ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝南海漂流編

【ゲート−自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝・南海漂流編】 柳内たくみ アルファポリス

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『門』封鎖から5カ月。特地では周辺列国の暴走により、各地で紛争が勃発していた。伊丹ら日本使節団は、帝国皇太女ピニャらと共に紛争当事国との交渉に赴くが、その道中に船が座礁し、伊丹とピニャの二人が大海原に放り出されてしまう。伊丹行方不明の報に異世界美少女達は大パニック!空と陸からの大捜査が始まった―かつてないスケールの超エンタメファンタジー。『門』封鎖後の異世界珍騒動、開幕。
というわけで、現代日本との門が閉ざされ、特地に残ることになった自衛隊と伊丹のその後のお話……外伝というよりも、完全にネクストステージへの橋渡し、もしくはこれ自体が第二期じゃん、というような展開ですがな。むしろ、日本本国と、煩わしいマスゴミや活動家、無能な政治家や外国勢力の干渉を受けない分、ストレス感じなくて色々とすっきりなのですけど!! もちろん、補給も途絶え、いつ日本と繋がるかもわからない状況というまだ切羽詰まってはいないものの決して楽観できない状況は状況なんですけれど、現場が変な干渉受けずに独自に動けるってこんなに素晴らしかったのか、という開放感の方が、少なくとも読んでるこっちとしては強いんだよなあ。こっちに残ってる文官のトップはあの菅原外交官ですから、足を引っ張るどころか頼もしいったらありゃしない、という人ですし。
とは言え、強力なバックである日本との繋がりが立たれた事により、ピニャが皇太女として引っ張る帝国は、かつての威信の崩壊もあってか、完全に低列度紛争の渦中に置かれてしまっている。特地に駐留する自衛隊の存在は、辛うじて帝国の後ろ盾として機能しているものの、喉元過ぎれば熱さを忘れるという以前に現代国家の軍事力の恐ろしさを直接知らない近隣諸国からすれば、まだまだちゃんと現状認識ができていないんだよなあ。帝国とデュラン公を筆頭とする経験者諸氏がピニャを中心に考え方を改めて行っている中で、まだまだ思考思想が中世のまま。この齟齬こそが起因であると同時に、背後で動いているメンツが操り糸を手繰りやすくしている要因なんだろう。ハーディーとは別の方向から影でちょっかいかけて来る相手が出てくるとは。

それはさておき、伊丹とピニャ殿下である。何故にか逃避行するはめになったこの二人だけれども……いやはや、ちょっとびっくりしたんだが、伊丹とピニャ殿下って思いの外相性良くないですか? ロゥリィの求愛は微笑ましいと思っていたし、他の面々のアプローチもまあ可愛らしくて……彼を取り巻く女性関係は見た目こそハーレムなんだけれど、実のところあんまり実体性が無いように感じてたんですよね。もちろん、レレイたちは本気なのは解っているんだけれど、伊丹の性格からしてもちょっと本気でこの娘たちと付き合う姿が想像できないというか。辛うじて、ロゥリィについてだけは見た目こそあれなものの、流れ如何によっては実るかなあとは思ってたんですが。何だかんだと伊丹と一番相性よさそうなのって、元の嫁さんだよなあ、と思ってたんですよ。
ところが、意外なところから伏兵が。
わりとイケイケドンドンな所のある三人娘&ダークエルフの姉ちゃんと違って、皇族ながら伊丹に対しても自分の在り方に対しても紆余曲折あって色々と引け目のあるピニャって、結構謙虚というか押すよりも引き気味だったんですよね。最初から、伊丹については諦めてる節もあったし。
ただ、それが逆に効果的だったというか。引き気味ではあっても、此処ぞという時にはガンと胸を張って前に出られる粋な性格というのもあってか、こう土壇場において女性としての弱さと強さをいかん無く見せつけてくれた上に、高貴な身分の割に庶民的というか雑草根性があるというかどんな環境でもやってける逞しさがあるというか、こう所帯染みたところがあるんですよね、この殿下。
性格的にも趣味的にも、ピニャの方からのみならず伊丹の方から見てもこれ相性いいんじゃないのかと。ラスト近辺の雰囲気の良さなんざ、伊丹のこれまでの姿からすると見たことがないレベルで馴染んでいる、しっくりきてしまっている感じなんですよ。
いや、これはアリなんじゃね?
まあピニャが現状、帝国を継ぐ立場であり降嫁なんぞ出来ない所に居る以上、そうラストシーンあたりの光景を日常とするのは難しかろうことだけれど、色々とマーメイドさんたちから示唆を受けたりして伊丹の傍に居場所を作るだけのイメージと意志はできているようだから、これは何気に本格参戦どころか、一気にトップラインに踊りでてしまったんじゃないだろうか。

シリーズ感想