2 (メディアワークス文庫)

【2】 野崎まど メディアワークス文庫

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 数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見てやまない青年。ついに入団試験を乗り越え、パンドラの一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物によって解散を余儀なくされる。彼女は静かに言う。「映画を撮ります」と。その役者として抜擢された数多は、彼女とたったふたりで映画を創るための日々をスタートすることになるが――。
『全ての創作は、人の心を動かすためにある』
 彼女のその言葉が意味するところとは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体……? 全ての謎を秘めたままクラッパーボードの音が鳴る。
これまでの野崎まどの手がけた作品
・【[映]アムリタ】
・【舞面真面とお面の女】
・【死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死】
・【小説家の作り方】
・【パーフェクトフレンド】
この5作品のキャラクターがすべて総登場するオールスターキャスト作品。と言うと、集大成というかお祭り騒ぎみたいな賑やかながらもやや軽佻な作品を想像してしまうかもしれないが、この【2】はさにあらず。ってか、このタイトルからして凄いよね。単純に昨今の長いタイトルに逆行して、というのとはこのタイトルになった意味は全く異なると思う。なんかねー、そういう周り見て決めましたって感じじゃないんですよね。外の世界は眼中になし。ただ、ひたすらに野崎まどワールドにしか視野は置かれて、その上でこのタイトルが舞い降りてきたんじゃないでしょうか。
終わってみれば、このタイトルは「暴虐的」ですらある。最原最早が、大衆に見せるための映画を作らないように、このタイトルは野崎まどワールドの中の座標を示す数字に過ぎないと言える。読者に何かを訴えるための意味が篭められたようなものではないんじゃないだろうか。ただし、読者たる自分はそれを決して無視できないのだけれど。ただ佇立するだけの番号に、これほど圧倒されてしまうなんてねえ……いやはや。
さて、スーパー野崎まど大戦、などと言っても過言ではない本作。ところが、冒頭から始まる物語にはこれまで出てきたキャラクターなど一人も登場しない。あの最原最早が出る、という情報だけは聞き及んでいたのだけれど、強烈な個性とキャラクター性、情緒深く人間味ある登場人物たちが、これまた凄まじい「パンドラ」と呼ばれる超劇団の激烈なまでの在り様の中に飛び込み、演劇感の革命に遭遇するさまは果たしてこれからまたどれほど天上に駆け上るかのような想像を絶する物語が始まるのか、とワクワク感が滾って仕方ないような、それはそれは躍動感に満ち溢れたはじまりだったのです。
多分、このまま物語が進んでもそれはそれで大変面白い作品だったんじゃないかなあ。
だがしかし。だがしかし。

あの女が現れた。

自分、ここまで完膚なきまでに「物語」が潰乱するアリサマを見たのは初めてかもしれない。
そう、潰乱である。その時点まで綴られていた、紡ぎあげられていた、築きあげられていた、今まさに産声をあげ誕生しようと、飛躍しようと、羽ばたこうとしていた「物語」が、木っ端微塵に消し飛んだ。吹き飛んでしまった。消滅してしまった。溶けてグズグズになってしまった。自壊して崩壊して溶解して形をなくし過去をなくし未来も現在も意味も無意味も価値も概念も何もかもがなくなって、まさに跡形もなくなってしまいましたとさ。
最原最早の発した、ただの一言で。本当に、ただの一言で。
物語は潰乱した。

たった一人の役者を残して。

そこからは、もはや最早の蹂躙戦である。何がオールスターキャストだ。何もかもが最早の掌の上。探偵も仮面の女も不死の生徒も小説家も、そして愛すべき子供たちですら、すべてが最早の思うがままに蹂躙されていく。
圧倒的である。
圧倒的である。
それ以外に、何といえばいいのか。最原最早……あの【[映]アムリタ】で現れてしまった、人類の最果て。以降の作者の作品を読んで、様々な突拍子もないキャラクターが現れましたけれど、常々彼女だけは立っているステージが根本から違っているんじゃないか、と思わせる超常感があり続けたのですが、それが揺らいだのがあの【パーフェクトフレンド】での、彼女の立ち位置でした。
いったい、あの最原最早に何があったんだ!? と心底仰天させられた彼女の現状は……やはり俗に収まったわけじゃなかったんですな。そんなはずがあり得るはずがない、という確信は間違っていなかった。うん、揺らいだなんて嘘だ。むしろ、そんな母親なんて立ち位置に立っていた、まるで健全で善良な母親のような価値観で、やってることややり口のえげつなさこそ相変わらずだったけれど、まるで普通の良い子を育てるような真似をしている彼女の在り様には、空恐ろしさしか感じなかった。何を、企んでるんだ? って。
まさか、その答えが次の作品で速攻で語られることになるとは思わなかったけれど。

そして、留まるところを知らない大どんでん返しの連続! 普通、この規模の大どんでん返しってのは作中に一回あれば充分なわけで……クライマックスに差し掛かっての謎の種明かしに種明かしに種明かしを重ねまくる驚愕の連続には、もうあいた口が塞がらなくて……よだれ垂れてきた。
だがちょっと待って欲しい、というフレーズを使いたくなるほど、待った待った待った、を掛けたい気分になったんだが、読み終わった後。
あの、これ全部終わってみるとさ……最早さんマジ最強、とか言う前にあれですか? 彼女の思想とか映画への執着とかその高みに至り過ぎて立ってる次元が違いすぎる、とか人類の到達点に至っちゃった、とかは大前提としてさておいて、この話って……なんというか、ぶっちゃけ……イチャラブ惚気話だったのか、もしかして!?
いやあ、自分、あの人かなりの勢いで使い捨てにされちゃったのかと思ってたんで、このラブラブっぷりは望外と言っていいくらいなんだけれど、終わってみると僕の最早さんはこんなに凄いんだぞー、という自慢話みたいな惚気話を聞かされてたんじゃないか、と傍と思い至ってしまった。なんか、変な所に到達してしまったぞ、自分w これもまた、人類の最果てを覗いてしまった、と言うことなんだろうか。
取り敢えず、最中ちゃんが道具扱いじゃなく、ちゃんと愛されていたのには安心した。この子の心の成長譚が、ただの作業過程だったら、悲惨以外の何物でもないですしね。
紫先生は、あれどうするんだろう。彼女の書いたモノがちゃんと「読まれた」というのは、彼女の目的が叶ったとも言えるんだけれど……でも、最早さん以外読めないとなると、まだ改良の余地ありということか。

あと、野崎まどキャラ総出演してなお言い切れるのは……一番の萌えキャラはやっぱり「アンサー・アンサー」さんですよね、というところでしょうかw ついに本名まで普通にしようとしてしまってますが、頑張れ、超頑張れ!!

野崎まど作品感想