デート・ア・ライブ5  八舞テンペスト (富士見ファンタジア文庫)

【デート・ア・ライブ 5.八舞テンペスト】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

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夏休み前の七月一七日。来禅高校の修学旅行で或美島を訪れた五河士道は二人の精霊と遭遇する。「最後の決闘だ!この男―士道を、先に落とした方の勝ちだ!」「承諾。―その勝負、受けて立ちます」どちらが真の精霊かを争う八舞、耶倶矢と夕弦。彼女たちの裁定役に選ばれてしまった士道は令音に相談するのだが…。「…今回、私は、君をデレさせる。だから君はその上で二人をデレさせてくれ」謎の通信障害によって“ラタトスク”のサポートは受けられない状況の中。すれ違う二人の精霊の過酷な運命を覆すため、デートして、同時にデレさせろ!?―。
耶倶矢と夕弦という双子の精霊が登場したことで、ついにこれまで登場した精霊は計6名にまで達したのだけれど……壊れてしまっていた狂三を除いた全員がそのメンタリティは普通のそこら辺の年頃の女の子なんですよね。当人たちは記憶も目的もなく、ただ自分は精霊という存在であるという自覚があるだけで、訳もわからないまま現世に放り出されてパニックになっているだけの女の子でしかないのである。精霊としての強大な力を持っていること自体が間違っているようにすら思える、そもそもが力を振るう理由も目的も意志も持たない子たちなのだ。
デレさせろ、なんて意味不明としか思えない方法を推し進めている為にイメージが変になっているものの、「ラタトスク」の精霊を排除するのではなく保護しよう、という方針はこうして精霊の類形を見せられると非常に正しいものに思えてくる。
とはいえ、精霊とは出現するだけで社会を崩壊させかねない巨大な破壊を生じさせる存在でもある。実際に無数の犠牲者が生まれていて、人類側の攻撃は通じずに反撃は圧倒的という存在なのだ、精霊は。それを敵性と判断し、排除しようとする考え方を間違っていると糾弾するのはやはり一方的すぎるのだろう。
初期のエンゲージが致命的だったんでしょうね、きっと。人類側も精霊側も両者ともが予期せぬ事ばかりで冷静で居られなかったことが破滅のドミノを生んで対話が生まれないまま致命的な錯誤が固定化されてしまった。

でも、今、こうして精霊との対話が成功し、彼女らの破壊行為が一部の例外的な精霊を除いて概ね敵意も悪意もないものだったと知れた以上、そして士道とのコンタクトによって彼女らから精霊としての力そのものを封印できるという事実がある以上、一方的に精霊を敵として排除しようとする考え方は感情を抑えて間違いだとするべきなんだろうけれど……。
果たしてあの「DEMインダストリー」の過激なほどの精霊への敵視は、感情論や既存の考え方だけに基づくものなんだろうか。裏の思惑がある、というにしてはあの社長の態度には、憎しみに類する感情がかいま見える気がするんだよなあ。
いずれにしても、DEMインダストリーとラタトスクの両組織のみが、技術力が異常なほど突出しすぎてるんですよねえ。まず間違いなく、彼らの裏にこそ精霊という存在の秘密を解き明かす鍵がありそうなんだが。
それに、士道の力をラタトスクが正確に把握していたらしき件。そして、精霊の力を振るう事が出来るという士道の能力への、あの琴里の覚悟の壮絶さ。兄への好感度がMAXを振り切っているはずの琴里をして、あんな発言をせざるを得ないほどに、愛してるからこそやらねばならぬと思い定めなければならないほどに、士道の持つ力というのは危険なのか。

と、真面目な話をしている一方で、非常に残念なことになっている人たちも。
特に、世界最強の魔術師(笑)エレン・ミラ・メイザースさん、貴女ですw
鳴り物入りで登場したくせに、「DEMインダストリー」のエースにしてジョーカというワイルドカードとして登場したくせに、思わせぶりに強者風情で登場したくせに……この人駄目っ子だw
やることなす事うまく行かないし、実力を発揮する以前に発揮させる場に至れずに自爆してしまうという残念さ。いざようやく戦場に経ったと思ったら、本人関係ないところで不運が重なり、というかあれは監督不行き届きな面も強かろう気がしますが、魔術の実力とは関係ないところでボコボコに。
……もっとがんばろうな。

逆に、前回まで凄まじい無能具合を晒しまくってて、こいつ要らないんじゃね? と読者どころか同じラタトスクの部下たちにも思われていた副司令官の神無月恭平がついに真価を発揮! こいつに真価があるなんて思ってもいなかったよ! なんでこの人が副司令官なんだろう、と本気で疑問に思ってただけに、実はネタキャラでしかないんだろう、と思い込んでいただけに、その凄まじい実力と経歴には唖然呆然。そして、あの性格はやっぱり素でしかなかったと知れて愕然がっくりw
彼の初めての見せ場が、ラタトスクの空中艦<フラクシナス>とDEMインダストリー空中艦〈アルバテル〉の航空戦、という対精霊戦以外では初めてと言ってもイイくらいの大規模戦闘になるとはねえ。いやあ、変態のくせにマジ凄かった。

DEMインダストリーが本格的に動き出してラタトスクと衝突し、また拉致されたと思しき崇宮真那の方にも動きがあったことで、士道の能力が本格的に目覚め始めたことと相俟って、そろそろ物語自体も激しく動き出しそうな予感。精霊も新しいのが登場するにしても、これまでの子たちみたいな何も知らない子たちじゃなく、真実を知った上で動いている子たちがそろそろ出てきそうなものだけれど……さて。

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