スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)

【スカイ・ワールド】 瀬尾つかさ/武藤此史 富士見ファンタジア文庫

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スカイワールド―それは魔法と科学技術が同居する世界で、無数に浮かぶ島から島へと飛空艇で旅をするオンラインRPG。運営開始から一週間、数万人ものプレイヤーがスカイワールドの中に閉じ込められる事件が発生する。プレイヤーたちがいまだ現実世界への出口を見つけられない中、ジュンこと三木盛淳一朗は誰ともチームを組むことなく、持ち前のゲームセンスを武器に単独で攻略を進めていた。しかしある日、迷子の初心者・かすみと白魔術師のエリに協力を求められてしまい、三人で難クエストに挑むことになるのだが―。天空に浮かぶ唯一の浮遊島、第一軌道『アイオーン』を目指す、オンライン冒険ファンタジー。
ついに瀬尾さんもMMORPGを書く時代になったのか、と不思議な気分。面白いことに、この作者が書くのならMMORPGの世界に閉じ込められるという状況に関して、哲学的なアプローチを仕掛けてくると思ってたんですよね。【クジラのソラ】再び、みたいな感じで。
ところが蓋を開けてみると、むしろMMORPGのゲームとしての在り様に重点を置いているという思っていたのとはまるで逆サイドを行く作品の構成である。けっこう驚いた。
それはそれとして、このゲームとしてのMMORPGというスタイルに重きをおいた描き方が存在に面白い、面白いのである。
ギルドの微妙な人間関係や、ゲームシステムへのアプローチ。隆盛を誇っているMMORPGものですけれど、ゲームとしてのMMORPGという観点を突き詰めて書いてる作品って意外なほど見かけないんですよね。MMO廃人ならではの視点からもたらされる攻略法や、プレイヤー同士の距離感の保ち方など、ゲームを馬鹿みたいにやりこんでいるからこそのもので、同時にゲームシステムを隅から隅まで把握しているからこそ、現実に落とし込まれたが故のゲームとの偏差にも気づき、探り当てることが出来るわけで……主人公はどちらかというと、裏ワザみたいに捉えているので、やっぱりゲーム的なのですけれど。
スキルやレベル、ステータスなどがあるだけで、結局に単なる異世界ファンタジーと変わらないようなMMORPGものと違って、こうカッチリとゲームシステムが定まっていて、それに則り、或いはその陥穽を突いてゲームらしく現実になった世界を乗り越えていく、というノリもちゃんとやればこれはこれで十分以上に面白いんだなあ、というのが実感できた。
何より、主人公当人がこの状況をゲームとして楽しんでいるのが大きいんだろうけれど。彼の、やり込み倒して明らかに現実に支障をきたしてたんだろうな、というヘヴィゲーマーらしい立ち振舞にはなんとも微苦笑を浮かべてしまうところでありますが。
ラストの対決のジュンの大盤振る舞いは、達人だとか英雄だとか言う型じゃなくて、これ以上無くゲーム廃人! という形でしたしねえw
一方で、かすみとエリというヒロイン間で、ガッチリと主人公ですら間に入れない絆が結ばれてしまうあたりは、さすがは【クジラのソラ】で果敢に百合かというくらいガチンコの女の子同士の友情を描いた瀬尾さんというべきか。恋愛と友情はまた別物、というのか、かすみのジュンへの恋心とエリへの無二のパートナーとしての絆、そしてリアルから続くサクヤとの複雑に絡まりあった友情、と思いの外彼女中心にも人間関係が錯綜していて、物語の中心点がジュンだけなく、かすみにも生じていて、双重点になっているのも先々の展開を鑑みてもこれは興味深い要素じゃないだろうか。