千の魔剣と盾の乙女8 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 8】 川口士/アシオ 一迅社文庫


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『サヴァンの日』。それは本格的な冬のはじまりを告げる日、そして死者と生者の境がかぎりなく薄くなる日。伝説の武器『魔石(タスラム)』を手に入れるため、極寒の地カリアッハヴェーラを旅するロックたち一行は、サヴァンの日の前後三日しか足を踏み入れることができないという幻の神殿を目指す。その頃、魔王バロールの眷族の中でも一、二を争うほどの力を持つ狂気の魔物アレンが、ロックたちの命を奪わんとカリアッハヴェーラを目指し、秘めた願いを持つ魔妖精リャナンシー、魔王復活は近いと悟った魔将ケンコスもおのおのの目的を胸についに動き出す。最大の危機を前に、ロックたちは大切な仲間を守りぬけるのか。正統派ファンタジーの気鋭、川口士が贈る魔剣ファンタジー、激戦と喪失の第八弾。
熱砂の砂漠に海底の妖精郷と来て、今度は極寒の氷原と来ましたか。旅から旅への冒険モノでも、これほど極端に極地ばかりを巡るというのも珍しい。しかも、そうした秘境を訪れる目的が伝説の武器や魔法を手に入れるため、というのだからある意味王道のRPGゲームを踏襲しているのかもしれないね。むしろTVゲームじゃなくてTRPG、と言ってもいいか。という訳で、ロックにエリシア、ナギといったパーティーメンバーが軒並みパワーアップしてしまったために、独り足手まといになってきてしまったフィルが、伝説の魔法(武器?)『魔石(タスラム)』を手に入れようと、ロックたちに頼み込み、カリアッハヴェーラを目指す、という展開に。元々、フィルについては錬成士としては優秀ではあってもわりと平凡な腕前、だと常々本人の口からも語られていた事で、これまではそれでも何とか不備なくやってこれたものの、メンバーがパワーアップすると同時に、戦うステージまで上がってきたお陰で、このままでは本気で戦力として機能しなくなりつつあったんですよね。それで焦るのは当然としても、タスラムが手に入らなければパーティーから離脱する、と自分を追い込みつつも、多少の無茶をパーティーにお願いできるあたりが、フィルらしいといえばフィルらしい。ナギやエリシアだと、もうちょっと遠慮してしまうと思うんですよね。フィルは、自分が甘やかされている、というのをいい意味でも悪い意味でも良く解ってる。甘えることの出来るウチは、甘えていいと思いますよ、私は。この娘は、その甘えが皆の足を引っ張ったり、パーティーの方向性を悪い方向に捻じ曲げるような所まで逸脱させない、秀逸なバランス感覚を有しているようですし。
ただ、その甘やかされている、という点が恋愛関係という観点に立った時に些か違和感とも錯誤感ともつかないものを感じる要因になってきているのでは、と考えつつあるようで、彼女もこれまであっけらかんと言い募ってきたロックのハーレム構築についても、色々と思いところが出てきたようだ。と言っても、それを否定する方向ではなく、自分たちの関係が現実のものとして固着していくには、どうした感情を交えて人間関係を構築していくべきか、みたいな感じで冗談ではなくガチで成立を目指しつつあるような感じになってきてるわけだがw
その話題となると、ナギは何気に結構乗り気だし、エリシアは世間の倫理観、という点を気にしているようだけれど、二人とも独占欲はありつつも、このメンツならいいか、と思っているようで、女性陣の方はあんまりハードル高くないんですよね。問題は、根っこが庶民なロックの方で……こいつ、みんな好きだからみんな纏めて面倒見るぜ! みたいなご大人な恰幅の良い態度は取れないと思うんですよね。キャパはそんなに大きくないんだよなあ。
ただ、川口士作品の主人公は概ねそんな多くの女性を抱え込むような甲斐性を持っていなさそうなキャラばっかりなくせに、ガチなハーレム成立度が結構高かったりするので、甲斐性ないんじゃね、という心象はあんまり関係ないのかもしれない。何しろ、ロックもホルプがお墨付きを与えてるくらいだからなあ。
しかし、ここに新しくハーレムパーティーが加わるとなるとどうなんだろう。あの子の参戦は、かなり意外だったんだが。というか、再登場しても誰? という感じで思い出せなかったし。フィルの姉弟子の人は覚えてましたが。

とまあ、ハーレム談義にパーティーの強化編、と割りきって見てたら、いきなり怒涛の勢いで話が進展していく。
これまで、金環持ちのモンスターと激闘を繰り広げているうちに、その力量から魔王の強さ、というものをだいたい当て推量できていたつもりだったんだが……これ、魔王って倒せるの? いや、これ普通に伝説の武器で強化して技術も高めれば普通に良い勝負出来るものだと思い込んでたんだが……あの勇者の人、どうやってこんなのと戦って封印したんだ? 無理ゲーじゃないのか、これ?

川口士作品感想