、おバカ属性がなんかもうこの子の諸々を爆発させちゃってるんですよね。みんな、お姉ちゃんをかわいそうな子を見るような目で見ないであげて! だからと言って生暖かい目で優しく見守ってあげてしまうのもそれはそれで哀れなので勘弁してあげてw
でも、逆にこれだけ無知な子だからこそ、社会的立場において無茶苦茶なところに立っている、それこそタイトルにもあるような世界を掌握しているような立場に立っている主人公に、何の気負いもしがらみもなく傍に寄り添える気がするんですよね。その意味では、不遇なポディションと見せかけて、一番主人公とお似合いな気がします。物語上においては出番で姉を食いまくっている莉子の方が、その点逆に厳しいんじゃないかと。頭のいい子というのは、わりとそれだけでハンデを背負っているケースというのが偶にありますし。ただ、この子の強かさと狡猾さはハンデを物ともしないタフさを強く感じさせるものがあるので、真哉への本気度も相まってこのままなら彼女がメインヒロイン、という形になるのも不思議ではないかもしれない。