スクリューマン&フェアリーロリポップス2 (電撃文庫)

【スクリューマン&フェアリーロリポップス 2】 物草純平/皆村春樹 電撃文庫

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玖堂卓巳の学校に転入した、“妖精郷”変革をめざす“翅族”の姫ロロット。卓巳の妹・優乃や、ややズレ気味な美少女・佐伯ネアラと早々に問題を起こしつつも、ロロットは持ち前の破天荒さとキュートさとを生かして、一躍時の人に!しかし楽しい日々も長くは続かない。ロロットそして卓巳を狙い、様々な思惑を持つ危険人物たちが街に集いはじめる。羽々根市長からロロットに告げられた突然の退去勧告、卓巳の近しい人々に牙をむき始めた新手の妖精使い達―改革をめざす者に訪れるべくして訪れた試練の中で、二人が下す決断とは。
読んでいて、背筋がビリビリと痺れるような戦慄を覚える物語というものは何気に希少だ。どれほど面白い傑作や名作であっても、このこみ上げてくる痺れを感じさせてくれるものは決して多いわけではない。ドライブ感、とでもいうのだろうか。此処ぞという時に、意識そのものをぶん回されるような疾走感をもたらしてくれる壮絶な展開、或いは登場人物の示す決意や意志、気宇壮大な世界観、そういったものが戦慄となって全身を駆け巡る。その興奮、その滾りの何と心地よいことか。そういった作品を、私はこよなく愛している。
そして、本作はまさしくそんな痺れる物語群の一枚だ。
そんなとびっきりを担うのは、勿論この二人、主人公とヒロインの卓巳とロロット。この二人はやばい、完全にメーターのレッドゾーンを振り切ってしまっている。特にロロットは前回の感想でも繰り返し強調しましたけれど、本当にヤバい危険人物だ。通常の物語ならば、主人公側じゃなくてむしろラスボスに収まっていてもおかしくない悪の朱天。傲慢なる無法の女王。無邪気なる享楽の権化。それは世界を愛するがゆえに思うがままに弄ぶ者。故にこそ、自分の思い描く世界を実現するために、手段を問わず被害も犠牲も厭わない。否や、その傲慢さは手段を自在に選びとり、被害も犠牲も認めない。悪党を自認する欲深な彼女は、自分のものが失われる事も奪われることも一切許さない。だからこそ、彼女は自らの行く手を塞ぐ者を、路傍の石だろうと決して許さず蹂躙する。
「ね、ぼくの騎士様? いつも通り無茶なお願いしてもいい?
――ぼくの道に唾を吐いてくれた小悪党たちに、片っ端から一泡吹かせてやって?」

そんな狂乱の姫君の切っ先を担う騎士もまた、それ相応に振り切っている。こういうケースで悪役が選ぶ手段で最も効果的なのは、当事者を直接狙うのではなく、その身内や友人、関係者を狙うことでターゲットを精神的に追い詰め、また社会的立場を崩し、人間関係を滅ぼすものだ。この手段は悪辣であるが、それだけ非常に対処が難しく、大概のケースにおいて狙われた側が妥協を強いられるか、狙った側がミスするか徹底を欠いたところを突かれるかしないと被害は免れない。これを防ぐには、関係者全員を守れるだけの、或いは敵の動きを完全に封殺するだけの莫大な組織力を動員するしかない。個人の力でこれを為すのは不可能に近い。だから、敵がこういう手段を取ってきた場合、殆どのケースで主人公サイドは躊躇を強いられる。迷い、悩み、立ち止まって慎重に動こうとする。決して敵の思惑に屈しないにしても、まず間違いなく一旦そこで前進を止められるのだ。
だが、玖堂卓巳は、この男は、この騎士は、敵の実行を伴う脅迫に対して刹那の停滞すら起こさなかった。一瞬の躊躇もなく、敵の脅迫を切って捨て、凄絶、とすら言っていい啖呵で逆にその喉に刃を突きつけて見せたのである。やるならやってみろ、その代わり覚悟しろ、相応の報いを受ける覚悟を、だ、と。
今回の敵はいい意味でゲス野郎で、甘さや情けや隙も無く徹底した外道働きが出来る相手でした。それこそ、過剰なくらいの攻撃性で無茶苦茶が出来るイカレた野郎でした。だからこそ、そんな相手の野放図なまでの残虐性を、野蛮さを、片っ端からねじ伏せて圧殺し強殺し蹂躙していく騎士の剣は痛快そのもの。圧倒的なまでの攻勢防御。小悪党の跳梁を許さない、これぞ大悪の覇道。姫と騎士の逆鱗に触れた小賢しい小物は、文字通りに木っ端微塵で、気持ちいくらいにすっきりした。すっきりした!!
主人公の能力は、作り上げた道具が五分間で崩壊してしまうので、使い方がかなり限定されるものだと思い込んでいたのだけれど……これって発想次第で際限なく何でもできそうじゃないですか。五分間なんて、考え方さえ変えれば制限でも何でもない事を見せつけられた感じである。
とまあ、盛り上がるところは際限なく盛り上がる本作なんですが、何気に普段の日常パートも非常に質が高いんですよね。なんでもない場面でも、地の文から自然と引き込まれていくのである。基本的な部分から上手い、というだけじゃなく、文章の一つ一つに花があって飽きさせない。これはなるほど、面白くならない方がおかしい文章だ。あとがきで反省していらっしゃるように、全体のストーリー構成の管理がまだ掴めていないっぽい部分が散見されるけれど、神は細部に宿る、の言葉もあるようにミクロと要所さえ捉えていれば、次第にマクロの感覚は整ってキます。逆に言えば、まだまだガンガン伸びてくる要素がそれだけあるってことですから、もっともっと面白くなるはず。必ず、必ず。
今回微妙に動ききれていなかったイングヴェイやシャノンも、ネアラも次回以降こっちサイドとして動くとなるとだいぶ面白そうなキャラになってるんですよね。妹の優乃が想像以上の逸材で、この娘も場合によってはネアラ以上に重要な働きをしそうな感じがひしひしと。主に弄られ役、としてでしょうがw

今回はある意味余計ないらんちょっかいをかけられたのをはたき落とすと同時に、味方戦力の充実と足場固め、という意味合いが強かったっぽいので、次回以降はラステルの件も絡んで妖精郷のフィクサー相手にロロットの革命的蹂躙劇を期待したい。ラステルの問題を持ち越したのは、もっと政治的なトラブルに格上げするためでしょうし。ロロットと卓巳のイチャイチャも堪能したいですけれど、それ以上にロロットの革命家としての無茶苦茶さをこそ味わいたいですからねえ。
……しかし、ロロットって年齢中学生相当だったのか。卓巳よりも年下なんだからそのくらいで当然だったんだけれど、実際に中学の方に転校してきたのを目の当たりにしてしまうと……ロリコン扱いされても仕方ないぞ、主人公w

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