ノロワレ 人形呪詛 (電撃文庫)

【ノロワレ 人形呪詛】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

Amazon

双子の弟・真木現人は兄の夢人のことが嫌いだった。主人公の虐めと呪いをテーマにした小説『呪験』で十五歳にして作家になり、上京した夢人。そして、その内容に影響された殺人事件により帰郷するのだが、彼は七屋敷薫という婚約者を連れていた。―七屋敷は呪われている。七屋敷の花婿は、呪いによって、二年と経たず早死にするのだ。そんな『呪い』が噂される婚約だが、夢人は嘲り笑いを浮かべるだけだった。そして、夢人を尊敬し慕う妹の信乃歩に、彼らを蝕む呪いの物語が、静かに始まりを告げていた―。甲田学人が放つ呪いの物語、開幕。
うわぁ、ヤバイヤバイヤバイ。本邦屈指のホラー作家甲田学人の新シリーズは、もうのっけからヤバイ感じが荒れ狂っていて、もうやだ怖い。
前回が「童話」をテーマにした物語だとしたら、今回は「呪い」をテーマにしたお話なのでしょう。その導入というべき第一巻は、呪いの中でも最も有名でありましょう人形に纏わる呪詛。なにしろ、主人公(?)となる夢人からして、「呪い」を蒐集している人物であるからして、そりゃあわんさと呪いも集まるでしょうよ。
そんな呪詛に纏わる物品や逸話を集めたり関わったりして、夢人本人がノロワれないのか、呪いが恐ろしくないのか、と当然のように疑問に思い、その性格の破綻具合に戦々恐々としていたのですが……彼が呪いを求める理由の正当性を知ってしまって、頭を抱えることに。こりゃあいかん、呪いが効かないと確信していたり舐めてるわけじゃなく、むしろ相当に切実な理由があるじゃないですか。どんだけ切羽詰まってるんだ。あまりに切羽つまりすぎて、おかしくなってるとも言えるのですが、むしろ精神がおかしくなってないと耐えられないんじゃないかという状況でもあり、とにかくヤバい。
どう見ても性格破綻者、異常者の類か異端者かと思われた夢人のロジックが、真相が明らかになることによって完全に筋の通ったものだとわかった時には納得すると同時に背筋が震えました。そりゃあこんな事情を抱えていたら性格も歪むよ。
でも、考えてみると夢人が抱えている事情って、地獄が信じられていた時代にはすべての人間が置かれ抱えていたものでもあるんですよね。悪いことをすれば地獄に落ちるよ、という考え方を今の人は多分軽く捉えているけれど、かつて地獄や極楽といった死後の世界が本当に信じられていた時代においては、地獄に落ちるという末路がどれほど真剣に、深刻に恐れられていたか。地獄という世界の悲惨さ、無残さ、残酷さの描写は調べてみると想像を絶するものがあります。凄いですよ、マジで。よくまあ、こんな残虐な刑罰を思いつくな、と感心するくらい。これを死後、実際に味わうのだと信じていたら、とてもじゃないけど悪事なんて働けませんよ。
尤も、生前から地獄堕ちを決定づけられている人間なんて居ないわけで、それを思うと夢人が置かれている立場というのは悪夢どころじゃないんでしょうけれど。

しかし、いつ殺戮がはじまるかと震え上がっていたんですが……あれ? あれれれ!?
誰も死ななかったぞ!?
……誰も死んでませんよ!?
えええええええ!?
ちょっ、このパターンだと最低でも関係者は全滅。無関係な人が巻き込まれて死ななかったら御の字、という普通四、五人は死んでておかしくない展開だったのに。まあ、そのペースで人が死んでいくと、この村や学校から住人が居なくなってしまいかねないんですが、それでも誰も死ななかったことに安心を覚えるのではなく、むしろ不安を覚えてしまうのは、甲田作品に慣れ親しんでしまった証拠なんでしょうか。
だって、いつ地獄絵図がはじまるか、爆発寸前の爆弾が燻ってるようなものじゃないですか。しかも、ほぼ確実に爆発する予定のw

もう一つ以外というか虚を突かれたのが、夢人の婚約者である七屋敷薫が思いの外まともな人だった事。なにげに妹や現人と比べても、普通にまともな考え方の人だったんじゃないか? 勿論、あの夢人の理解者という時点でどう間違っても普通でもマトモでもないんですが。

甲田学人作品感想