俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11) (電撃文庫)

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 11】 伏見つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

Amazon

「あの頃のあたし―お、お兄ちゃんっ子だったの」。引っ越し祝いパーティの場で交わされた“約束”を果たすため、田村家を訪れた俺と桐乃。話し合いは、やがてそれぞれの過去話になっていって…「仕方ないことなんかなぁ、この世に一個だってねーんだよ!」「学校に行ったら負けだと思っている」「その謎のペットボトルは…まさか…おまえ禁断の行為を…!」「『凄いお兄ちゃん』なんて、最初からいなかったんだよ」「そんなことで、お兄ちゃんを嫌いになるわけないじゃん」「だから。あたしは、あんたのことが嫌いになったんだよ」。兄妹冷戦の真相が、ついに明かされる。重要エピソード満載の第11弾。
この話、まず自分は、麻奈実はズルい、と思ってしまったんだが……うーん、この第一印象はどうなんだろう。改めて考えてみると、そんな風にこの幼馴染の事を捉えてしまうのも少し違うような気もしてるんですよね。狡猾であることは決してズルいとは思わないんだけれど……。そもそも、麻奈実って桐乃の事眼中にもなかったんですよね。相手にもしていなかった。それって傲慢? うん、傲慢なような気もするけれど、「普通」という概念に立ってみれば、妹である桐乃が眼中にもなかった、というのは正しくもある。ただねえ、自分はこの麻奈実の「正当性」が多分気に入らないんだろうなあ。受動的に見えて、実は一番能動的に素早く動いていた、という点には驚かされたけれど、そうやって固定した位置に座して、この女性はずっと高みから見下ろしてたようにも思えるんだよなあ。桐乃をはじめ、黒猫やあやせが一生懸命考えて、心を駆動して、感情を爆発させて真っ向からぶつかって、走り回っているのを、麻奈実は座したまま上から見下ろしていたように思えてしまう。そうして、京介がかつて自分が絡めた糸をプツリプツリと引きちぎり、かつてのような、しかしかつてと違う身の詰まった「本物」になって、麻奈実の座から逸脱しはじめた今になり、ようやく桐乃たちと同じ舞台に降りてきた。でも、やっぱり上から目線、に感じる。決して、対等じゃなく、修正してあげようか、みたいにして。
それは、ようやく勝負に至ったのかもしれないけれど、決して対等の相手との真っ向勝負、って見えないんですよね。黒猫やあやせたちが、桐乃と正々堂々ぶち当たって、自分の望みを叶えようとしているのに比べると、正しくラスボスとしての振る舞いに見える。でも、そんな態度って、恋愛、としてはどうなんだろうね。麻奈実は、桐乃の兄への思いを気持ち悪い、と切って捨てたけれど、むしろ自分には麻奈実の有り様、やり方の方が不気味で気持ち悪く感じちゃったんだよなあ。桐乃は、失望の先に今の京介を受け入れ、好いている。黒猫も、あやせも、加奈子も同様だ。でも、麻奈実には、今の京介を好き、と感じさせるものがあっただろうか。自分の思い描いた理想の京介が幻想に過ぎないという事実にのたうちまわり、その果てに今の京介を受け入れるだけの心の揺れがあっただろうか。
確かに、黒猫と付き合った時のショックは大きかったんだろうけれど、麻奈実の意識を変えるには充分な出来事だったんだろうけれど、京介が麻奈実の望む平凡にはなかなか落ち着けない人間だったと、麻奈実も解っているんだろうけれど、それでも加奈子との会話を見てると、桐乃を何とかしてしまおうという企みは、そうしてあやせや黒猫たちも安心して自分と勝負できるのだ、という物言いは、上から目線だと思うのだ。
という、これらの印象も、あくまで印象であって……何度も麻奈実の言動を読み返してくると、そこまでラスボスみたいに振舞っている訳でもない気がしてくるんですよね。そこまで上に立ってるわけでも、見下しているわけでも、偉そうに傲慢になっているわけでも、思いが足りてないわけでも過去で停滞しているわけでもないと思う。こんな風に感じてしまったのは、過剰反応のような気もしてくる。麻奈実は、もっと柔らかな言葉遣いで語ってますし、伝わってくる心根もまたふわふわと包容力がありますしね。
うーん、今回は自分の「解釈」に自信がないんですよね。なんか、客観的にではなく感情的に捉えてしまって、見方が一方的になってしまったんじゃないだろうか、という思いがこびりついて離れない。
まあでも、あやせや黒猫たちにとっては、絶対余計なお世話、だと思うな。麻奈実の「良識」というやつは。

紆余曲折ありましたけれど、俺妹もついに次で完結。麻奈実については色々と書いたけれど、それでも京介が彼女を選んでも多分、納得出来ると思う。誰を選んでも、ストンと腑に落ちるようにしてくれる、それだけの信頼は作者の腕には抱いていますから。
個人的には、黒猫派ですけどね。欲張って、黒猫がハーレムGetエンド(笑

伏見つかさ作品感想