魔導書が暴れて困ってます。まぁ、どうしよう!? (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。まぁ、どうしよう!?】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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真崎謙児が訪れたのは、東京のはるか南方に位置する六道島。そこには全寮制の学園都市「六道学園」と、この世界において滅多に目にすることが無くなった魔法に関する本「魔導書」を収蔵した大図書館があった。転入初日、夜の学園を散策する謙児の目の前に現れたのは黒髪の少女、冬菜。この世界からは消えたはずの魔力を操る謎の敵に追われる冬菜を助けて逃げる謙児。そんな彼の前に現れたのは輝く銀髪をなびかせる美少女、伊佐木イリーナ。冬菜の姉だという彼女の魔法で窮地を脱した謙児だが、しかし魔力の暴走で図書館の封印がとかれ、魔導書たちが島中に逃げ去ってしまった。心配になった謙児はイリーナの魔導書の回収に付き合うことにしたのだが、ひと癖ふた癖ある魔導書たちに悪戦苦闘、次々と予想外のハプニングにドッキドキ?!魔道書回収ラブコメディ。
はーー、しばらく読んでなかったうちに、瀬尾さんもこういうの書くようになったんだ。……そうかー。
この作者の作品は、ごく初期の頃に幾つか読んでなんというか……心折られてしまったんですよ。読んでて、辛くて辛くて泣きそうになってしまったんですよね。というのも、この人の書く物語というのは、遥か遠く遠く、辿りつけないような高みまで、人が昇っていく話であると同時に……その高みへとかけあがって行く人たちを見送る物語でもあったのです。すぐそばで笑っていた人たちが、子供の頃から一緒に居た人が、想いを交わし合った人たちが……そんな想いも絆も置き去りにして脇目もふらず遠くへ飛び立っていくのを、見送る話だったのです。
置き去りにされる人たちは、それを受け入れ、彼らが飛び立っていくのを心から祝福し、応援し、その手助けをしていくのですけれど……それがねー、辛くてねえ。なんだか、見ていられなくて、【クジラのソラ】の途中で心折れてしまったのです。実は結末の4巻まで読んでいないので、もしかしたら話の途中で方向転換がなされていたのかもしれませんけれど、とにかく自分にはこれ以上読むのはつらすぎたんですよ。ちょっとトラウマになるくらい。トラウマというのは大げさか。でも、この作者さんの著作には怖くて手が出せないくらいには。
で、気がつけば五年くらい経ってました。
うん、なんで今さらになって手を出そうと思ったのかは自分でもよくわかりませんけれど、この五年近くずーっと気にしてたのは確かなんですよ。読みたくはないけれど、気になって仕方なくって、チラチラ横目で伺ってたんですよね。それが、まあ場の勢いというやつです。
新刊じゃなくて、三巻くらいまで出てから手を出してみる、というところに我ながら臆病さを感じてしまいますが。

とまあ、懐古はこのくらいにして、本作なのですけれど……いやあ、自分なにをビビってたんだろう、というくらいに突き放されることなく、ヒロインの姉妹と主人公がお互いを受け入れ合うお話でした。
こうなってみると面白いんですけれど、ヒロインの姉妹はふたりとも求道者でありながら、それぞれの理由で求めた高みから転げ落ちて挫折し、その代わりと言ってはなんですけれど、遥か遠く高みにあるものではなく身近で大切なものに全霊を賭すようになっている。同時に、これは姉のイリーナが特に顕著なのですけれど、置き去りにされることをひどく恐れているんですよね。その為か、非常に繋がりや距離感に対して強いこだわり、執着、或いは懇願にも似たものを抱いている。
面白いことに、主人公のあり方、言うなれば真摯な誠実さ、とも言うべき求められた事に応えようとする在り方、これはかつて私が読んだ昔の作品の主人公と、この作品の主人公はさほどその根源が変わっていないにも関わらず、主人公に対して求められているもののベクトルがまるで正反対になっているために、物語そのものの在り様が全然変わってきている、それともこれは反転してきている、と言った方がいいんだろうか。ともかく、全く似ていて非なるものになっている。面白いなあ、これはこの作品特有の傾向なのか、それとも作者の最近の傾向なのか。気になるので、作者の最近の他の著作にも手を出していこうと思ってます。まずは、富士見の【スカイ・ワールド】くらいから。

しかし、この主人公って、自分の性欲に対しても誠実なんだな。ギラギラした欲求は全然見せないくせに、さらっとセクハラしまくるので油断できない。しかも、イリーナさんが色々とチョロすぎるので、セクハラが素通しなんだが……あれ? これって結構エロエロですか?