明日から俺らがやってきた〈2〉 (電撃文庫)

【明日から俺らがやってきた 2】 高樹凛/ぎん 電撃文庫

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ちょっと大人になった“俺ら”とおくる
未来系・青春ラブコメ第2弾「大学編」!

 未来からやってきた“俺ら”の協力もあり、晴れて大学生となった俺・桜井真人。高瀬と一緒に楽しい大学ライフを送るはずが、可愛いけど性格最悪な台風少女・香坂伊織と知り合ってから波乱万丈な日々。さらに“俺ら”にも新たな変化が──チャラ男の『推薦』&ガリ勉の『受験』に加え、高瀬のことが好きすぎる半ストーカーの『変人』が増えた。……ウソみたいだろ。全部、俺なんだぜこれ。……どうなる俺の未来!?
あれだけ高瀬涼に一途な主人公が、今更他の女の子の事情に積極的に首を突っ込むだろうか、と読む前は疑問に思っていたのですが、実際にどうして真人が香坂伊織の身辺に踏み込んで行く事になったのかを見るにつけ、至極納得。この男、まったく一切ブレてないわ。ただ、そのブレのなさというのは香坂にとってはやっぱり残酷なんですよね。これほど周りに気を許せずに生きてきた女性が、一世一代の勇気を振り絞って一歩踏み出した先で不恰好ではあっても手を離さずにいてくれた相手。それからの自分のあんまりな態度にもメゲず呆れず怒りもせず、我慢強く付き合って、自分から諦め恐れ怯えて閉ざしてしまおうとしていた未来への道を、導いてくれた男の人。そんな人に、特別な想いを抱いてしまうのに、何ら不思議はないでしょう。
でも、彼がそうしてくれたのが、全部自分のためじゃなかったとしたら? 彼が見ていたのが、最初から違う女だと知ってしまったら?
多かれ少なかれ、裏切られた、という気持ちを抱いてしまっても不思議ではなかったんじゃないでしょうか、このシチュエーション。それでも、小さな哀しみを切なく押し殺しながら、すれ違ったままだった友情を取り戻してくれたことに、閉ざされていた未来を開いてくれたことに、ただ感謝だけを捧げて退いた香坂伊織は、良い子だわ。いい子だけれど、切ないなあ。
それにしても、「俺ら」のなんと頼もしいことよ。高瀬と付き合う事になった未来から来た「俺」、てっきり「筋肉」とか「体育」みたいな肉体派の名前がつくのかとそのマッスルな仕様を見て思っていたんだが……立派なストーカーでした、ありがとうございます。というわけで、「変人」という名前がつくことに。「変態」じゃないのかよ。むしろ「変質者」でも良かった気がするが。まさかの完全ストーカー気質……まさかじゃないな。わりと現在の真人にも似たような傾向があるよな。そのせいか、何気に「変人」と意気投合する機会が多いので、これが真人の未来の姿と言われると、「推薦」や「受験」ほどの違和感はない。逆に言うと、それだけ今の真人と在り方は近似しているためか、客観的な意見や提案をしてくれる相談者としては、「推薦」や「受験」と比べるとあまり存在感はないんですよね。ただ、より熱の入った高瀬ラブの態度は真人の迷いを振り払い常に原点である「高瀬を幸せにする」という観点を見つめなおす機会を与えてくれるので、これはこれでなかなか重要なポディションなのかもしれない。
それにつけても、困ったときの「推薦」である。このチャラ男の自分、本当に頼もしいわ。大学生活の右も左も分からず、高校までとはガラリと変わる人と人との付き合い方。それらに対する「推薦」のアドバイスが一々的確で、なにこの安心感(笑
いい加減に生きているように見えて、根が桜井真人なせいか、それとも何だかんだと自分のことだからか、あんまり適当なことも言わないし、注意深く状況の変化も見極めてくれているので、本当に頼もしい。一方で「受験」はというと、これまで気詰まりな人生を送ってきた反動か、いささか変な方向に走って行ってしまっているのだ、なんともはや。
それでも、三人寄れば文殊の知恵じゃないけれど、本来なら一人で考えこんでしまって視野が狭窄し、思考が迷走しかねないような状況でも、率直かつ親身になって意見を述べ、考えが凝り固まって変な方向に行きそうになったら、皆が口々に的確な指摘をしてくれた上で状況を把握しきった上での非常に的確でまっとうなアドバイスをしてくれるものだから、主人公の言動もブレることなく最後まで安定感があったんですよね。
これ、状況まで見るとかなり難しい舵取りを要求される場面が連続していて、一つ間違えれば人間関係もぐちゃぐちゃになりかねない、かなり危うい綱渡りを強いられてるんですよね。何気に相当難易度の高い展開だったはずです。実際、真人は殆ど最善と言っていい行動を取り続けていたにも関わらず、状況がかなり悪化してしまう場面もありましたしね。
それでも、捨て鉢にならずに最後まで最善を信じて突っ走った真人に、殆ど完璧なサポートをやり遂げた「俺ら」。全部同じ人物というのは冷静に考えてみるとかなりキモいんですが(笑)、それでもこの現在の真人も含めた四人の「俺ら」、実に息のあった良いチームなんじゃないでしょうか。
面白かったです。

1巻感想