ケモノガリ 5 (ガガガ文庫)

【ケモノガリ 5】 東出祐一郎/品川宏樹 ガガガ文庫

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ローマ編最終章“十二使徒のゲーム”開始!

楼樹の前に立ちはだかる第二の“ゲーム”

さあさあお立ち会い!
この世のあらゆる快楽を貪り続けた皆々様!!
第一のゲームはいかがでしたか?
続きまして、第二のゲーム。このゲームの勝利者が、かつてミスターと呼ばれた男の権利を継承できるのです!
そう、即ち七人目の“聖父”となるのです!
ただし今回賭けていただくのは、皆様自身の命!
勝利すれば“聖父”になれるなら安いものですよね?

貴方がたは究極の快楽に溺れるため自身の命を賭けるのです!
しかし、ご安心ください!
赤神楼樹でも今回のゲームで生き残る確率はほぼ皆無です!
なんせ、彼は悪鬼羅刹たる十二人の娯楽提供者を相手にしなくてはいけません!
そう第二のゲーム“十二使徒のゲーム”!
最凶にして最悪なる大戦争になることは必然です!!
さあ皆々様!
自身の命を懸ける娯楽提供者をお選びください!
そして、『ケモノガリ』赤神楼樹を殺すのです!!

前巻から続いたシリーズ最大のスペクタクル『ローマ編』完結巻!!
いきなりオチから入るのは反則じゃありませんか?
これまで様々な奇人怪人たる娯楽提供者が出てきましたけれど、この夜叉刀だけは最後まで忘れられそうにありません。あらゆる意味で印象が強すぎて脳裏に焼き付いてしまいましたがなw
なんかもういっそ「癒し系」と捉えた方がいいんじゃないでしょうか。血風吹き荒ぶ殺伐とした空気の中で、彼が登場していたシーンは一種の清涼剤として作用していた気がします。凄いぜ夜叉刀。素敵だぜ、夜叉刀。
しかし、癒し系和み系のエンターティナーなど早々居ないのも当然のこと。残る十一人の娯楽提供者は多種多様の怪人揃い。完全にイカレ狂った怪物系から、その戦闘技能を極めきったプロフェッショナルまで様々なタイプのそれが並び立つ。ローマ編に入ってから連戦が続いていたとは言え、先の小国では一昼夜休むこと無く戦い続けたほどの楼樹くんである。スタミナに関してはそれほど問題はなかったはず。それなのに、どの娯楽提供者も一蹴とは出来ず、かなり瀬戸際の苦戦が続くことになる。無辜の罪なき相手を殺しかけてしまったことで、ケモノと人間の境界から転げ落ち掛けた事は想像以上に彼の精神を疲弊させていた、というのもあるのだろうけれど、それでも事ここに至ると出てくる娯楽提供者たちも相当の強者揃いということなのだろう。
だからこそ、夜叉刀さんが清涼剤となり得たのですがw
ゲームのプレイヤーであるクラブの会員たちが、それこそ自分の命をベットして挑むゲームですからねえ。生半なものじゃありません。逆に言うとこんなゲームでバンシーやファイアスターターみたいな連中に自分の命を賭けてしまえる人達はちょっとギャンブルが過ぎるんじゃないだろうか。あんな正気を失ってしまった連中によく運命任せてしまえるものだ。それだけ、クラブのメンバーたちもイカレているということなのだろうけれど。

そして、十二人の娯楽提供者の中に居た、人類最強の男。これまで出てきた敵の中で、本当に一番強かった相手って、ゲテモノやバケモノみたいな連中ではなく、あのロビンフッドだったと思うんですよね。純粋に戦闘技術と殺戮本能を昇華させた戦場の怪物。今回の最大の敵は、そんなロビンフッドさえはるかに上回る、ただ戦いと強さを求めた戦いの求道者。鉄量と火薬が決する戦争ではなく、血と剣が謳歌していた古の戦争こそが相応しい時代を間違えた英雄。純粋に、楼樹を超えた実力の持ち主。
近現代における自他共に認める最強の兵士 グルカ兵。
そう言えば、ロビンフッドもあれ、ネイティブアメリカンでしたっけ。やっぱりいまの時代の精悍な戦士って、そっちの人たちが担ってるイメージ強いのかなあ。グルカはガチですけどw
今回ばかりは、楼樹一人ではとても乗り越えられなかった苦境。イヌガミやシャーリーが居なかったらどうなってたか。特に、シャーリーはサポート役としても戦闘補助役としても多芸多才で本当に頼りになるんですよね。キレ者中のキレ者だし。CIA内部で問題児を通り越して危険人物扱いされて任務にかこつけて抹殺されかかってる、というのも分かる気がする。これで、なんだかんだと支持者が多そうなのも。
このローマ編は、ただ目の前の悪しき敵を殺戮していく、というこれまでの単純な戦いと違い、誰が本当の敵なのか、悪意はどこに眠っているのかというのを掘り起こし、探り当てなければならないところからはじまり、さらについに日常に戻したはずのあやなの身までも再び危険に晒し、と楼樹を精神面から追い詰める展開がなかなか厳しかった。最後に殺す敵なんぞ、彼にとっては初めてのシチュエーションでしたしね。場合のよっては、致命的な破綻すらあったかもしれない。クラブの上層部の不気味さはいや増すばかりですし、戦いもどんどん泥沼化してきたなあ。
そんな中で、一般人にすぎないあやなの動きこそが何気に目立つ。解放された彼女が向かったのは、日本ではなく、かつて楼樹が解放に参加した独裁国。そこで彼が出会ったあやな以外唯一心を許し預けた相手、ゲルタの元に。そんなヒロイン同士の出会いは、この血まみれの物語に何か影響をもたらすのか。彼女らの動向にも注目したいところである。

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