はたらく魔王さま!  6 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 6】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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フリーター魔王さま、ついにマグロナルドに復帰!!
絶好調の庶民派ファンタジー、第6弾登場!


 2階が新たにカフェ形態に改装され、ついにマグロナルド幡ヶ谷駅前店が再オープンする。張り切る魔王は、心機一転新たな資格に挑戦することに。
 そんな中、魔王に恋する女子高生・千穂が、テレパシーである概念送受(イデアリンク)を覚えたいと言い出す。天使や悪魔から接触があったときに、すぐに助けを求められるようにするためだ。だが、鈴乃が選んだ修行場所はなぜか銭湯で──!?
 フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、みんなでお風呂で大暴れ!?な第6弾登場です!
ついにアニメ化が決まった【はたらく魔王さま!】。でも、この作品もまた極めてアニメ化とか漫画化とか難しい作品なんですよね。文章だけでなく映像になってしまうと、映っている画面の隅々にまで「生活感」が追求されてしまうのですから。部屋においてある家具や小物の様子とか家事のやり方、ちょっとした家庭内の知恵袋的な細工に至るまで、常に注視の対象になるんだから、これ気が抜けないよ。見てる人、多分厳しい姑さん並にチェック入れるでしょうし。既にPVで芦屋さんが食器の水洗いをしているシーンで、水出しっぱなし勿体無い!! とかツッコまれてたみたいですし(笑
さて、本編の方はマグロナルドの改装が終了してようやく真奥が職場に復帰。やっぱり魔王さまは働いてないと輝けません。でも、今回一番輝いていたのは問答無用で千穂ちゃんでしたけど。
一般人であるはずの千穂の重要度の高さは以前からストップ高状態だったのですけれど、それも此処に来て極まったんじゃないでしょうか。半ば冗談みたいに扱われていた、千穂を新たな悪魔大元帥に、という話が一気に現実味を帯びてきてしまいましたがな。それも、大元帥筆頭!(笑
いや、でも笑い事じゃなく千穂の人望の高さは他の追随を許さないんですよね。ぶっちゃけ、彼女がいなかったら恵美と鈴乃サイドと真奥側って此処まで親密にはならなかったでしょう。たとえアラス・ラムスの存在があったとしても、もっと冷めた関係になっていたはずです。それこそ、離婚して親権を争った夫婦程度にはw
以前、真奥側にしても恵美側にしても、千穂の意志や考え方が重要な判断基準になっている、と述べましたけれど、とにかく今のこのグループって完全に千穂を核として繋がってるんですよね。彼女こそが、要と言っていい存在になっている。そして、それはどうやらこの狭いグループに留まらず、魔界やエンテ・イスラにも徐々に影響が及んでいきそうな勢いなのである。もはや、異世界の事情に巻き込まれた一般人、という括りは逸脱され、その大きな変化の方向性こそ真奥が指し示そうとしているものの、その方向性に絶大な信頼性を与える保証人というかカリスマみたいになりつつあるのが、今の千穂なのだ。新たなる悪魔大元帥だ、四天王だ、というのも虚名などではなく、実態を伴っての事と言わざるを得ない。
とは言え、千穂に限らず、真奥のぶちまけた魔王軍新体制はかなりの革新性が漲ってましたけどね。あれは大爆弾だよなあ。
ともあれ、ようやくと言っていいのか、真奥の言う世界征服という言葉の意図が明らかになってきましたよ。彼の真意を理解するには、そもそも魔界の社会体制がどういうものなのか、というところから把握していなければならなかったわけだ。まさか、魔界には金銭の通念すらなかったとは。断片的に聞き及ぶ限りでも、魔界では中世的どころか古代的な社会構造すら形成されていない節がある。それこそ、原始的な力による支配という概念しか存在しないような世界なのか。だとすれば、エンテ・イスラの侵略が何故失敗に終わってしまったのかについて真奥がどう考えているかも見えてくるし、またそもそも真奥が何を目指して魔王となったのか。そして何が足りず、何を知らず、何を成せなかったのか。そして、日本に流れ着いた彼が何に感動し、感銘し、何を貪欲に吸収しようとしているかも分かってくる。
真奥がマグロナルドで正社員になり、そこで出世していくことが将来の世界征服に繋がるのだ! と力説していたのは、嘘でもハッタリでもなかったんですよね、これ。正直、そんな最低編に近い立場から現代社会の在り方を学んでも、と思わないでもないけれども、ただのバイトから最高経営責任者までのし上がった事例が少なからずあるファーストフード業界の一角であるマグロを舞台にしていることと、本作の尋常ならざる生活感が社会の在り方を実地で学ぶ、という意味において無視できない説得力をもたらしている。一見してただ日々の生活に負われているようにも思えるが、彼の向上心は確実にその生活の中から必要にして大事なものをどんどん吸収しているように見える。それこそ、社会を上から見下ろす立場ではなく、下から支える立場であるからこそ、得られるものを得ているような。一度は強大な勢力の頂に立った真奥である。そして優秀さには裏打ちがある男である。そうして得て学んだ日本の社会構造という概念を、新たな支配において反映させる事は決して難しい事ではないでしょう。
そうなると、彼が語る世界征服って、俄然現実味を帯びてくるんですよね。勿論、言葉通りの世界征服じゃないんですけれど……それこそ、魔界も天界もエンテ・イスラも巻き込んで、世界のあり方を根底からひっくり返すくらいの変革が。
それは、目的を見失い、元居た場所に裏切られた恵美にとっても、信仰を失いつつあった鈴乃にとっても、心に響くものがあったはず。何より、千穂が抱いた夢に具体的な道筋を示すものだったはずですから。
何だかんだと呉越同舟だったこれまでの関係から、この巻での出来事はひとつ前に進んでしまったんじゃないでしょうかねえ。少なくとも、勇者と魔王は敵同士ではなくなり、協力者という枠すらも乗り越えて、今や確かな「仲間」となりつつあるのではないでしょうか。
そうなると、恵美も真奥のことを仇として見るのではなく、こう……フラットな視点で見るようになってきて……今までに無かった反応が、ようやく、ようやくと言っていいのか、ちらほらと見え隠れし始めてきましたよっと!

シリーズ感想