レンタルマギカ  最後の魔法使いたち (角川スニーカー文庫)

【レンタルマギカ 最後の魔法使いたち】 三田誠/pako 角川スニーカー文庫


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“協会”と“螺旋なる蛇”の切り札がついに激突!さらに世界の認識を創り変えんとする惑星魔術の発動と、それを妨害せんとする、第三団たちの強大な魔力がせめぎ合い、布留部市には呪力の嵐が激しく吹き荒れていた。大魔術決闘が佳境に向かう中、いつきたち“アストラル”は最後の力を結集し、起死回生の勝負に挑むが!?それぞれが夢見て願った“魔法使いの未来”は、誰がつかむのか!?大ヒットシリーズ、ついにクライマックス。
ついにレンタルマギカも最終巻。トータルで22巻にもなる大長編になったんですか、これ。あとがきによると、もう一冊だけ、後日談を描いた本を出されるそうなので、23巻になるのかもしれませんが。それにしても、感慨深い。第一巻の「魔法使い、貸します」が出たのがほぼ丸8年前。この業界では、一時代前と言っていいかも知れません。この頃からまだシリーズ続いている作品というと、もう随分と少ないんじゃないでしょうか。それだけ長く付き合うとやはり愛着も湧くものなのか、この最終巻、読んでいる折々で何だか泣けてきてしまって。悲しいとか嬉しいとか、そういう激しい感情とはまた別の、揺り起こされるような感慨に思わず目がうるうると潤んでしまいました。この最終巻がまるまる最終局面のBGMが鳴り響くような展開だったからかもしれません。
思えば、このシリーズは作者である三田さんの転機になった作品だったんじゃないでしょうか。正直に申しまして、これより以前の作者については殆どはっきりした印象は残ってないんですよね。著作自体はカバーしていたものの、他の作品と差別化された特別な個性というものは感じなかったように思います。それが変わったのがこのシリーズを書きだした頃。それでも、当初は多少目新しいというくらいでしたけれど、4巻5巻と巻を重ねるにつれ、大きく変化を感じたのが「竜と魔法使い」。そして、明確に階段をあがって新しいステージに立ったと感じさせられたのが「鬼の祭りと魔法使い」でした。ちょうどこの頃、他にも【アガルタ・フェスタ】や【烙印よ、虚ろを満たせ。】というシリーズを並走して展開していたのですが、この時期を境にして両シリーズとも大きくその質とスケールが革新してるんですよね。残念ながら、両作ともここからしばらくしてシリーズが終了してしまっているのですが、両方共このまま長く続けばまた全く別の顔を見せてくれていたのではないか、と思わせてくれる伸びやかさを見せてくれていたのです。
そして、以降のこの【レンタルマギカ】シリーズの躍進と、こちらもすでに完結していますが【イスカリオテ】や今丁度ロングシリーズへの道を歩みはじめている【クロス×レガリア】シリーズを見てもわかるように、今や名実ともに第一線級のライトノベル作家として活躍していらっしゃる次第です。本当に、この人の書くお話は、とびっきりに面白くなりました。その筆頭にして最先端だった【レンタルマギカ】が終わるというのは自分の中でも相応の大事件だったようです。未だに、なんだか気分がふわふわとしております。
それでいて、妙にすっきりしているのは、いつきの目指した夢物語が、一つの明確な方向を得て進み始めたからでしょう。彼は実現すべきを実現し、その先へとみなと一緒に歩き始めた。そこに憂いなどもうなくて、だから何の心配もなく、彼らの行く末をこのまま見送れる気分になっているのだと思います。人間関係にも、ある程度ひと通りの決着もつきましたしね。勿論、彼らのその後、その先をまだ見守るにやぶさかではなく、後日談は嬉しい限りなのですが。
それに、助けたかった人を、助けることが出来たんですもの。とびっきりの、ハッピーエンドじゃないですか。
幽霊少女の黒羽と、影崎の関係は此処に至ってなんだか神聖なものすら感じさせる透徹として触れ難いものにまで高まっていて、だからこそでしょうか、2人の顛末には胸がいっぱいになりました。生きた人間の領域からはみ出してしまった二人だからこその尊さ、神聖さというべきなんでしょうか。もの凄く、素敵なものを見せてもらったような気分でした。

そして、何より尊かったいつきとアディと穂波の三人の関係。徐々に、徐々に一度は正三角形に収まった三人の関係がバランスを変えていき、いつきが誰を選んでいっているのか、言われなくても伝わってくる話の流れになってしましたけれど、最後の最後までいつきを守り、アディを庇護し、二人の関係そのものを守護し続け、その先へと送り届けたのが穂波であったのには、なんだか感動してしまいました。恋も友情も越えた先にある、親愛の極みを覗き見たような……。


他にも、この物語には随所にそんな「素敵」な出来事や事象や関係が散見していて、それらが星のように輝くのを、満天の夜空を仰ぎ見るかのように見上げていた、そんな最終巻でした。
魔法使いも、普通の人も関係なく、幸せを夢見て今を生きる。そんな、魔法のような物語。

お疲れ様でした、ありがとう、そしてまた……。

三田誠作品感想