眠らない魔王とクロノのセカイ 3 (GA文庫)

【眠らない魔王とクロノのセカイ 3】 明月千里/閏月戈 GA文庫

Amazon

『グランドクロス』の予兆に対して《世界和平協会》は、各世界の魔王を集めた『並行世界会議』の開催を決定する。 サミット開催を目前にした、慌ただしい日常の中、夜は死んだはずの少女、リルと偶然の再会を果たす。

五年前に救えなかった、クロノとよく似た少女の出現で戸惑う夜の前に、巫女姿の少女、イチナが現れる。 かつて十神家を追放された悪の血筋、『祀桜』を家出してきたというイチナは、夜にリルの正体を伝え、一つの話を持ちかけてくる。
「私は......運命を変えたいんです」

過去と現在が邂逅する《運命の分岐点》。
緊迫の異世界交錯<クロス・ワールズ>学園ファンタジー第3弾!
うおおい、他の七世界の魔王は? 最強の十二人のゾディアックは?
面白そうなネタや要素だけ散々散りばめておいて、打ち切りですか……うががが。まさにこれから、というところだったのになあ。
結局ラストとなってしまったプレイヤーとの戦いも、虚々実々の駆け引きが実に見ごたえたっぷりで面白かっただけに、ここで終わりというのは勿体無かったなあ。こうして振り返ってみると、やっぱり作者の得意領分ってデビュー作の【月見月理解の探偵殺人】のように、直接のバトルじゃなく互いに謀を仕掛け合う頭脳戦だと思いましたね。主人公の能力「聖罰の規約」だって、ルールを定めたゲーム上でこそ様々なアプローチを仕掛けられる能力でしたし。その意味では、むしろ干戈を交える以前の攻防こそが壮絶であり、何に剣を向けるべきか、そもそも敵は何なのか、から探り出し見えない誘引を逆にたぐり、思惑を読み切ろうと焼ききるような思考を巡らせる、今回の一連の駆け引きこそ本作の妙だったように思います。
ただ、打ち切り決定だったためか、伏線や設定のツッコミ方がやや性急な面が浮き出てしまったんですよね。あの幼馴染リルの設定は、扱いようによっては本作を傑作へと押し上げかねない虚を突き練り上げられたものだったと思いますよ。リルについては、これまでに開示された情報からして単純にリル=クロノだと思い込んでいましたからね。もし、この部分をよりねっとりじっくり掘り下げてねぶるように描いてたら、実に味のある煩悶と心の駆け引きが引き出せる素晴らしい設定だったと思うんですよね。それだけに、スペースの関係上ここでシンプルに消化してしまうのは惜しいなあ。惜しかったなあ。
その分をイチナの方に注ぎ込んだのは、どちらも中途半端にして台無しにすることを思えば英断だったんじゃないでしょうか。この子の悪への覚悟の徹し方と、救いへの焦がれへの煩悶は凄い好みだったんですよね。たとえ捨て鉢ではあっても、流されるのではなく戦って戦って戦い尽くすことを選んだ少女。思えば、ヒロインのクロノをはじめ、主人公の夜を含めて、ここに出てきた登場人物たちは過酷で情け容赦のない境遇に立たされながら、悲劇に流されることを良しとせず、たとえ結末が良きものであろうとなかろうと最後まで抗い戦うことを選んだ者たちでした。何だかんだと鬱屈を覚えずスッキリとした物語だったのは、皆がそうした一本筋を通そうとするキャラクターたちだったからかもしれません。もうちょっと、この子たちの物語を見続けたかったのですが、残念でした。個人的にはカナカ回が回って来なかった事が痛恨ですw また次回作に期待させてください。

1巻 2巻