盟約のリヴァイアサン (MF文庫J)

【盟約のリヴァイアサン】 丈月城/仁村有志 MF文庫J

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天空より飛来するドラゴンの襲撃に、人類が脅威にさらされている現代。人は魔術によって創造された蛇霊体《リヴァイアサン》を駆り、抗戦の日々を送っていた。“蛇”の契約者にして、竜を討ち滅ぼす救世の戦乙女――《魔女》。彼女たちの契約をプロデュースすることを生業とする少年、ハルこと春賀晴臣は、幼なじみで欧州屈指の魔女、アーシャの(強引な)要請で3年ぶりに「東京新都」に帰還する。妖精のような容姿の少女に連れ添って、高校転入に拠点確保と奔走するハルだったが、突如、上位種のドラゴン“ソス”の襲撃に遭い――!? いま、竜と竜殺しの新たな神話が息吹きを上げる! 至高の《新生》エンタメ、堂々開幕!
300ページoverって、MF文庫Jにしては結構厚い方なのかな。持った感触が他のよりもちと重く感じたのだけれど。
というわけで、スーパーダッシュ文庫のほうで【カンピオーネ!】シリーズを絶賛刊行中の丈月城さんが、レーベルを移動しての新シリーズをスタート。元々、【カンピオーネ!】もあれはゴジラとかガメラなどの一種の特撮怪獣モノだと認識していたのだけれど、此方の【盟約のリヴァイアサン】は、ドラゴンが復活し自然災害のように都市部を襲うのが常態となっているというガチで怪獣モノみたいな話に。
カンピオーネで培った神話体系の起源を深く掘り下げた思想はこっちでも充分反映されていて、龍と蛇、女神と魔女と捧げられた贄、というカンピオーネでも語られた神話構造は、この盟約のリヴァイアサンの根底となる魔女と蛇も契約、竜と竜殺しという枠組みに組み込まれているので、あちらの薀蓄を楽しんでいるとこっちのお話もちょっと違う観点からも楽しめて実に面白い。
主人公となる春賀晴臣は、さすがは丈月さんの描く主人公というべきか、全然流されずに我が道を行くタイプ。面倒くさがり屋で現実主義者のわりに行動する労を惜しまず、やるべき事をちゃんとやり遂げる、いい意味でプロフェッショナルなので、見ていて頼もしい限りである。幼少から親に連れられ、さらに早くに父親を無くして一人で家業をついで世界中を旅して回っていたせいか、少年特有の幼さは微塵もなく、むしろクレバーで甘い夢を見ない完全に精神的に成熟した大人である。このあたりのワールドワイドなフットワークと視野の広さは、その辺のヘタレ普通主人公とは最初から全然違いますねえ。というか、このハルが高校に通ってるのってえらい違和感を感じるくらい。大人が、というか社会人がいまさら高校に混じってるみたいな。

一方でヒロインの方はというと……織姫が裏表のない素直で真っ直ぐなエリカ、という感じで、これを癖が抜けてエリカよりもキャラが弱くなったと捉えるべきか、それとも歩留まりがなくなってより最強化したヒロイン、と捉えるべきかは今度の描写次第なのでしょうけれど、なんかもう凄いイイ子であり、男前で快活陽性、その上で空気も読めて気配り上手、と殆ど現段階で無敵なんですよね。変に意地っ張りなところもないし、これデレたら前置きなしで一気呵成に急所狙いしてきそうな恐ろしいヒロインだぞ。
そして、ダブルヒロインのもう一人の片割れ、アーシャは……幼馴染キャラであるのだけれど、なんか足元がもつれてる残念女子ですよね! いや、こういうの大好きなんですけど。自分の気持に素直になれない、というよりもお手玉してしまって手につかなくて、あわあわ言ってるうちにひっくり返っておでこにアザ作ってうずくまりながら呻いているような子である、ってどんなイメージだ、我ながらw
典型的な大食いキャラなのだけれど、この手の大食いキャラは太らない体質です! と主張してそれで何の問題も無し、という風にスルーされているのが常だったのですが……いろんな人から、いやいやそれは体質じゃなくて若いからだろう、油断してると将来やばいよ? と指摘されて青ざめる始末。
あかん、アーシャ、ヒロインのくせに将来太りそうだw
でもまあ、残念女子なりに一生懸命がんばろうとしているところは好印象。ハルも鈍くはなさそうなので、伝わらないのは多分にアーシャの残念力にありそうですが。

彼女たち魔女が、人類の対竜戦の切り札として呼び出す「蛇」は、意外なことに「蛇」という単語から思い描くイメージには捕らわれていない。特に、織姫のそれは蛇や竜というイメージからは完全に逸脱してますしね。面白い。蛇周りの設定といい、彼女たち魔女と深く関連することになる、ハルが迦具土から与えられることになった能力といい、バトル要素は充実の一途。うん、やっぱりこの人の書くものはとびっきりにエンタメしてて、すこぶる面白いわー。
キーパーソンであり、ハルに力を授けアドバイザー的に振る舞う迦具土は、完全に味方ではなく、むしろ何を企んでいるかわからない食わせ者。立ち位置としてはむしろ、カンピのアテナサイドに近いのかもしれない。協力してくれていても、本質的には敵に近いような匂いすら感じる。デレても、アテナみたいに殺し愛い、にまでは発展しないだろうけれど、嬉々として弄ってはきそうだよなあ、この娘。

ともあれ、導入掴みとしては充分以上のスタートじゃないでしょうか。まだまだエンジン温まっているとは言えませんが、というかまだまだこんなもんじゃないでしょうが、あとは加速していくのみ。カンピ共々、楽しみなシリーズです、期待。

丈月城作品感想