幻國戦記 CROW -千の矢を射る娘- (GA文庫)

【幻國戦記 CROW 千の矢を射る娘】 五代ゆう/山本ヤマト GA文庫

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「鴉こそが最高の忍、最高の作品なり」
〈神器〉となるべき少女・千弦を巡り、闇夜に忍が駆けめぐる!


「〈神器〉と〈御禍戸〉、どちらも叛徒の手に渡すわけにはいかぬ。
ましてや〈忍〉、人ならぬ、人に作られしモノどもなどには……」

美須真留八州、ひいては豊葦原の地を汚れた魂喰や魍魎から守る高濃度霊子集積回路〈神無薙〉。
その〈神無薙〉を守る〈御禍戸〉が崩御した――。噂は瞬く間に八州を駆け回り、新たな火種となっていた。

葛木の里の生き残りの少女・千弦は、謎の怪人に追われ気を失う直前、黒鴉の面の〈忍〉に助けられる。
だが彼は、千弦の里を滅ぼした、彼女が仇と狙う憎き男・鴉で……! ?

真なる闇夜を〈忍〉が駆けめぐる。ニンジャ・スチームパンク開幕!
にょわーーっ、ガチだ、ガチンコで戦国和風サイバーパンクだ。しかも、ブラックロッド系統の、あの肉塊と機械が融合したような世界観。驚いたのが、それを手がけたのがこの五代ゆうという人だという所ですか。【機械じかけの神々】の時代から知っている身とすれば、まさかこの人がこの路線を描くなんて、しかも生半可ではないこだわりまくったサイバーパンクを、という驚きは否めません。この人が【パラケルススの娘】を描いた時も驚いたものでしたが……、いやでもあれはあれで後半どんどんこの人らしい話にはなって行きましたけど。もしかして、その後に書いていた【アバタールチューナー】という作品、読んでないけれど本作へと至るような話だったのかな。
ともあれ、本作の雰囲気を見てまず黒古橋、それも【蟲忍】を思い出した人は決して少なくないはず。一方で、基本的な所で古式ゆかしい時代劇風な気配を特に日常シーンあたりで色濃く残しているあたり、そして敵の忍者たちのドギツイまでの異能の忍術など、山田風太郎先生のテイストをこれでもかと感じさせて、ほんとに好きなモノを好き放題つぎ込んできたんだなあ、というのがビシバシと伝わってくる。こういうのって、楽しんで書いていらはるのがよく分かるんですよね。古豪ともいう人が好き勝手やりだすと、基本土台がしっかりしてるのに先っぽはやたらと切れ味たっぷりのビンビンに尖り出す、といういい意味でとんでも無い作品になる事が往々にあるので、本作もその傾向を大いに期待したいところであります。
設定に凝るばかりではなく、キャラクターの方にも力入れてますねえ。ヒロインの千弦がまた可愛いんだ。これはイラストに山本ヤマトさん持ってきたのも大きいです。彼女自身相当の手練で気も強く敵意に対しては真っ向から正論を以って噛み付いていくような、毛を逆立てた猫のような少女である。同時に、それは気を張っていて無理しているという事の側面でもあり、世間から隔絶した隠れ里で暮らしていたせいか、人里が物珍しくつんけんしながら浮かれていたり、と一皮むけると好奇心構成な、でも本当は臆病で優しい、でもそんな内面を一生懸命突っ張った態度で覆い隠しているような、実に可愛い女の子なのである。そんな彼女をよく回る口で手玉に取るはすっとぼけた二人の男、九郎と田之介。この二人も同じ穴の狢かと思いきや、片や操り人形の忍者でありとある組織の尖兵ながら、その真意が用意に読み取れない謎の主人公であり、片や所属する組織どころか何者かなのかすらわからない謎の支援者。まあ、田之介に関しては、恐らく作中に出てきた名前から推察もできようものですけれど。兎も角、何を考えているかわからない二人の男にその正体すらも気づかないまま守られる千弦という構図が、鴉という忍者が千弦の村を襲い、一族縁者皆殺しにした張本人、と言われている事も含めて、先々不明な部分が紐解かれていけばいくほど思いもよらぬ真実が待ち受けていそうで、これまた実に楽しみなのでありました。
まだまだ導入編でありますし、次回以降のさらなる盛り上がりに期待。

五代ゆう作品感想