瑠璃色にボケた日常 (MF文庫J)

【瑠璃色にボケた日常】 伊達康/えれっと MF文庫J

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霊障に悩む少年・孝巳が出会ったのは、天才霊導師――「美少女をつけたまえ」――じゃなくて、とボケた少女・有働瑠璃だった!? 美少女ツッコミ系コメディ、開幕!

紺野孝巳は、霊障に悩まされる高校一年生。ある時、校内でも有名な霊能者の少女、有働瑠璃の所属する『お祓い研究会』を訪れるのだったが――おはらいではなくおわらい。そこはなんと『お笑い研究会』だった! 謎の会話から孝巳にセンスありと認めた瑠璃は、その場で孝巳を入部させてしまう。さらに“霊導師”を名乗る学校一の美少女、鴫原翠まで現れ――「フン、『霊感女』の称号なんて翠にくれてやるさ。私には『爆笑王』の称号と、『ミス青鶴高』の称号があればそれでいい」「その二つは同時に成立するのか?」――いま、霊と笑いに囲まれた非日常な青春が幕をあける! 美少女にツッコミまくる青春系フルスロットルコメディ!
おもいっきり粗筋ではコメディコメディと連呼してますし、実際ヒロインである瑠璃は真剣にお笑いを指向している娘なんですが……ぶっちゃけて言うと本作はコメディよりもシリアス寄り、しかもかなりハードで真面目系です。幽霊関係のお話も死んだ人を茶化さず真剣に扱っていて、感心するほど。特に、幽霊が怨霊となって取り憑き霊障を起こすのは幽霊の意志ではなく、取り憑かれた人の幽霊となった人への後悔や恨まれている憎まれているに違いないという思いが、幽霊を怨霊にするのだ、という仕組みには思わずうならされました。結局、生きている人の心の問題であり、幽霊はその人の心を映す鏡のようなものなわけだ。心残りとは幽霊の側じゃなく、現世に残った人の方にあるのです。結果、自然と霊障を解く、と言うことは憑かれた人の過去と人間関係と内面に踏み込み、これを紐解いていく事になります。
そもそも冒頭から、親友だった男の怨霊に取り憑かれた主人公の孝巳からして相当にヘヴィな状況に置かれていますし、その件をきっかけに幽霊が見えるようになってしまった彼が遭遇した、自殺した少女の霊にまつわるお話など人間のド汚さと一抹の救いが描かれたドロドロの人間ドラマですし、クライマックスの瑠璃と翠の物語も瑠璃がお笑いに拘る発端となった話が明らかになるものなんですけれど、笑いどころなんざ全然さっぱりこれっぽっちもないくらいシリアス一直線の深刻で情緒的で切なさが迸ってるストーリーでした……改めて振り返ってみても、本作のどこにコメディ♪なんて主張できる要素があったんだろうw 一応、ちゃんと漫才のシーンはあるんですけれど、自分は笑点とかで笑ったことのないタイプの人間なので、笑いどころがどこにあるのかはさっぱりわかりませんでしたw いや、これで笑えというのが結構難しいですよ。漫才のネタをちゃんと舞台で見たら笑えるんでしょうけれど、楽屋裏でネタ合わせしているのを見てても面白くもなんとも無いだろうケースとあんまり変わらない気が……。正直、無理にコメディ路線に乗せようというのは本気でやめておいた方がいいんじゃないだろうか。この人、ハッキリ言ってシリアス畑の人ですよ。それも、抜群に上手い類の。切なさ爆発系とか、ほんのり心温まる人間ドラマとか、そっちに進んだら相当な所まで突っ走っていけそうな気配が、このデビュー作からひしひしと感じますし。翠のぶきっちょな孝巳との関わり方を見てると、恋愛ドラマ方向でも行けそうですし……何となくファミ通文庫っぽいんですよね。いや、MF文庫がこういうタイプの作品に佳作とは言え賞を取らせたというのは、このレーベルも画一的に同じ路線の萌えラブコメばっかり書かせず、シリアス寄りの新人も確保して道を広げていこう、という意志がある、と見たい所なんだけどなあ。出来れば、大事にしてあげて欲しいものです。そう期待したいだけの手応えは充分ありましたから。