魔王のしもべがあらわれた! II (電撃文庫)

【魔王のしもべがあらわれた! 2】 上野遊/一真 電撃文庫

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自称魔族が学校侵略!?
獣耳少女も参戦の居候ラブコメ第2弾!

 僕を「魔王」と呼ぶ自称魔族のシュバルツリヒトと、大財閥の腹黒お嬢様・要がセーラー服で教室に現れた! まさかの学校侵略!?とおののく僕だけど、どうやら見た目小学生な政府のエージェント・桜の仕業らしい。当然のことながら、美少女二人の登場で学校は大騒ぎになる。
 へとへとになって帰路につく僕に、さらなる災難が。正体不明の獣耳少女が襲いかかってきたのだ!
「おのれ毛玉の眷属め!」「にゃ!」
 問題児3人娘との同居生活も続行中。魔王のしもべと贈る、居候ラブコメ、大波乱の第2弾!
あれ? なんだろう、すっごく面白かったよ!? 前回は人の言うことを聞かない大迷惑少女で少なからずストレスの対象だったシュバルツリヒトが多少なりとも環境に適応してきたからでしょうか。もうすっごい可愛いんですよ、シュバルツちゃん。それも、女の子として可愛いというよりも、ワンコっぽい可愛らしさ。そしてワンコはワンコでも、忠犬気取りのヤンチャで気忙しい子犬、という感じで、一々仕草やら反応が可愛いんですよね。学校に転校してきてどうなるかと思いましたけれど、少なくとも周囲を顧みない言動で授業やら日常やらをぶち壊しにする事もなく、危なっかしいながらもなんとかやってけてましたしねえ。幼馴染のデカ女ちゃんに猫可愛がりされて、怯えて尻尾を丸めて魔王さまの背中に隠れるシュバルツちゃん、でら可愛いっす。しかしいいのか自称四天王(笑
この子をワンコと捉えると、後から登場した小虎にやたら突っかかっていったのも、いきなりテリトリーに入ってきて、ご主人様に構われだした子猫に嫉妬して憤る子犬だと思えば実にしっくりするのです。

こうして見ると、意外なほど二巻になってこの主人公の椎名明にシュバルツリヒト、鹿島要に大門桜、という椎名家の家族サークルが機能しだしているんですよね。要お嬢様が愉快犯的な行動原理とは言え、かなり身内としての立場で明を助けたり、シュバルツリヒトのフォローに回りだしたのも何気に大きいんですよね。いつの間にか凄く親身になってくれてて、この擬似家族がうまく回る橋渡しやフォロー役として立ちまわってくれてるんですよね。まさしく名前通りの要として機能してくれているのです。そして、桜さん。この人も見た目小学生の大人、という立ち位置からして狂言回しかと思ったら、ちゃんと保護者としても社会人としても明たちの頼もしい後ろ盾となってくれてるんですよ。元々、明からしてその境遇から歳の割に非常にしっかりとしたメンタルなのも相俟って、ワイワイと賑やかに過ごしている割にこの家族、びっくりするくらい安定感があるんですよね。シュバルツリヒトが無茶苦茶しなくなった事もあってか、要と桜が遊び心たっぷりありすぎるので結構ノリノリで話が進む割に安心感が揺るがないので、なんだか落ち着いてこの愉快なノリを楽しめました。
そこに現れた行き倒れの異国の少女。この子がまた儚げで健気で幸薄そうで、おとなしく遠慮がちなくせに懐っこい子猫そのもので、またえらく絆されるんですよ。
彼女の境遇が、またこの世界の社会問題と直結した世知辛いを通り越した、戦後の被害者そのものなんですけれど、無常感のみじゃなく、ちゃんと少年少女たちの真っ直ぐな正義感を、大人たちの真っ当な善意が後ろで支えてくれている展開は凄く好きです。この大人たちこそが、自分たちの無力さ、非情で酷薄な現実を何度も目の当たりにして打ちのめされてきたからこそ、悲劇に対して必死になって手を差し伸べようとしてるんですよね。でも、その尽力は大人ゆえの立場や視点からどうしても行き届かない部分がある、力を尽くし切れない部分がある。悔しいでしょう、忸怩たるものがあるでしょう、それでもなお諦めず、柵に囚われた自分たちに変わって直接悲劇に切り込んでいく少年少女たちに、彼らは祈りを託し、同時に子供たちがどうしようもできない分野で両手を広げて受け止めてくれる、そんな大人たちの姿勢がすこぶる心を打つんですよね。
人が残した悪意に対して、子供も大人も等しく憤り、人として見過ごせないとして、人として恥ずかしくないように、出来る事をやりつくそうとする。できないことは出来る人に託して、自分の出来る事に全力をつくす。
いい作品ですよ、いい話ですよ、これは。腐臭すらする社会問題を背景に忍ばせながら、戦争の傷が色濃く残る戦後という枠組みを映し出しながら、そこにしっかりと人の情を描き、心あたたまる交流を描き、胸のすくような結末を用意する。
繰り返しますが、いい作品ですよ、これは。一巻の時からは思わぬほどいい作品になりつつある。このまま埋もれるには、実に惜しい作品になっていってると思います。
なんとか、軌道に乗って欲しいんだけどなあ……。

1巻