六花の勇者 3 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

【六花の勇者 3】 山形石雄/宮城 スーパーダッシュ文庫

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騎士か、叛徒か。
勇気か、暴走か。
テグネウの脅威にさらされたまま、魔哭領を奥へと進む六花の勇者たち。
その道中、ゴルドフが突如「姫を助けに行く」とだけ告げ、アドレットの制止を振り切って姿を消す。
不可解なゴルドフの行動に、六花は再び混乱に陥る。
ゴルドフが「七人目」なのか、それとも何かの策略にはめられているのか…!?
さらに、再び現れたテグネウは凶魔たちの内紛について語り、挙句に自分と手を組まないかと提案をしてくる。
果たしてその真意とは?
伝説に挑み、謎と戦う、圧倒的ファンタジー、第3幕!
敵地に突入してからもう三巻目になるというのに、さらに状況をシッチャカメッチャカにした挙句に謎を解いて真相にたどり着かないといけない、という所に放り込んでしまう舞台の整え方にはホントに感心してしまう。それも、今回に至っては「七人目はだれか」という問題とは一線を引いて、ナッシュタニアの再びの介入という一点から混乱を波及させていくのだから、もうワヤクチャである。
ナッシュタニアの裏切り以来、沈黙を保っていた、というかもう完全に魂が抜けた状態だったゴルドフの覚醒篇。個人的にはもっと早い段階でこの人は動いてもおかしくないと思ってたんだが、彼の出自と心情が回想によって明らかになってみると、やっぱり決断が遅すぎたんじゃないか、と思わざるをえない。だって、こいつどう考えてもニンゲンとか他の仲間よりも姫様優先、というよりももう姫様以外どうでも良い、と思っていてもおかしくない奴じゃないですか。それが、姫様の裏切りに対してショックを受けて今までグズグズしていた、という方がこうなってみると不思議に思えてくる。
とは言え、一度動き出しさえしてしまえば、一心不乱。アドレットさえたどり着けなかった真相に、我武者羅に突き進むことで強引にたどり着き、目的を達した彼こそ、騎士の鑑なのだろう。尤も、勇者としてはやはり落第なのだろうけれど。
さすがに、今回についてはアドレットは与えられていた情報が少なすぎる上に得ていた情報が殆ど誤っているか意図的に捻じ曲げられたものだったので、彼が負けてしまったのにも同情の余地がある。
最大の敗因は、前回と違ってアドレットがゴルドフを信じきれなかった点にあるのでしょうけれど。それもまあ仕方ないんですよね。アドレットは仲間であるゴルドフについては深く考察できても、ゴルドフの行動基準であるナッシュタニアについては、裏切り者である以上それ以上深くはその行動や考えを掘り下げようとは思わなかったわけです。アドレットは今回の一件について鍵となるのはゴルドフだ、といってましたけれど、正しくはナッシュタニアをこそ狙い定めて見極めなければならなかったわけです。とは言え、アドレットの立ち位置からナッシュタニアにターゲットを絞る発想はなかなか生まれないし、何より彼女について考察するための情報からして殆ど無かった以上、今回については無理ゲーに近かったと思われるのですが。もし今回、アドレットが勝利者となるためには、分析材料が足りない以上、根本的にアプローチから変えて行かなければならなかったのでしょうけれど、チャモのリミットがあったために、足を止めてちゃぶ台をひっくり返すために頭を働かせるよりも、釣り餌に食いつくことを選んじゃったんですよね。まあ、判断ミス、負けと言われても仕方ないか。

今回の一連の出来事は、ナッシュタニアの思惑通り、みたいに語られちゃってるけれど、どう考えてもなし崩しに一縷の望みにすがりついたようなものですよね。ハッキリ言ってそうなる前に、そうならないような方法を準備しておきなさいよ、と。覚悟している大前提が無茶苦茶すぎて、挙句解決方法が完全に丸投げじゃないですか。
こうしなければ、最後の状況に持って行け無かった、というのなら解らなくないのですが、リスク高すぎる上に結果論にしか見えないんだよなあ。
テグネウと比べると、やっぱり役者が違うように見えてしまう。
一方のテグネウも、こいつはこいつで遊びすぎですよね。やろうと思えば、いつでも仕留められる立場にいるくせに、獲物を目の前にくだを巻いている。余裕を見せすぎなんだが、現状ではその余裕に見合うだけの隙の無さに腹が立つ。

ともあれ、今回の一件を通じて、ナッシュタニアではない七人目はテグネウの手の者、というのが明らかになった。じゃあだれなんだ、という話なんだけれど、前回はだれも怪しく思えない、だったのになんでか今回終わってみると誰も彼もが怪しく見えてくる、という始末。辛うじて内面描写のあったモーラは大丈夫、に見えるんだけれど、それこそ油断を誘っていて、実はさらに嘘をついていた、とか語られていないことがあった、みたいな展開も無きにしもあらずなので、可能性を否定は出来ない。アドレットについても、テグネウに憎悪を抱いている、という点からしてむしろ伏線なんじゃないかと疑ってしまうし、アドレットの師匠がそもそも妙な点があるんだよなあ。
というわけで、いくら考えてもしかたがないので、次ね、次。

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