魔女の絶対道徳 (ファミ通文庫)

【魔女の絶対道徳】 森田季節/NOCO ファミ通文庫

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目の前の正義はなまやさしいものじゃない。

「束縛のない人生が一番だ」連続殺人事件の犯人を追っていた俺、水主頼斗は、逆に縛り上げられてしまった……。
そのピンチを俺は「天狗」の少女、輪月に「天狗の血を引く」という理由で助けられた。
いや、むしろ改めて輪月に拘束された。ところで、お前の手伝いをするのはいいけど、事件って解決してるの?
俺、咒師っていう和製魔法使いで、事件が解決しなかったら実は死ぬんだけど……大丈夫?
正義の和製魔法使いと不純少女の青春怪奇ストーリー!
不純少女というか、このヒロイン思いっきり下ネタ好きなだけじゃないかw とにかく下ネタを挟まないと死ぬとでも言うかのように、事有るごとに下ネタを振ってくる天狗さん。この人がメインヒロインなのかー(笑
いや、これはある意味面白い関係ではあるんですよね。天狗に吸血鬼の少女たちは、この咒師の少年に粉かけてくるのだけれど、彼女たち自身が明言しているようにぶっちゃけそこには愛だとか恋だとか言う甘酸っぱい感情は皆無。じゃあ逆に冷徹な計算に基づく損得によって割り切られた関係なのかというと、そこまでキレキレに冴えた関係でもなく、かなり軽い感じで偶々条件にハマった頼斗くんを「とりあえずキープ!」みたいな感じで縄をつけているような状態なのである。見た感じ、照れ隠しなど本意を伏せている素振りもなく、本気で恋愛感情はなさそうなのだ。まあ、愛はないけど体だけどうだい? と迫られて男としてはどうなんだ、という話である……よろしくお願いします、とそれならそれで、という人がぶっちゃけ若人としては多い気もするんだが、純情青年で事情もあって現状自分の生命が失われるタイムリミットが迫ってかなり切羽詰まってる頼斗くんはそれどころではなく、あたふたと街の境界の均衡を乱している連続殺人事件の犯人を探しまわっている。何しろ、容疑者は自分にちょっかいをかけてくる輪月と吸血鬼の少女だ。オマケに、二人の少女はお互いを犯人扱いして一触即発。双方の言い分にはそれぞれうなずかされるところもあり、頼斗は自由極まる二人の少女の言動に振り回されることになる。
ウハウハと浮かれて喜んでいる場合ではない。
誰が連続殺人事件の犯人なのか、という真相追求編も、なにげに輪月が言動から振る舞いから怪しさ極まっているので、メインヒロインが犯人か!? という展開も充分あり得ただけに、まあ掛け合いが総じて軽妙で、輪月がとかくシリアスな場面でも下ネタを欠かさないものだから緊張感という点については全くなかったけれど、展開そのものはなかなか先を読めないこともあってか面白かった。
挿絵でのキャラクターの眼力が、折々に触れてなかなか凄みのあるゾクッと来るような絵が配置されてたのも大きい。輪月が血なまぐさい行為に忌避感がなく、また主人公も締める所ではいい意味で冷たく自分を大事にするタイプで、何だかんだと救えない展開が待っていたりと、軽妙なやり取りの割にダークで淀んだ雰囲気が漂っているのも、結構引き締まった空気になってて読み応えあったように思います。
森田さんって、変に全体的に緩くやろうとするよりも、根っこの部分がダークだったりシリアスだったりする展開の方が、軽い丁々発止な掛け合いが冴えてるような気がするんだが、気のせいだろうか。
いずれにしても、伝奇でダークなラブコメ? な本作、一冊で終わりというのはちょっと勿体無いと思わせてくれる面白さでした。続かないのかな?

森田季節作品感想