オレを二つ名(そのな)で呼ばないで! (このライトノベルがすごい! 文庫)

【オレを二つ名(そのな)で呼ばないで!】 逢上央士/COMTA このライトノベルがすごい! 文庫

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俺の二つ名、マジ残念すぎ!
学園異能力バトルスタート!!


全国から特殊な才能を持った子供達が選抜して集められた私立神賀茂学園に晴れて入学を果たした御手洗新(みたらいあらた)は、ひょんなことから屈辱的な二つ名がついてしまう。二つ名は能力を引き出す触媒となる言葉で、後から変更はできない。もうひとつの二つ名を求めて、GW中に行われる〈黄金杯〉での優勝を目指すアラタ少年の戦いが始まった。抱腹絶倒のバトル・コメディ!第3回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞受賞作です。
これは発想が良かったですね。「二つ名」というものは大概にしてその人の持つ能力やキャラクターから後付けで付与されるものなのですけれど、この作品のシステムだと前後が逆になっていて、二つ名を付ける事でその名称から想起される能力が与えられるようになっているわけです。
その能力の発現は、あくまでシステムが設置されている学園内にのみ限定されており、能力による人体への影響は痛みを除いて怪我など負わないように極力安全性も考慮されている、と完全にゲーム感覚なわけです。いや、ぶっちゃけこの学園のシステムが教育的に何の効果があるのかについてはさっぱり理解できないのですが、単純に娯楽として見るならば、確かにこれは非常に楽しい。主人公をはじめとして、生徒たちも諸々ややこしいことは度外視して、如何にこの学園のシステムの中で自分の能力を伸ばしていくかについて心から楽しそうに環境を受け止めていて、「二つ名」についてもあくまで自分の持つ能力を決めるための要素として肯定的に受け止めていて、中二病云々と揶揄する向きはないのである。なので、タイトルとは裏腹に「二つ名」関連について、読んでいても体中痒くなるような痛々しさとかは全然ないので、ある意味安心仕様でありました(笑
ただ、読み始めた当初は、名乗った二つ名に対して対応する能力が一つだけ、というのはバトルになっても戦術の幅が狭くて単調になってしまうんじゃないかな、と危惧してたんですよね。ポンポンと出てくる登場人物たちの能力は、ちょっと笑っちゃうほど汎用性にかけていて、これでどうやって話を広げていくんだろう、と危ぶまざるを得なかったのですが……ところがどっこい!
これが意外とフレキシブル。能力の効果が記された条文に拘っているとやれる事は非常に限定的に想えるんですけれど、これが使用する側の解釈次第で能力はびっくりするくらい柔軟に応用が利くようになっているのです。思わぬ発想から、使えないと思われた能力に様々な使いようがあることが発見できる。どんな能力だろうと、使用者次第でどんな風にも伸ばしていける。繰り返しになりますが、これが何の教育になるのかはさっぱりわからないのですけれど、この学園で行われている事をゲームとして捉えたら、プレイヤーが夢中になる要素がこれでもかとばかりにつぎ込まれ、こっそりと用意されていて……いやはやこれは楽しいですよ、ホントに。
さらに、タッグ戦、チーム戦に能力の追加要素なんかも準備されていて、プレイヤーも読み手の方も飽きる暇なく没頭できる仕様になっております。主人公が常に前向きな熱血野郎、というのもグイグイと話が盛り上がってくテンポの良さの一助になっているようですね。ぶっちゃけ、幼馴染ちゃんが勝手につけてくれやがったあの「二つ名」は、付いた時点で拗ねてふてくされても仕方ないレベルの酷いものだったんだが、それでもこの主人公は嘆きながらも前向きに状況を受け止め、クズ能力としか思えなかった自分の二つ名の可能性をどんどんと発見し、周りも一緒に盛り上げながら進んでいくわけです。その楽しそうなこと楽しそうなこと。見てるこっちも楽しくなってきますよ、これ。前向き熱血少年と言っても単細胞とは程遠く、意外なほど気配りがきき、同時に目端もきく何気に食えないところのある少年、というのもストレスを感じない要因でしょうか。此処ぞという時の頼もしさには瞠目する部分がありましたし。良い主人公でしたよ。
まあ、あの二つ名には爆笑してしまいましたけれど。あの幼馴染ちゃん、セカンドネームも含めて全部わざとやってるんじゃないだろうな(笑
主人公のみならず、登場人物の多くが二つ名派生の能力を柔軟に応用しまくることで、能力バトルものとしても予期せぬ展開、引き出しが随所に見られて、非常に面白かったです。物語の完成度としてもなかなか堅実にまとまっていて、安定感ありましたし。
難しく考えずに楽しい気持ちになれる良作でした。