ブラック・ブレット〈2〉vs神算鬼謀の狙撃兵 (電撃文庫)

【ブラック・ブレット 2.vs神算鬼謀の狙撃兵】 神崎紫電/鵜飼沙樹 電撃文庫

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蓮太郎がステージVの1体を倒したことで、東京エリア周辺ではガストレアの活動が一時的に沈静化していた。そんな折り、大阪エリアの統治者・斉武宗玄が、首脳会談のため東京に来訪する。彼を迎える聖天子は、自らの護衛役として、蓮太郎を指名。延珠とともに聖天子をボディガードする蓮太郎だったが、会談場所へと向かう彼らに、想像を絶するスナイパーが襲いかかる。姿の見えない敵に、二人はなすすべもなく―。好評の近未来ヒロイック・アクションの第2巻が、早くも登場!哀しみの先に蓮太郎が見たものは…。
……これ、マジで面白いな。
いやーいいわこれ、ほんとに面白い。2巻もこんなにおもしろいのか、ガチじゃないか。なんかもの凄く琴線に触れるなあ、なんでだろうなあ、と思ってたら、そうだそうだ、この作品の雰囲気がね、世界観の空気が自分のバイブルの一つでもある【シャギードッグ】シリーズによく似てるんですわ。近未来のサイバーパンクと古武術や伝統ある作法の数々の融合に、隠然たる政争や組織間抗争の暗部に絡む事件の数々。こういうの大好物なんですわ。
世界の光と闇が交錯する中で、人間の醜悪さ、妄執、歪みが浮き彫りになると同時に、爽やかな清廉さやささやかな善意、純粋一途な想いなどもまた人間の確かな側面として描いてくれる、絶望と希望が目一杯に詰め込まれたトイボックスですなあ。そりゃあ、楽しいに決まってるわ。エンタメの極みの一つですもの、そういうのって。

相変わらず、木更さんの落ちぶれた貧乏お嬢のキャラが素敵で仕方がない。このヒロインさん好きだわー。惨め可愛いって新境地だよねw
今回はさらに、落ちぶれてない本物の財閥のお嬢様が、一巻から出てたけれどこの度本格的に登場してきて、綺麗に喧嘩売ってくるので、木更さんの惨め可愛さがさらに募るばかりに。なんてこったいw
でもこの人、本当はべらぼうに強いんですよね。強い強いとは言われてたものの、今までは持病のハンデキャップのこともあり、その実力はほぼ秘めたるままだったのだけれど、今回はその実力の一端を垣間見ることができたわけだが……作中でも語られてるけど、この人生身の人間の到達点にまで至っちゃってないか? 尋常じゃないんだが……いや、凄かった。そんな凄い木更さんでも無敵ではいられないというのがこの世界のインフレっぷりではあるものの……まだまだ本領は発揮してないよなあ、この分だと。
でも、絶体絶命のピンチでそんな映画のヒロインみたいな台詞を素で口にしてしまえる木更さん、超可愛いです。この人、あからさまではないしベタベタもしてこないけれど、別に蓮太郎のことが好きなの隠してないよね? 蓮太郎も木更のこと好きだと言っているのだから、相思相愛と言ってもいい間柄のはずなのに、不思議とそういう雰囲気がないのは何故なんだろう。やはり、彼女が復讐を最優先に拘っているからなのか、貧乏すぎて恋愛どころじゃないからなのか(笑
でも、相棒とは少し違うのですけれど(相棒は延珠ですしね)、木更と蓮太郎の雇用関係とも姉弟関係とも同志という関係ともほんの少しずつズレている不思議な関係は凄く好みなので、このままうまく発展していってほしいなあ。
さて、今回の新キャラクターはサブタイトルにもなっている神算鬼謀の狙撃兵であるティナ・スプラウト。モデル・オウル―フクロウのイニシエーターというのがまた渋いなあ。神算鬼謀と銘打っているけれど、相手をハメるタイプの謀士というタイプじゃないんですよね。というよりもむしろ、生粋の兵士――コマンドでしょう。慎重で狡猾で臆病で大胆な、相手を仕留めるためにあらゆる策を練り、間隙を生み出し、罠へと誘導する。まさに狩人、まさに狙撃兵。しかも、攻撃一辺倒ではなく自分の身を守るための措置、或いは反撃してくる相手を自らの用意した死地、トラップフィールドへ落とし込み逆撃を食らわせる用意を欠かさないという、防御に回っても牙を剥くといいギラギラと研ぎ澄まされた感性は、本物のコマンドですよ、これは。そんな彼女の性格自体はぼんやりしているというくらいオットリとしていて、自分の中の一線を超えない強さと優しさを有した良い子なんですよねー。
延珠も、一巻でかわいそうになってしまった千寿夏世もそうなんだけれど、なんでイニシエーターたちはあんなにも健気なんだろう。先を望めず、怪物と罵られ恐れられ、人から忌み嫌われながら、どうしてこんなにも優しく献身的なんだろう。蓮太郎があんなにも必死になって延珠たちを悪意の視線から護ろうとするのもよくわかる。報われなけりゃいけない娘たちですよ、この子たちは。その意味では、今回の結末は本当にホッとした。もうどれだけ残酷物語が続くのか、と心折れそうなところでしたし。希望を繋ぎ止めてくれて、本当に良かった。
もっとも、単に終わりを先延ばしにして焦らされているだけかもしれないけれど……。

ちなみに、今回一番印象的だったシーンは、菫先生が半狂乱になって蓮太郎を止めようと叫び続けているシーンでした。この人も変態だし、色々壊れまくってる人なんだけれど……なんか凄く親身になってくれるのが身にしみるんですよね。彼女にかぎらず、この作品は他者を想う心の切実さ、必死さ、懸命さが痺れるように身に沁みるんだ。そういうのって、イイ作品である一つの証左だと思うのです。

1巻感想