GENESISシリーズ 境界線上のホライゾンV<下> (電撃文庫)

【GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 5(下)】 川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫


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羽柴vs六護式仏蘭西、武蔵vs滝川。
新たな歴史再現へ向けて動き出した各国の行方は!?


 毛利領へ侵攻した羽柴勢に対し、武神を主体にした新たな戦術で六護式仏蘭西が反撃を開始した。
 歴史のターニングポイントとなる織田・信長自害の“本能寺の変”へ向けて、世界は徐々に向かい始める。
 一方、関東では、武蔵を強襲した北条勢を逆手にとって、武蔵は滝川・一益と北条による“神流川の戦い”の歴史再現を遂行したが、武蔵は校則法で定められた夏休みを目前に控え、遅れていた行事もこなさなければならず、更には真田の偉い人が……。
ものすごい勢いで登場した真田信之が、ものすごい勢いで撃沈されたーー!!! 駄目だこの人、ヘタレを通り越したへなちょこだ!
という訳で、史実では本多忠勝の娘である小松を娶った真田信之であるからして、もしかして二代に婿フラクなのか!? とハラハラしてこの下巻の到来を待っていたのですが、何故か信之がリアル嫁になって女体化しないと始まらない上に、本多×本多という新たでおニューな新機軸が誕生するという毎度おなじみ意味不明な流れに突入した結果として、フラグはあっさりと一蹴されることに。一体なんだったんだ、これはw
実際の真田信之はというと、有名な幸村こと信繁に負けず劣らず、というかむしろこっちの方が栄えある真田血族の集大成、みたいな人物、さらに苦労人の出来物、という感じの人だったので、どれだけの御仁が現れるのかと期待してたらこれだったよ(苦笑
いや、実際は結構これはこれで努力家みたいだし結構出来る人なのかもしれないけれど、頼りなさにおいては古今無双のぶっちぎりですもん。どないせいっちゅうねんw

とまあ、真田信之の乱入によってしばらく放置状態だった片桐くんの方ですが、こちらはこちらで期待の有望株。なんというか、織田・羽柴関連の人達は未来への展望が閉塞しているというか行き詰まっているというか、どうにも悲愴感に囚われている印象があったので、片桐くんを筆頭にして十本槍の面々が皆それなりに先のある若者、というのは微妙に嬉しくなりますなあ。特に、片桐くんは今が未熟なだけに逆に成長の予感をひしひしと感じさせてくれるので、なんだか微笑ましい気持ちにさせられます……回りがお姉さんばっかりのハーレム状態という点についてはいささかも微笑ましくないですけどね!!
まあ現状までを見る限り、片桐くん、未熟すぎて男扱いされてなかったっぽいんだよな。だからこそ、平気で着替えを手伝わされたり、片桐くんの入浴中にお風呂に乱入してきたり、という真似を他の十本槍の面々もしてきてたんでしょうけれど……なんという姉ちゃんとしようよ的ハーレム状態。
武蔵とのやり取りで一皮むけて段々と男らしくなっていくであろう片桐くんに対して、彼女らの反応がどう変わってくるかは見ものであり、楽しみでありますなあ。あれだけ猫かわいがりしていた弟分が一端の男になってきたら、やっぱりときめく部分とかあるんでしょうか。十本槍たちは、武蔵の住人と違って外道分はそれほど無さそうですし。チャットのやり取り見てると、まだちゃんと登場してませんけれど、平野・長泰あたりはアサマチ並に本人的にはこっそりと、傍から見ると公然と、片桐くんに入れ込みまくってるっぽいですが。
と、此処に来て十本槍の面々もようやく大方が顔見世してきたご様子で。対武蔵要員だけあって、全員が武蔵の誰かに相対する形で人員が配置されているみたいですね。てっきり、魔女二人組が顕著なのかと思ってたら、今巻のラストで度肝を抜く介入をしてみせた平野・長泰みたいなのも居るようですし、かなり相似形のキャラが揃ってるっぽいなあ。ただ、武蔵のほうが圧倒的に外道な分、真面目そうなこの人達は色々な意味で不利な気がしますけど!! ……片桐くんにセクハラして喜んでるこの人らを真面目そう、と思う時点でなんか価値基準が歪んできてしまっている気がする危機感!!

さて、ハーレムというと、武蔵の方でも大奥構想が、なんかやたらと具体化してきてますよ!? てっきり、喜美が茶化して騒いでいるのに、アサマチとネイトが反応するのを面白おかしく興じていて、段々と雰囲気をそっちの方に持っていくという遠まわしの所存なのかと思ってたら、考えている以上にアサマチとネイトがノリノリになってたために、えらい具体的に将来の「布陣」が語られるようになってしまった上に、既に現段階から準備はじめちゃってますよ、これ。
慣らし期間じゃないですけれど、何故か始まってしまったお泊り会での、アサマチとネイトのエロいことエロいこと。全裸の手がR元服な部分をまさぐってきても抵抗しないとか、あんたたち、ごちゃごちゃ言ってる割に完全に青信号、受け入れ態勢万全じゃないですか。すなわち、ウェウカム態勢w 

羽柴との交渉も挟んで、武蔵は修学旅行ではなく移動教室という形でイベントを消化することになり、その行く先として真田の地に向かうことになる。酒井学長がなんかやらかした、というかホラの親父さんである松平元康公と、その弟である信康公が残したものを見に行く事になったのだけれど……その過程において、真田の古豪たちと槍を交えることになる。そう、先代の真田十勇士……竜属と、だ。
って、真田の戦力、小規模の教導院としてはありえないほどの充実度じゃないですか、これ? 老兵ばかりとはいえ、竜属ですよ、竜属。なんだかんだと若い世代もいるみたいですし。それに、加藤・段蔵ってなんてそんなとんでもないのまで居るんだよw
これが丸々武蔵の側についてくれれば言うことなしなのですが、基本的に真田家というのは武蔵側である徳川には反骨するお家柄。信之派は、なかば亡命してくる形になっている以上、決して多くないんでしょうし。ただ、ようやく明らかになった、今の十勇士たちが自らを「要らず」と呼んで苦悩している事情を知ってしまうと、彼らがそのまま羽柴側につく、というのもすっきりしない話なんですよね。当人たちも未だに色々と抱え込んでいるみたいですし、そうなってくると海野 伊佐さんがああいう形で退場してしまった事も、「要らず」であったことが尾を引いたんじゃないかという事になってきてしまいますし……それに、段蔵さんがあんな形で十本槍に喧嘩売ったのを見てしまうとねえ……。先の巻でホラ子が勧誘した件は思いの外大きな伏線になるのかも。しかし、未だ登場せぬ真田・信繁はどういうキャラで、どういうスタンスなのかは気になるところだなあ……。お兄ちゃんがあれだけダメお兄ちゃんだと、弟よりもしっかりものの妹キャラの方が萌えるんだがw

というわけで、後半はガチガチの対竜戦闘。ドラゴンスレイヤーである。
とは言え、本作のガチバトルが、並のドラゴン戦になるはずもなく……とてつもないド迫力。いやあ、凄いの何の。巨大な竜との戦いって、普通は小回りのきく人間が機動力で翻弄しつつ、中心にデンと構えて動かないドラゴンの装甲を削っていく、みたいな展開なのが、古くからの王道路線。
ところが、本作はというと、そんな基本に収まらない。総力戦だった筧・虎秀戦はまだしも、先代の猿飛・佐助と霧隠・才蔵との対天竜戦は、もはや対竜戦闘じゃないでしょう、これ。さすがは巨大ロボットと人間サイズのキャラがガチで剣戟し合う世界である。竜との戦闘も、ジャイアント・キリングじゃなくてどこか対等でガチンコ、という感じなんですよね。霧隠れの名に相応しい隠形スキルを駆使する才蔵戦もそうですけれど、何より凄かったのが二代・襯灰鵐咾蛤棺との、高速機動戦でありましょう。巨大な体軀を感じさせない、とてつもない身のこなしとスピードで動きまくる、という従来の竜の戦闘スタイルを完全に逸脱した佐助の戦いっぷりは、ド迫力もド迫力。息があっているようで合ってなくて、合わなさ過ぎて逆に合ってきてしまったという感じがしないでもない、二代と襪瞭民コンビと、文字通りのスピード勝負。宗茂VS二代以来と言っていい加速に加速を重ねる高速機動戦は、映像化したらどんなシロモノになるんだろう、と想像しようとしたものの、何か尋常でない絵面になってしまい、動悸がえらいことになってしまいましたがな。
二代の無軌道さに振り回されっぱなしでガチでキレ出す襪気鵑またおもしろ可愛くて、普段の宗茂との夫婦漫才もいいですけれど、二代&襪離灰鵐咾發海譟⊃靴靴て良い感じだったなあ。

移動教室における真田の遺跡の探索も、謎があらたなる謎を呼び、という感じで進展しつつも深みにハマる様相を呈してきた中で、さらに西の地で織田・羽柴との抗争中だった六護式仏蘭西の主力に、北条連合が武蔵の前に現れる。
これで五巻終了だけれど、むしろここまでで上巻が終了したんじゃないのか、という次回への引っ張りようじゃあないですか。そして六巻は賑やか無双の大戦でございます。どっかーーんとまくってきましたよーー!

川上稔作品感想