紫色のクオリア 2 (電撃コミックス)

【紫色のクオリア】 綱島志朗/原作:うえお久光 電撃コミックス

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学にかかってきた「自分からの」電話が、告げたのは――

紫色の瞳をもった少女・鞠井ゆかり。彼女は、ニンゲンがロボットに見えるという――。特異な感覚をもったゆかりと、その友だちの波濤学が紡ぎだす「すこし・不思議な」物語。留学生・アリスの登場を機に、ゆかりの、そして学ぶの運命が大きく動くだす……。

警告しよう。

――ここから物語は急転する。


待っていた、待っていました。あの歴史的傑作の疾風怒濤の加速感を目撃する瞬間を。

「1/1,000,000,000のキス」

物語が走りだす。リミットを超えて、際限なく加速しだす。止まらぬ世界、窓から見える光景はもはや流れる光の線へと化していく。
正直言って、あの原作でのノンストップ感、ゴールまで一瞬足りとも減速することなく、ただただひたすら加速して加速して光速を超えたかのように限界突破して、そのまま走り抜けてしまったドライブ感は、漫画で十全味わうことは不可能だろう。あの感覚は、殆どトリップと言っていいもので、文章という媒体に寄ってもたらされる陶酔であった以上、漫画という媒体でありまたこの2巻で物語の執着まで辿りつけず続刊という形になってしまうコミックスでは味わう事は不可能なものだ。故に、あの乗ったが最後、終わりまで離脱できないという途方も無い感覚はさすがに薄れてしまっている。
多分、原作で内容を既に知っている事も大きいのだろう。何も知らなければ、これほど衝撃的な展開もないだろし。それを加味しても、小説と漫画という媒体の違いは大きいと思う。それは仕方ないことだ。だからこそ、逆に漫画という文章とは別の情報力を本作はこれでもか、と注ぎ込んできている。これは、原作では最後に我に返るまで置き去りにされてしまった心を、一から十まで首を引きずって連れ回す縦横無尽の所業である。一枚のページ、一つのシーン、一つの駒、その中の細かい仕草や表情で、これでもかと情感に訴えてくる。自分が何に乗っかってしまい、どんな状況の加速に巻き込まれてしまったのかを、つぶさに見せつけてくる。ワンシーンワンカットにぶん殴られる。あの時、マリィがどんなことを考えていたのか、学がどんな風に変貌し、その学の在り様に世界はどんなふうに激しく揺さぶられていったのかを、原作の学の語りだけでは知りえなかったところまで、つぶさに、つぶさに、外から光景を見ることによって窺い知ることになるのである。窺い知らされることになるのである。
目のあたりにするのである。
光のように一途な狂気を。すべてを置き去りにしていく最果てへの直滑降を。

漫画作品としては文章がやたらと多いですけれど、これでもかなり噛み砕き、さらに分かりやすく整理してSF的な解釈を説明していると思います。ゆかりの存在のありようや、学がどうなっていってしまっているのかを、簡潔かつ的確に説明しているかと。少なくとも、何が起こっているかさっぱりわからない、なんてことはまず無いんじゃないでしょうか。要点をきっちり抑えている分、原作小説よりも端的に状況は理解できるかもしれません。
だからこそ、ここで起こっていることが恐ろしくなるでしょう。未知もまた恐怖ですが、理解もまた状況如何によっては恐怖をもたらすものなのですから。もっとも、まだすべてははじまったばかり。加速を開始したばかり。
前人未到の領域へと踏み入ってしまうのは、むしろここから。三巻こそが本番中の本番、と言っていいのかもしれません。ここで一旦区切られることが、救いなのか嬲りなのかは微妙なところでありますが。

とは言え、一旦加速しだしてしまった中で、巻末の番外編はひとときの憩いですなあ。物語が急転する前の、平穏な日常……というにはぶっ飛ぶ過ぎていますけど! 
ひっくり返って笑ったわ、「目からビーム!!」
ガクちゃんの換装システムすごすぎw

1巻感想