剣澄むーTSURUGISMー (このライトノベルがすごい! 文庫)

【剣澄む TSURUGISM】 ますくど/ricci このライトノベルがすごい! 文庫

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西暦2020年、日本には特別に帯刀を許された「御三家」と呼ばれる組織があった。あるとき、「刀狩り」と呼ばれる謎の剣士が現れ、御三家の剣士の刀を次々と奪っていくという事件が発生する。父もまた「刀狩り」に襲われたと知らされた上泉綱義は、実家に戻り、蔵に捕えた「刀狩り」と対面する。それは縄でぐるぐる巻きに縛られた、自らを妖刀村正と名乗る少女だった――。第3回『このライトノベルがすごい! 』大賞・優秀賞受賞作!
ちょっと待て、君等兄弟でイチャイチャしすぎだろう、それ。お前らは新婚夫婦か、というラブラブっぷりである。これが兄妹ならまだしも……という考え方も実は充分狂っているんだろうけれど、それでも男同士でこれはちょっとアレだろう。いろいろ疑われても仕方のないレベル。ってか、これがアレなんですか? 腐ってるってやつなんですか? 初・体・験?

とは言え、無意味にラブラブしているわけでもなく、ちゃんと最後の展開に掛かっているので無駄ではない、無駄ではないのだが……やっぱりこう、男同士より片方が妹だったり姉だったりした方がまだ精神的な安息が得られると思うんだ。これは、その……気まずい!!
本来ならロリっ子妖刀とチュッチュしてる方を問題にするべきなんだろうが、弟とのラブラブイチャイチャがインパクト強すぎて、そっちはもうどうでもいいんじゃないのか、という気分に。お前さん、幼女とチュッチュすることに躊躇えを覚える前に、弟とそんなふうにイチャイチャする方に疑問を感じようよ、ねえ(苦笑

さて、舞台は架空の現代。剣士が未だに残っている、という設定だけれど、正直あんまり現代、という要素を生かせているようには見えなかった。沈黙する書割、程度のものだね。ただ、時代考察とかを考慮せずに済む、という点においては楽かもしれない。でも、御三家以外の家は帯刀禁止って、特殊技能の独占ですよね。広く浅く、は容易に変質と衰退を産むとはいえ、この独占設定はむしろ御三家が腐敗と停滞の象徴として悪役に回る配置なのだけれど、本作の場合は剣に対する執着の純化、という方向に進んでいるのが興味深い。登場人物はどいつもこいつも剣に魅入られた剣鬼なんだけれど、ひどく澄んだ方向へと昇華されているので、こう……ニトロとか山田風太郎方面に見るような、剣の道を極めすぎて魔性魔道に堕ちてしまう、という形にはなっていない。お陰で作品全体に暗い、とか闇、夜、という雰囲気が見当たらず、タイトルにも字が現れているように清流めいた清々しさ、清涼感が漂っている。剣への求道が高じて、殺し愛めいたところまで到達してしまっているにも関わらず、人間のダークサイドが見当たらないというのはなかなか大したものなんじゃないだろうか。これを良しとするか物足りないと見るかは読む側の好み次第でしょう。
個人的には、両サイドが混在するスタイルのほうが好みなんですけどね。
御三家の家名や刀などの固有名詞については、少々安易なところがあるかな。名前を使っている以上、その伝統を掘り下げているのかというと、名前からくる印象の上澄みだけを攫っているだけで雰囲気だけみたいだし。ややも軽々しい感があり。
村正の事情周りも、いささか焦れったい。大事な試合を前に村正ははっきりしなさ過ぎだし、綱義は綱義で痛快な人物像とは裏腹に気を使い過ぎでもたもたしすぎてて鬱陶しい。柳生の兄ちゃんに面倒かけすぎである。どうも人間関係の描写についてはもって回り過ぎるきらいがあって、若干ストレス溜まったかな。ウジウジされてるとどうしても、ね。
まあ一巻これで綺麗に終わっている。これ以上やると、なかなか清涼感を保つのは難しいだろう。血を見ずには居られないだろうし。