ふたりの距離の概算 (角川文庫)

【ふたりの距離の概算】 米澤穂信 角川文庫

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春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの“古典部”に新入生・大日向友子が仮入部する。千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない―。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する!“古典部”シリーズ第5弾。

単行本で発刊されていた古典部シリーズの文庫落ち。
アニメって、こういう時は偉大だよなあ、と思う。だって、読み始めたら、動き出したキャラの姿形や声に喋り方、みんなアニメのそれになっちゃったんだもの。初めてアニメ見たときは、聡里を始めとして随分イメージ違うな、と違和感を覚えるほどではなかったものの驚いた記憶があるので、こうも露骨に脳内イメージがアニメ色に染まるとは。
もっとあからさまに言うと、登場人物を、より一層強調されたキャラ付けをして認識するようになってしまった、という事なんでしょうなあ。
そういう視点で見ていると、折木奉太郎というこの主人公の特色がより濃く見えてきたのが面白い。【遠まわりする雛】での、奉太郎とエルのふたりきりのエピソードを読んだ時にちらりと思った事だったんだけれど、アニメでの奉太郎の態度を目の当たりにした上で、こうしてこの【ふたりの距離の概算】を読んでみると、納得してしまったんですよね。
詰まるところ……折木奉太郎って千反田至上主義なんだ。こいつ、究極的に千反田のことしか考えてないんだ。どこが省エネ主義だよ、まったくw 千反田えるの事となったら、エネルギー問題なんぞ一顧だにしてないだろ、この野郎。
結局今回なんぞ、20キロものマラソンを、ただ千反田が悪く思われないように、とそれだけを目的に働きまくったわけですしねえ。ある意味、本当に最低限の事しかしてないから、省エネ主義は守ってると言えるのかもしれないけれど、労力の掛け方が微妙に妙な方向にすっ飛んでるんだよなあ(苦笑
古典部に入部しようとしていた大日向ちゃんは、屈託なく他のメンバーとの絡みのみならず、奉太郎ともやり取り軽快にこなせる良い人材だっただけに、彼女を逃したのは実にもったいなかった。仕方なかったとはいえ、五人になった古典部にまったく違和感なかったですしねえ。あの、実は微妙に面倒くさい性格も、えるとは違う突っつき役としては十分な素材だったのに。まあ、奉太郎がえるの事やえるのお願い以外で動くわけがないので、参入してても意味なかったのかもしれないけれど。
まあ、最初からどうしようもなかったものを、関係ない拗れだけを解きほぐすのみで片付け、微妙に後味の悪いまま終わってしまった、という話でした。

あと、里志と摩耶花、ようやく付き合い始めたのに、触れたのあれだけですかw しかも、伝聞……いや、もうちょっと盛り上がりを。里志がどうやって年貢を収めたのかとか、ないんだ、そうですか(涙
このサッパリ感が、一般寄りというところなのかもしれませんが。

米澤穂信作品感想