千の剣の権能者(エクスシア) (このライトノベルがすごい! 文庫)

【千の剣の権能者(エクスシア)】 紫藤ケイ/キムラダイスケ このライトノベルがすごい! 文庫

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人智を超えた力・権能を宿した〈権能兵〉の一人、クアディカ。
失われた魂を求め、彼女は千の剣を振るう――。

権能――それは、特定の事物を自在に操る力。世界は、権能を持つ代償として魂を抜き取られた〈権能兵〉を有する帝国によって統治されていた。“英雄”を求める青年クオンは、〈権能兵〉でありながら帝国の支配を受けない少女クアディカと出会う。流れぬ涙を流さんとするかのように、彼女は〈剣〉の権能を振るう。その手に、失われた魂を取り戻すため――。第3回『このライトノベルがすごい!』大賞受賞者、受賞後第1作。
デビュー作の【ロゥド・オブ・デュラハン】でもそうだったのだけれど、本作においても救いのない悲劇の果てに、悲劇を経たからこそたどり着ける救済と和解が眠っている。人々がそうした結論にたどり着くために、これほどの痛みと哀しみの中を突っ切らないといけないような流れになっているのはそりゃもう酷い話ではあるんだけれど、いずれも根底にあるのは善性の肯定なんですよね。甘えを許さず自ら痛みを背負わなければ救いを得られないというのは厳しいようにも見えるけれど、どれほどの絶望が待っていてもその先に救いや許しが待っていてくれる、というのならこれらはきっと「優しいお伽話」なのでしょう。
ヒロインの少女クアディカは、権能兵として奪われてしまった魂を追い求める少女。普通の権能兵が、意志のない人形のような有様であるのに対して、彼女だけは何故か自我を持ち決して無感情とはいえない意志の発露を見せている。しかし、それでも彼女には魂はなく、魂のないにも関わらず彼女は急き立てられるように、焦がれるように魂を求めている。その欲する心はどこから生まれているのか。心とは魂と不可分ではないのか。この魂に関する見地と描写がなかなかに面白く、同時に少女クアディカの動機と根源となるものを引き立たせていて、彼女の泣けない慟哭と共にグイグイと引き込んでいく。
面白い。
しかし、同時に性急でもあるように感じます。それぞれのキャラの掘り下げとなるエピソードや、物語の焦点や転機となるシーンが味わい感じ入る前にスタスタと過ぎ去って行ってしまうんですよね。ややも忙しない。話を膨らます余裕は、それぞれのエピソードにポテンシャルとして備わっていると思うのですが、そこを広げずに必要な分だけ残して素っ気ないほどにそぎ落としている。無駄がないのはいいけれど、噛み締めるべき余韻までもがなくなっているのは、ちょっと勿体無い気がしましたね。傾向として情感に訴えかける内容の物語だけに、ふっと立ち止まって染み込ませるだけの間が欲しかった。