覚えてないけど、キミが好き2 (一迅社文庫)

【覚えてないけど、キミが好き 2】 比嘉智康/希望つばめ 一迅社文庫


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突如、転校してきた元カノ「ゆらら」と、妹「ひなた」の特殊体質の秘密を共有し、同居するようになってから数日。小衣家の一日はいつも通り吉足の不幸な騒動で幕を開けるのだったが、その日に限ってなんと商店街の福引で大当たり。高級リゾートプールの招待券を手に入れる。ゆららとひなたの大胆な水着姿に大興奮の吉足だが、このまま何事もなく幸運な一日を送れるのか?!記憶喪失ラブコメディ、いよいよ第二弾登場。
吉足の失われた過去に秘められていた惨劇は、あまりにも残酷で、あまりにも悲惨で、真実を知ってしまった時読んでいるこっちまで悲鳴を上げてしまうほどえげつないものでした。
死にたい!! これはもう死んでしまいたい!!(笑
……え? 吉足の記憶喪失って両親の事故がキッカケだったんじゃなかったっけ。あくまで記憶喪失が発動してしまったキッカケは両親が亡くなったという心的ストレスであったにしても、彼が記憶を失わなければならなかった原因そのものは、あの事件だった、という事なのか。でないと、妹のことを含めた親しい人のことを忘れてしまった、という特殊な記憶の消え方もわからなくはない。
凄いのはこの場合ひなたの方だけれど。この妹ってば、兄のメンタルを守るためただその為だけに、自分を犠牲にして兄のメンタルを守り続けてきたという事なのですから。むしろ、ゆららの普段はポンコツな推理しかしないくせに、こういう時だけまともだった記憶喪失の真相の推理が正しかったなら、ひなたは純粋に兄想いの健気な少女で居られたのに……真相を知ってしまうと、そこは頑張るところじゃないだろう! と思わず叫びたくなるぽんこつ具合。てっきりこの作品、ぽんこつなのはヒロインであるゆららだけなのかと思ったら、吉足もひなたも総じてぽんこつじゃないか。なんという総ポンコツ劇場(笑
ここまで盛大にひっくり返ったオチはなかなかないですよ。読み終えたアトにピクピクと痙攣して動けなくなるような事態はなかなか経験できませぬ。比嘉智康という作家は、毎度凄まじいといっていいくらいのオチを持ってくる人という認識はちゃんとあったのですが、これは予想を上回り過ぎだ!!
吉足を好きで好きでたまらなくて転校までして追いかけてきた元カノに、同じくお兄ちゃんが好きで好きで堪らなくて自分の恋心も犠牲にして義理の兄に尽くしてきた妹。そんな二人に対して、主人公の吉足もまた、妹の為に不運を引き受けて不幸なんかじゃないと笑い、また記憶をなくしてなおゆららへの愛情を失っていないという状態で、結局のところこの三者の関係って完全に青信号なんですよね。これで妹と元カノの関係がギスギスしていたら不具合も出ようものなのですが、兄妹二人きりの生活の中にゆららは非常に上手く入り込んで三人で一緒のファミリーという空気を作り出すことに成功したので、ヒロイン二人の仲も良好を通り越して密接といっていい位になっているので、ギスギスするどころか三人でイチャイチャしているような有様になっている。もうご馳走様としか言いようがない。三人ともがお互いに対して求めるのではなく与えることを喜びとする献身さを至上としているので、もう見ていて恥ずかしいくらいにラブラブっぷりが加速していくのである。
たまりませんな。
それでいて、三人ともが三人とも、というか登場人物が総じて比嘉智康特有のどっかセンスやら思考が並から外れたポンコツさを実装しているので、醸し出される空気は甘々ながらどこかとぼけ切った脱力空間が形成されている。このあたりのセンスは好みの良し悪しがあるんだろうけれど、ハマってしまうと際限なく笑えて好きになってしまうんですよね。言うまでもなく自分はハマってしまう方。この時空間は中毒になりそうな愉快さが溢れてる。
そんな独特のセンスの極めつけが、あの馬場園伝説なのでしょう。一般的に鑑みて、彼は主人公のリア充っぷりを僻み、彼なりの努力を持って非モテを解消しようとする十把一絡げのモブ脇キャラという立ち位置なのでしょうけれど、それも極めに極めつけると如何に輝き伝説となれるかを実証してしまった、一種の神であり英雄である。ある意味、本巻は馬場園くんの為にあったと言っても過言ではないくらい、輝いてた。馬場園、輝いてたよ!!
さて、なんかあとがきも本編と変わらないポンコツなノリで進んでしまって読み応えがあるのか読後感が錯乱してしまったというか、なんとも偉いことになってしまったのだが、肝心の続編はあるんだろうか、これ。あのオチでこのシリーズそのものが終了というのはそれはそれでアリな気もしないでもないけれど、あったらあったでヒドい! いい意味で酷いというべきか悪い意味で酷い!というべきかも判断がつかないけれど、とにかく酷いw


1巻感想