ブラック・ブレット3 炎による世界の破滅 (電撃文庫)

【ブラック・ブレット 3.炎による世界の破滅】 神崎紫電/鵜飼沙樹 電撃文庫

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蓮太郎、延珠、木更に、絶大な狙撃能力をもつティナも加わり、前途の不安が薄れたかのように思えた、ある日。怪物ガストレアの侵入から東京エリアを守っている巨大モノリスの一部が、崩壊の危機に瀕していることが判明する。このままでは、エリアの外で人間を蹂躙すべく待ち構えている無数のガストレアが、一気に侵入してきてしまう……。
果たして、東京エリアを救う手立てはあるのか!? そして蓮太郎、延珠、木更、ティナの命運は──!!
ますます緊迫感が高まる、近未来ヒロイック・アクション、待望の第3巻!
代替えモノリス、なんで予備を作って備蓄しておかないんだ!? 積み上げるのに半日も掛からないなら、予備さえ用意しておけば何の問題にもならなかっただろうに。という疑問への回答は、代替えモノリスを事前に準備できない理由とか、どっか書いてありましたっけ? 
というわけで、モノリス崩壊の危機に自衛隊総動員とともに民警も組織化され防衛戦に投入されることに。東京エリアが滅びるか否か、という瀬戸際に追い詰められながら、そこで浮かび上がる世相は人間たちの陰惨なまでの醜い姿であり、社会としての未熟さでした。いっそ、世紀末覇王なヒャッハー!な世界のほうが弱肉強食でわかりやすい分、ある種の「力」さえあればなんとかなる世界なんですよね。弱いものが救われる世界と言える。でも、弱い多数が無知と無理解と怒りや憎しみと言った負の感情を基盤にしてマイノリティを抑圧する世界というのは、特効薬的な解決法が無い分、救いが見えないんですよね。ガストレアの脅威からは、卓抜した人類の叡智や組織力、際立った能力を持つ人間たちの力によって世界は守られるかもしれない。でも、ガストレアから生き残ろうとしている世界の中身はときたら、強き者を恐れ拒み、かつての脅威の残滓を恨み憎みその本当の姿を見ようともしないまま一方的に潰そうとする、自ら血を流して悲鳴し狂乱するような常軌を逸した世界でもある。そんな世界が、果たして身を削って守られるべきものなのか。
でも、そうやって「世界」と一括りにして邪悪だ、醜悪だ、と語り憤怒することもまた、呪われた子供たちを一括りにして一方的に敵視して排斥しようとしている人たちと変わらない所業でもある。
だけれど、だったらこの理不尽な暴力に対する怒りを、哀しみを、どこにぶつけたらいいのか。ただでさえ希少だった未来を奪われてしまったあの子たちの痛みを、どうやって晴らしてやればいいのか。
この物語には、行き場のない怒りが渦巻いている。ガストレアが人類に向け続ける怒りも。無辜の民が、呪われた子供たちに向ける怒りも。天童木更が同族に向ける怒りも。室戸菫がかつてと今の自分に向け続けている怒りも。里見蓮太郎が、呪われた子供たちを、延珠を見舞う理不尽な運命に向ける怒りも。すべてがとぐろを撒いて渦巻いている。それは、さながら業火のように世界を焼くかのようだ。
そんな中で、その怒りの当事者の一方であるはずの呪われた子供たちだけが、純粋に笑い続けている。人よりも化物として扱われ、やがて本物の化物へと変わってしまう運命を背負いながら、この小さな子供たちは、誰もがあまりにも健気だ。健気に笑いながら、この世には希望があるかのように振舞っている。一番、絶望の底の底に追いやられている子たちなのに。まだ、10歳になるかならないかの本当の子供でしかないのに。
蓮太郎の言うとおりだ。この子たちが幸せにならない世界は、間違っている。でも、その間違った世界をどう正したらいいのか解からない。人の意識は、簡単には変わらない。でも、もし世界からガストレアが一掃されたら。世界が、滅亡の恐怖の抑圧から解放されたなら。その時、世界には呪われた子供たちを受け入れる余裕が出来るのだろうか。

今始まろうとしている第三次関東会戦。それは、ひとつの試金石になるものなのかもしれない。人から呪われるイニシエーターが、東京をガストレアから救った時、その時こそ意識の変革の萌芽が生まれるのかもしれない。幻想に近い願いなのかもしれないけれど。
それ以前に、まずガストレア数千の侵攻から東京を守らなければならない、というどう転がっても絶望という状況を凌がなければならないのだから、どれだけ無理ゲーなんだ、というお話。
そして、単純に人類の敵の侵攻を防ぐ、という目的に徹せられればいいものの、まず発端であるどうしてガストレアがモノリスに近づくことが出来たのか、という疑問から始まる、様々な裏でうごめく人の悪意や陰謀がうごめく気配がプンプンと臭ってきて、どう転がっても酷い話になりそうだ。

しかし、ティナ・スプラウトって本気で尋常じゃないレベルのイニシエーターだったんだなあ。二桁台というのがどれだけ異彩を放っているのか、今回一般的な凄腕の子の実力と比肩することで余計にその力が際立ったような気がする。ってか、どうやって蓮太郎ってばこの子に勝てたんだろう、というくらい。逆に言うと、単純にこの子よりも上が百人近く居る、という時点でこの業界色々と異常すぎるw
まあそれと真正面からやりあえた木更さんも大概なんですけどね。この人も病気のハンデなかったらとんでもないんだよなあ。今回、ついに参戦と相成りましたけれど。
重ね重ね不思議なのが、どうしてあれほど青信号発してる同士の、相思相愛が傍からみて丸わかりの、蓮太郎と木更さんが、全く微塵もフラグ立ちそうもないところ。なんでなんだ、ほんとに!?

と、今回はガストレア侵攻を前にした準備編、ということで仲間集めにほぼ終始して次回に続く。なんか、戦う前から色々と心折れそうな事ばかり続いて、ひしゃげるひしゃげる……。

1巻 2巻感想