ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)

【ビブリア古書堂の事件手帖 3.栞子さんと消えない絆】 三上延 メディアワークス文庫

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 鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連となった賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。
 人々は懐かしい本に想いを込める。それらは思いもせぬ人と人の絆を表出させることもある。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読み取っていき──。
 彼女と無骨な青年店員が、妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは? 絆はとても近いところにもあるのかもしれない。あるいはこの二人にも。
 これは“古書と絆”の物語。
へえ、古書店同士こういう組合を作って横の繋がりを作って相互援助し合っているんだ。こうした仕組みを古書店が作っているのは世界的にも珍しいことのようで、思わぬトリビアでした。そんな顔馴染みの古書店主の中に、なんと栞子さんの幼馴染が!!
作者の三上延さんと云えば、電撃文庫においては渡瀬草一郎さんと並んで、名うての幼馴染ストとして勇名をはせた幼馴染作家。よもや三上さんがこんなカタチで幼馴染キャラを出してくるとは、時代は変わったんだなあ、と訳の分からない感慨に耽ってしまった。
でも、滝野さん、普通に良い人でよかった。ちょっと立ち回りが怪しかったから良からぬ事を企んでいたり、ビブリア古書堂に意趣があるのかもしれない、とか疑っていたりしてごめんなさい。純粋に幼馴染の栞子さんを心配し、かなり面倒くさい性格をしている彼女を深く理解している五浦くんを何かと応援してくれたり、トラブルになりそうな情報を先回りして教えてくれたり、とかなり助けて貰ってるんですよね、この人には。一応これ、ちょっとしたミステリー調の作品でもあるんで、むしろそんな風に細々と助け舟を出してくれる人って逆に怪しく見えてしまう時があるんですよね。そうじゃなくて、よかったと。
まあ、昔栞子さんとは滝野さんの妹の方が仲が良くて、滝野さん当人とは本の趣味で仲違いして以来、わりと疎遠、というのはなんというか栞子さんらしいw
でも、彼女が滝野さんの妹とよく店に飲みに行っているというのは、五浦くんじゃないけれど意外な情報だった。外飲みなんかしない引きこもりだと思ってたのに。店で飲む雰囲気が好き、というのは驚きだったなあ。人見知りなのに、外が苦手ってわけじゃないのか。
むしろ、伝え聞く母親の性格や、妹の文香のかしましいくらいの社交性を鑑みると、栞子さんがこれだけ内気というのも見合わない話なんですけどね。

しかし、母親の篠川智恵子という人物は、話を聞けば聞くほど怪物的な人物に思えてくる。殆ど空想の産物じゃないか、実際にこんな人間が居るのか、というバイタリティ?の持ち主なんですよね。その貪欲さや得体の知れなさが、ちょっと生身の人間離れしたところがある。例の古書店主が化け物のように恐れいているのも無理からぬところがある。あの手紙を見たら、ビビるよなあ。
そんな母親の異常性を、同じ血を引く自分は多分に引き継いでいるに違いない、と自分の本の執着性におびえている栞子さん。実際、彼女が本に対して異様なスタンスを見せることは、五浦くんも認める所なんだけれど……これまで、母親と栞子の複雑な関係が話しの中で浮き彫りになり、その母娘ゆえの類似性、同じ穴の狢、そういう理屈が語られるたびに、ずっと違和感というか、疑問というか、モヤモヤとしたものを感じていたんですよ。
うん、確かに篠川智恵子と篠川栞子には、否定出来ない共通性がある。異常性、破綻した人格、得体のしれない恐ろしい部分が引き継がれている。それは、血の繋がった母子故に、消せない繋がりなのかもしれない。
でも……どうして、その共通性は智恵子と栞子の間でばかり強調されるんだ? と。
それが母子ゆえに受け継がれたものなら……なんで、もう一人の娘、妹の文香についても同じじゃないかと、誰も考えようとしないんだろう、と。

血は争えない、という言葉が当てはまるのが、何故長女独りだと思った?

決して文香が黒いとかヤバイ、危険な子、だとは思わないけれど、いささかこの子を軽視しすぎていたんじゃないだろうか。仮にもこの子だって、篠川智恵子の娘で、栞子さんの妹なんだから、迂闊で口が軽い今時の女子高生、ってだけでは収まらないだろうに。
今後はこれ、もっとこの妹ちゃんについてもスポットが当たってきそうで、ちょっとワクワクしてます。この、不意にすぐ近くに底の知れない存在が居る事に気づいた時のドキドキ感って、結構くせになるんですよねえ。

とまあ、全体的に篠川智恵子の影を感じさせるエピソードが多かった中で、あの坂口夫婦が出演したお話は、このシリーズらしい親しき仲の心の機微に優しく触れる内容で、素敵なお話でした。あのしのぶさんが出てくると、大概こういう素敵な話になるから、この夫婦は好きだなあ。好きというか、しのぶさんについてはもうファンと言っていいくらい。
何やらおめでた、になってしまいましたけれど、次回以降もエピソードの主人公にはならなくても、是非顔を見せてほしいところです。

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