VS!!2 ―史上最悪の怪人― (電撃文庫)

【VS!! 2.史上最悪の怪人】 和泉弐式/白羽奈尾  電撃文庫

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世界を守る英雄たちを倒すべく新たに生み出された怪人は──

 廃止処分をまぬがれた、悪の組織の戦闘員たち。いまは亡きジャバウォックの悔しさに想いを馳せながら、21号や22号は、次こそは英雄たちを倒そうと苦闘していた。しかし、思うように事態は好転しない。
 そんな彼らを助けるべく、アルスマグナの幹部パラケルススが新たな怪人を生み出す。その名は──。
 悪の組織の下っ端戦闘員、21号の熱血アクションストーリー!

英雄とは、死してなお英雄である。

戦闘員たちのみで、英雄機関のヒーローたちをあと一歩まで追い込み、戦闘員廃棄の決定を覆したニーイチたち。戦闘員たちの指揮を取り、作戦を立て、自分の身を掛けてヒーローたちに勝利したニーイチは、皆からダークヒーローと呼ばれて祭り上げられるのだけれど、彼にとって最大の英雄は今もなお亡きジャバウォックであり続けている。
そして、自分たちのために彼女が死んだことを。彼女を助けられなかった事を後悔し続けている。恐らく、その後悔こそが今のニーイチの原動力なのだろう。英雄機関のヒーローを倒すために作戦を練るニーイチには、かつてのように世の中を小馬鹿にしたような斜に構えた笑いを見せることがなくなってしまっている。変わらず戦闘員廃止を推し進めようとするアルスマグナ上層部のプレッシャーもそれに拍車をかけているのだろう。ダークヒーローと仲間たちに呼ばれる彼には、それに自惚れ調子になる余裕もなく、まるで追い立てられるように打倒英雄に邁進していくのだ。
亡き英雄の残影は、ニーイチのみならず多くのものたちに影響を与え続ける。ジャバウォックの後継として生み出されたリヴァイアサンにとっても、ニーイチの傍に寄り添い続けるジジにとっても、ジャバウォックの影は無視できない大きな楔だ。ニーイチにとってはジャバウォックの背中を追いかけて英雄機関の英雄たちを打倒するのが一番の目的だけれども、リヴァイアサンやジジにとってはむしろジャバウォックこそが乗り越えるための大きな壁なのかもしれない。ニーイチの中で大きな位置を占め続けるジャバウォックから、彼自身を取り戻すためにも。
ただ、自分というものがしっかりと固まっているジジに対して、生まれたばかりで経験が少なく、さらに自分の存在意義を見失いかけ、その拠り所をニーイチから寄せられる期待に求めていたリヴァイアサンはあまりにも不安定だった。

ジャバウォックの次に、あのパラケルススが生み出した怪人については、その発想の持って行き方には随分と驚かされた。史上最悪の怪人なんてタイトルがついていた分、思い込みを誘導されてたんだろうね。それでなくても、物語の展開においてこういう娘をわざわざ持ってくる、というのが発想の勝利だと思う。彼女の在り様が明らかになった時には、思わず巧いと唸ったくらいだし。
どう見ても善人であり、自分が生み出した戦闘員や怪人に、我が子のような愛情を傾けるドクター・パラケルススがなんで悪の組織に加わっているのか、その理由の一端も、アルスマグナ上層部との確執から段々と透けて見えてきた事だし、この辺の人間関係も面白くなってきたなあ。

一方で、敵側である英雄機関のヒーローたちもまたイイキャラクターしてるんだわ。この作品、悪の組織側が主人公で描かれているのに、ちゃんとヒーロー側は真っ当にヒーローしてるんですよね。それも独り善がりの正義なんかじゃなく、それぞれに自分の正義を抱えて、その在り様に悩みながら。まだまだ、彼らについては個々に掘り下げて行っているわけじゃないんだけれど、逆に言うと掘り下げていないにも関わらず現段階でここまで魅力的に描かれているというのは瞠目に値すると思われる。
ひょんなことから、英雄機関側の桃色こと桜とニーイチの交流も深まって人間関係も錯綜してきた事ですし、どうやら英雄機関側もこのまま着実に描写が増えていきそう。
ラストの展開を見ても、英雄機関側に踏み込んでいくことになりそうですしね。
しかし、ラストのジジの一言には度肝を抜かれた。引きとしては、超一級でしょう、これ。うわぁ、これは続きが気にならざるをえないよ。

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