0能者ミナト〈4〉 (メディアワークス文庫)

【0能者ミナト 4】 葉山透/kyo メディアワークス文庫

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 豪華客船に現れる船幽霊。柄杓で水を撒くだけの時代錯誤な怪異に巨大な船を沈められる訳がない。湊が依頼を受けたのは言うまでもなく──クルーズを楽しむためだった。
 ユウキと沙耶は湊に見切りをつけ、早々に事件を解決。これで大っぴらに遊べるとばかりに、湊は泥酔しカジノで暴れボヤ騒ぎまで起こす始末。
 だが、怪異は終わっていなかった。巨体を誇る豪華客船が傾き始めたのだ。裏に潜む本物の怪異の仕業か? 転覆寸前の極限状況の中、湊の科学的推理が始まる!
理沙子姉、あんたって人は……(苦笑)
この人、なんか回を重ねるごとに馬脚を現してってるよね。初登場した時はびしっと決めたクールで知的な出来る
美人さんだったのに、もはや完全に生き遅れ残念美人である。
一冊丸ごと使った長編だったのに、理沙子姉さんがオチで全部持って行ってしまったというのはなんともかんとも。
腹抱えて大爆笑してしまったじゃないかw

さて、今回は豪華客船を舞台にした大スペクタクル巨編、と言っちゃっていいんだろうか。映像的にはハリウッドのパニック映画クラスの事は起こっているので、決して間違っては居ないはず。シリーズ通して初めての、一冊丸ごと使った長編になっていますしね。
今回の肝は、柄杓で掬った水を撒くだけの怪異「船幽霊」が、どうやって5万トンクラスのクルーズ船を転覆寸前にまで追い込んだのか。前提として発生している船幽霊は数体。単純な物量で沈めにかかってるわけじゃない、という点を踏まえて、この謎を解いていかなければならない。
この豪華客船で船幽霊が目撃された、という話から湊たちに依頼が舞い込む以前に、実は一隻、巨大タンカーが謎の事故を起こして沈没しているのですが、このしらなみ丸の事件がまた、今回の一件に上手く絡んでくるんですよね。このしらなみ丸に絡めた思考の誘導の仕方は、後から考えてみれば見るほど見事の一言につきる。原因と因果の逆転とでも言うべきか、面白いくらいに綺麗にミスリードさせられてたんですよね。
これには、湊も発想の転換に至るまで、珍しいくらいに事件の謎の解明に手間取っているあたりに、今回の一件の巧妙さが伺えるのではないだろうか。尤も、巧妙とは言っても、結果としてそういう形になっただけで誰かの意志や目論見が介在したわけではない、真に偶然の産物だったことが湊の思考を制限し、事態をギリギリまで悪化させてしまった要因になるのではないだろうか。まったく、悪魔に魅入られたような状況だった。
しかし、船幽霊の特質については、ちょっと笑ってしまってすらあったんだが。確かに、船幽霊の由来を考えたら、彼らが彼らなりに全力を賭しているのはわかるんだが、そういう知恵の回し方はしないでほしいなあ(苦笑
その理論からすると、むしろ迷信や無知に縛られていた古い時代の幽霊よりも、科学によって蒙を啓いた現代人の幽霊の方が、相当に厄介になってしまうぞ。
湊については、感心させられたのが、むしろ謎をといた事よりも、乗客のアフターケアにまで心配りをしたことでしょうね。ここが、彼が単純な探偵役なんかじゃなく、同時に偽悪者である事の証左なんでしょうね。事件そのものは、謎を解き明かした時点で解決し、客船転覆の危機も回避できたのですから、仕事自体はそれで終わりでも良かったはずなのに、乗客のメンタルケアまでキチンと請け負って、豪華客船の旅という夢の様なひと時を壊すこと無くこの一件に幕を下ろしたわけですから。
それに合わせて、先のタンカー沈没事件の犠牲者であり船幽霊になってしまった船員と、その恋人との哀しくも穏やかな別れには、切なさに胸を締め付けられ、ふうと吐息をついたのでした。

と、一部に哀しい決着を迎えながらも、概ね明るくどこか皆の心が重なるような、一連なりの映画を見終わったような感慨に浸っていたのに……続く閑話で、あの理沙子姉さんが全部オトしてくれやがって、もうこの人はw
いや、彼女は被害者なんでしょうけれど……湊にネタ提供しすぎなんですよ! あんたがネタ出さなかったら、湊だってそんなにおちょくれないんだからw
しかし、本作メディアワークス文庫で、挿絵なんて無いに等しいのに、なんでピンポイントで沙耶のあの姿をピンポイントでイラスト化してるんだよ(爆笑
カラーの振袖姿とのギャップがまた……。こうなったら、理沙子姉さんの例のドヤ顔の御姿も見てみたかったw


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