ラブコメ圏外 (HJ文庫)

【ラブコメ圏外】 内堀優一/かわいそうな子 HJ文庫

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普通の高校生になる方法=ラブコメを発生させること!?

「普通の高校生の共通点……それは、ラブコメをするということだ! 」
過去の自分に別れを告げ、普通の高校生デビューを狙う井口銀次朗。
そんな彼は同じクラスの真宮久奈が自分と似た野望の持ち主と知り、ならばと一緒に普通の高校生になるための方法を検討。
そこに転校生の美少女を巻き込んだ結果、銀次朗たちはラブコメ発生を目指すことに!?
再序盤だけいまいちテンポが悪かったのだけれど、カラオケの場面を過ぎてから、銀次朗と久奈がお互いの正体を察して腹を割った話し合いを交わしたところから、完全にブレイク。もう、こっから最後まで自分、ずーーーっと笑いっぱなしでした。冗談抜きでずっとケタケタ笑ってましたから。いやあ、面白れえぇ!! 誰もツッコミが居ないから、ボケにボケを重ねた挙句ボケたまんま突っ走っていくので、誰かこいつら止めろ状態。内部はダメでも外部なら、と本来なら微妙な空気とか雰囲気ですっとぼけた主人公たちを掣肘してくれそうな立場にあるはずの周りのクラスメイト達が……むしろコイツラが一番暴走を煽ってんじゃないのか、というくらいにノリが良すぎる。あかん、このクラスメイトたちが面白すぎる(爆笑
そもそも、【ラブコメ圏外】というタイトルからして題名詐称である。もう突端から圏内ですから! 凄く圏内ですから!!
今までの過去の自分から脱却し、普通の高校生になろう、と志すのはいいのですが、銀次朗にしても久奈にしてもまず普通の高校生なるものの定義からして理解していなかったので、高校デビューの段階で既に足を踏み外し、密かにクラスメイトたちからは注目、或いは畏敬の的になっているという有様(当人たちは自覚なし)。その上で、お互い全然普通じゃないからっ! と指摘し合った所で、じゃあ普通の高校生ってなんだ? と応談した結果導き出された答えが……自らを普通の主人公と称して揺るがないギャルゲの主人公みたいな高校生を目指そう! と間違いまくった結論にたどり着いて悦に浸る銀次郎と久奈。この時点で大いに外しまくっているわけだけれど、恐るべきことにこの二人の置かれた環境は、その結論に辿り着いた時点で既に目指しているギャルゲの主人公とヒロイン的な普通の高校生そのものなんですよね。
目標を設定した時点で既に目標を達成してゴールを通り過ぎてしまっているにも関わらず、その事実に気づかないまま更に突貫を続けるこやつらは、いったい何処へ向かってしまっているのか。どこまで行こうとしているのか。誰もこのボケ倒しをツッコまないので、やめられない止まらない。
その上、美人な転校生の到来である。完全に世界はラブコメ時空に突入しているにも関わらず、自分たちが既に普通の高校生のゴールテープをとっくの昔に切って通り過ぎてしまっている事に気がついていない銀ちゃんは、このイベントの意味も思いっきり履き違えた挙句に、クラス纏めて変な方向に。いや。このエピソードで解ったんだけれど、このクラスメイト達、めっちゃ良い奴らだわ。おまいら、まだ高校生になって初めて顔をあわせてなんぼも時間経っていないのに、息合い過ぎw いや、でも気持ちいい奴らですわ。
肝心の転校生は、まさかの方言少女。博多弁きたーー!! しかも、博多の人にすら伝わらない博多弁きたーー!! この子がまた、わりと良識人にもかかわらず天然がこじれていて、肝心の所で同じようにボケ倒してくれるお陰で、やっぱりツッコミ不在のまま混迷を深めていく普通の高校生を志向する会の面々。
うん、ここで部活を作ろう、という定番の流れになるのはよく分かる。よくわかるんだ。まずそれはありだよね。そうしないと始まらないし……。

部活作ろうとしてガチで失敗したのは初めて見たわ!!

そして、本作で特筆すべきは、まず何よりもあの担任の先生でありましょう。七浜小夏先生、通称【フェアリー】。
……マジで本物の妖精さんだ、この人w
妖精さんは、妖精さんは実在したんだよ、此処に現実に実在したんだよ! UMAなんかじゃなかったんだ。写真を、証拠写真を撮るのだ。撮っても映らなさそうだけど! よし、餌付けしてみよう。何を食べるんだろう。あれか? 花の蜜とかか? 加工食品は絶対食べられなさそうだな。お肉も無理だな。甘いもの、甘いもの。
……先生ですよ?
よくまあ妖精さんが先生なんか出来るなあ、と思うところだけれど、妖精さんの見える純真な生徒さんたちが全力でサポートしているので、万事大丈夫なのであります。なにこの自主的ネバーランドw

作者の内堀さんが現在手がけているもう一つのシリーズ。【吼える魔竜の捕喰作法】の方でも、現在ヒロインの娘がそれはもう甘酸っぱくて仕方のない素敵な恋をしている真っ最中、デビュー作のシリーズでもなかなかに乙女心が迸っている恋模様が描かれていたので、内堀さんがラブコメ描いたらかなり素晴らしいのが出来るんじゃないのか、と思ってましたし実際言及したこともあるのですが……いや、まだまだ全然見縊ってました。正直、ここまで笑えるノリノリでテンポの良い会話劇主体のラブコメを描かれるとは、あったくもって御見逸れしました。
久奈が芸能界を引退したきっかけと銀次朗との関係など、まだまだ掘り下げていけるところはたくさんありますし、もにょもにょっとなっている久奈の本当の気持が見え隠れしている部分など、ニマニマが留まるところを知らず、さらにラブコメ深度が深まっていく要素はこれでもかと詰まっているので、これはぜひ続編続けて欲しいですね。なんか、ラストではおよよ!? と思うような意外な展開が待っていましたし。正直、この作者さんは片方鈍感で片思いの空回りをしているよりも、お互い顔を突き合わせて赤面しあうような甘酸っぱいタイプのラブコメが絶妙な人だと思っているので、このラストの展開を大事にしてくれたら、とびっきりのが出てきそうで、滅茶苦茶楽しみですよ、はい。
繰り返しになりますが、どうもかなり笑いのツボに入ったみたいで、途中から最後まで笑いっぱなしでした。最高。面白かったです、オススメ。