のうりん 5 (GA文庫)

【のうりん 5】 白鳥士郎/切符 GA文庫

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現代動物調教研究同好会――通称『どうちょけん』。
それは私、良田胡蝶が新たに創部した、人と家畜の心を通わせるための部活である。

古来より人類は動物を伴侶とすることによって栄えてきた。
畜産なくして人類の繁栄はなく、 だからこそ……ん~? どうちたんでちゅか若旦那?
おなかペコりんでちゅかー? ママが食べさちてあげまちゅね~(ハート)

……そんな私の前に立ちはだかる黒い影! 飛騨高山のライバル校、過激な動物愛護団体、
そして……謎のサングラスの男!! 貴様は――!?

人は虚無の畜産にぬくもりを見つけられるか!?
おっぱい大増量で贈る農業高校ラブコメ、緊迫の第5弾!
――君は、牛の涙を見る。
【SHADOW SKILL】って、幾らなんでもネタが古いよ! わっちが高校生の時だぞ、連載していたの!! って、思って調べたら、ええっ、これ今も連載してるの!? 知らんかった! 全然知らんかった! なんかしらんうちに休載になってそのまま止まってるのかと思ってましたよ。たまに見かけていた販売タイトルはてっきり昔のを新装版にして出し直しているのだとばかり思ってた。
と、冒頭から話がこの作品とは全然違う所に言ってしまったが、今回はわりと全体的に真面目なお話でした。これで真面目なの!? とか言わない。真面目なんですよ。普段はもっと酷いんですよ!
考えてみれば、18歳以下の未成年において家業を除いてこうも日常的に生き物の生死に携わるのってまず畜産系の学校に通っている学生さんたちくらいなんですよね。他、なんかありますかね? 咄嗟に思いつかないんですが。動物に関わる部活などはあるかもしれないけれど、畜産というところは生き物を「生産」し、肉などにして「出荷」する、生かすだけではなく必然的に「殺す」事を求められる場所であります。勿論、慣れることによって日常的に起こる家畜の生死についていちいち考えなくなる、と言うことは当たり前のことなのでしょう。でも、大人ではなく多感な思春期の少年少女たちが、こうした人の都合によって生み出され、消費されていく動物たちに携わっていく、という経験はとても大きなものなんじゃないでしょうか。
登場人物の中でも非常に真面目で目の前で起こることから将来の展望に至るまできちんと向き合い、真剣に考えることをやめない、やめることのできない良田さんと過真鳥継は今回特に人間のエゴによって消費されていく家畜たちの姿に、畜産業の行く末に思いを馳せ、悩むことになる。
本作はもう頭おかしいんじゃないかというギャグが飛び交うとんでも無い作品なんだが(苦笑)、こと現在の農林畜産業というテーマについて語るときには非常に丁寧に今この業界では何が起こっているのかと解説してくれる。それも、一方的な視点によるものではなく、一つの事例についても何が正しいと言わずそれぞれ違う主張を並べて、公平に読み手に考える機会を与えてくれる事には大きな好感と信頼を抱いている。多かれ少なかれ自分の意見が混じりそうな所を、本当にフラットに偏向なく情報を発信してくれるのだから大したものです。こうしたバランス感覚はなかなか養えませんよ。
それでいて、ただ機械的に意見を並べ立てているだけじゃないんですよね。何が正しくて何が間違っているか、どの方法が将来この国を豊かにし、業界をもり立ててくれるか。そこには答えはないのかもしれません、でもそうした正解のない問題とはまた別に、揺るがない倫理観……純朴で誰もが共感できる一番シンプルな倫理観については、一切ブレず厳然と、これは蔑ろにしてはいけないんだよ、と主張して退かない、そうした毅然としたスタンスを貫く様には敬意と安心を覚えるのです。
今回のテーマである畜産というものに対して、最後に良田さんたちが見せてくれたものは、様々な問題に対しての答え、ではなく、最低限の基本的な在るべきスタンスというものでした。決して失ってはいけない姿勢というものでした。たとえ、どんな答えを出そうと、どんな道を辿ろうと、その姿勢さえ見失わなければ……そう思わせてくれる結末であったように思います。
普段にもまして色々と考えさせられるお話でしたけれど、うん……すごかった。そしてなにより面白かった! ほんと、いろんな意味でぶっ飛んだ作品ですよ。

白鳥士郎作品感想