あなたの街の都市伝鬼! 3 (電撃文庫)

【あなたの街の都市伝鬼! 3】 聴猫芝居/うらび 電撃文庫

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温泉旅行に行こう! 目的は徳川埋蔵金と、さらなるヒミツ!?

 調査と称し、犬飼教授に連れられて赤城山へとやってきた出雲と美雪、サキたち一行。
 出雲との初めてのお出かけにはしゃぐサキ。だが、旅の目的は幻の「徳川埋蔵金」発掘! しかも、泊まった温泉旅館にも秘密があって……。
 浴衣あり、温泉あり、もちろん宴会も!? 伝鬼たちがまさか(?)の大暴走! 出雲は生きて帰れるのか!? 第18回電撃小説大賞〈金賞〉受賞のほんわか怪奇譚、第3弾!!
うはははは、なにこれ、楽しい楽しい! ヤバいくらいすっごい楽しい!
いやあ、これ一体どうしたんだろうと思ってしまうくらい今回読んでて楽しかったです。なんでだろう。なんか、歯車が噛み合ったとか弾道弾軌道に乗ってしまったとか、そんな感じで最初から最後までテンションが落ちないままゴールまで突っ走ったという感じ。今回は旅行に行こう、という一つの大きなイベントに終始していたからかもしれませんけれど、物語が途中遊びはあっても基本ブレずに一貫していたからかもしれません。にしても、今回は会心の出来栄えだったんじゃないかな、これ。元々良質のホームコメディでしたけれど、ひとつの壁をブレイクスルーしたようにすら思います。名実ともに、【ほうかご百物語】の後継を担える作品になれますよ、これなら。
一番大ウケしてしまったのが、旅館に着く前に現れた「屋根の上の女」と「首なしライダー」のスチャラカなやり取り。あとで二人が再び登場した時のオチには声を上げて笑ってしまいましたがな。
彼女らに限らず、伝鬼や妖怪たちが出雲を驚かせに現れるときの、出雲の反応含めてこれがまたどれも本当に楽しいんですよー。秀逸秀逸。出てくる間合いやテンポも絶妙ですし、怖がる出雲の反応もいちいち変な方に小気味が良くて、賑やかな空気が読んでて心地良いばかりでした。なんか、多幸感が出てくるくらい。
まあ何より、出雲とサキさんのイチャイチャっぷりにニヤニヤするのが忙しかった、という向きもあるんですけどね。もうこの二人の他人が入り込む余地なさそうな新婚夫婦っぷりは目も当てられないほど。サキさんの甲斐甲斐しいくらいのお世話好きって、なんなんでしょうねこれ、嫁アビリティが漲り過ぎてますよ。この旅行って新婚旅行でしたっけ!?
サキさんの余計な思惑など何もない、ひたすらに一途で純粋な好意に対して、出雲の方もサキさんが好きで好きで堪らないという完全に惚れぬいている状態なので、サキさんの甲斐甲斐しさが空回りすること無く余すこと無く受け止められているものだから、両方から充実した幸せオーラが垂れ流しになっていて、そりゃもうえらいことに。他の連中、一緒にいていたたまれなくなったりしないんだろうか(苦笑
しかし当然、人間と都市伝鬼。それも、編纂者としての立場や目的のある出雲にとって、サキさんとそういう関係になっていく、という事は色々と立ち止まって冷静に考えなきゃいけない事ではあるんだろうけれど、今回の旅先の旅館で行き会うことになった、というか教授のお導きで紹介されることになった一組のカップルの事例は、出雲に充分すぎるぐらい将来への示唆を与えることになったんじゃないでしょうか。
まああれです、ラブラブ夫婦の間を裂こうなんざ野暮の極みよ。この旅館の女将さんがまた気風の良い姐サン風味でありながら健気で一途で献身的、という嫁の鑑みたいな人で、そりゃあ旦那さんもぞっこんだわなあ。いやあ、こっちのラブラブ夫婦もご馳走様、ということで。

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