黒鋼の魔紋修復士3 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 3】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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クロチルド――ハイデロータに咲く、誇り高き“鋼鉄の白薔薇"

セリバ・ビラノバの件のねぎらいのため、国王ジェフレン一一世より王宮に招かれたヴァレリアとカリン。
その最中、同盟国ハイデロータから、新たに神巫として着任した彼女たちを正式に披露するよう催促の書状が届けられる。
アーマッドを目の敵に軍拡を推し進める相手の目論見を察しながらも、あえて二人を差し向けることにする国王とオルヴィエト。
イサーク率いる“封印騎士団"も共にした、この外遊の背後に潜む陰謀とは!?
混迷へ向かうシリーズ第3巻!
ヴァレリアとカリンのあの衣装については、やや露出過多な薄手の衣装、で全然納得できるんだけれど、このハイデロータの神巫用の服は完全に下着に軍服の上着だけ、にしか見えないっすねえ。しかもハイレグ仕様w
さて、そんなハイデロータですが、アーマッドとは同盟国にも関わらず、虎視眈々と同盟内での第一勢力を狙っている良からぬ野心に身をひたしている不穏な国であると同時に、内政の方も軍事優先で治安も悪化しているという、なかなか困ったちゃんの国なのでした。これが歴とした仮想敵国ならば堂々と警戒すればいいものの、なまじ同盟国であるだけに相応に気を遣わなければならないのがまた厄介な話なのである。時に、味方であるほうが面倒で鬱陶しくて邪魔な存在って、ありますよねえ、うんうん。まあウンザリするような厄介な味方に振り回される、ほどには我がアーマッドも素直でも純朴でもなく、むしろ一癖も二癖もある食わせ者が国王やイサーク王子、国の上層部に揃っているのは頼もしい限り。逆に、ハイデロータと来たら下は優秀でも頭にあたる人材は清々しいほどの無能揃いのようで、そういう無能集団の中では逆に優秀な人材というのは余計な苦労を背負ってしまうものらしい。表紙絵にもなっているハイデロータの神巫であり「疾風騎士団」の副団長であるクロチルドは、文句なしに優秀な逸材のようなのだけれど……まあ、無能王子に振り回され足を引っ張られ、とこれはこれで見ていてかわいそうになる苦労っぷりである。これでディミタールやイサーク王子みたいに「イイ性格」をしていたら、口八丁手八丁でハイデロータのバカ王子を操って自分のやりやすいようイイように出来るんだろうけれど、どうもこの子は堅物の生真面目ちゃんのようで……要らん苦労を背負っているご様子。もうちょっと強かさを身につければと思うところだけれど。もう一人のハイデロータの神巫の子も、ヴァレリアの方がまだだいぶマシだと思えるくらい、神巫としての自覚の足りない子のようで、足を引っ張ってますしねえ。
こうして見ると、ヴァレリアとディミタールは相性悪いように見えるけれども、これはこれで悪くない組み合わせだったのかもしれない。一巻当初と比べても、ディミタールがヴァレリアを容赦のない正論で打ちのめすシーンも減りましたし……いや、ホントにだいぶ関係穏やかになりましたよね!?
それというのも、ヴァレリアがあれだけてひどく罵倒されながらも、指摘された件についてはちゃんと律儀に次の機会には直すようにしてたからなんでしょうね。この子、確かに世間知らずで無知で考えは浅いし頭の回転も決して早くはないんだけれど、怠惰では決してないんですよ。むしろ勤勉で直向きであることは疑いようがない。普通、たとえ正論だったとはいえあそこまでディミタールに悪し様に言われりゃ不貞腐れそうなものだし、実際ヴァレリアもあの言い草には反発し怒り心頭で、そりゃもうギスギスしまくった関係になってたんだけれど、それでもディミタールの言い分が正しいことはちゃんと認めて、負けず嫌いもあったんだろうけれど指摘された不見識の部分を一生懸命補填しようと努力してるんですよ。
そうしたヴァレリアの努力と向上心、そして確かな成長はディミタールもちゃんと見ていて、自然とヴァレリアへの苦言も減ってきてるんですよね。いやあ、ディミタールがようやくヴァレリアを認めてくれだした日には、なんだか嬉しくなってしまいましたよ。この子への罵倒はそのまま読んでるこっちにもダイレクトで突き刺さるようなものばかりでしたしねえ。
そんなこんなで、ディミタールの辛辣な性格はヴァレリアを外敵から守る方へと比重が置かれ……こいつの性格のキツさって、敵に向かい出すと頼もしいってものじゃないですねえ。もう、ギッタンギッタンだもんなあ。
当初はこの二人が仲良くなるなんて姿、想像も尽きませんでしたけれど……現状でも恋愛関係になるなんて思いもよらない状態ですけれど、それでもなかなか相棒同士としては良い形になってきたんじゃないでしょうか。少なくとも、ヴァレリアはキツい事ばっかり言ってくるけれど間違った事は決して言わないディミタールに対して、そりゃもう苦手だし嫌いだし色々勘弁して欲しいという気持ちはあっても、信頼出来る相手、あれだけズタボロに貶されちゃあ繕うものも纏えなくて素で接する事のできる相手として、受け入れ出しているような雰囲気になってきているような気がします。なんか、こいつに認められたい! という気持ちになってきているような……。
それって、何だかんだと肯定的な関係なんですよね。わりと、ヴァレリアがころっと行く日は近いのかもしれない。
さて、物語の方はというと、ハイデロータの内紛にヴァレリアたちが巻き込まれた形になってきているのだけれど……ぶっちゃけ、アーマッドの立場からすると現状のハイデロータ政府よりも、反乱軍の支援した方が良い気がするなあ。裏でこう、上手いこと工作して。バカな相手のほうが対処しやすいとは言っても、制御不能なほどのバカになると、手に負えなくなりますしねえ。とは言え、優秀すぎても困りものなんですが。イサーク王子がそのへん、どうするつもりなのか、彼の次に打つ手がなかなか興味深いところである。

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