0能者ミナト〈5〉 (メディアワークス文庫)

【0能者ミナト 5】 葉山透/kyo メディアワークス文庫

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完璧な降霊術で人を集める『彼岸の会』。天性の法力を持つユウキは直感し、降霊術がまやかしだと糾弾する。だが、主催者の士道骸に手玉に取られてしまうのだった。この男、総本山から野に下った切れ者で、まったく隙がない。かくして、業界ではいかさま師と揶揄される湊の出番である。0能者対詐欺師の稀に見る攻防は、騙し合いの熾烈な駆け引きへと発展していく。霊を降ろしている様子はないのに、霊と完璧に対話してみせる。その矛盾を湊はどう解体してみせるのか。
0能者VS詐欺師って、やってることは完全に詐欺師VS詐欺師のシロサギVSクロサギじゃないですかww
今回は短編一話、中編一話の二話構成。何気に短編のほうがとんでもないのと戦ってる気もするんですが。
第一話の短編「石」は、とある町で開催されている「大幽霊妖怪展」という博覧会に展示してある「夜泣石」を調べに来たユウキと沙耶の奮闘編。
珍しく、湊が居らず沙耶とユウキの子供二人組で、起こった事件を解決することになる。二人共霊能者としてはすこぶる優秀なために、生半な相手なら力技でねじ伏せることも可能なはずなんだけれど、こういう時に限って相手は力でねじ伏せられるような相手じゃないんですよね。特にユウキなんて異能バトルもので主人公でも中ボスでも張れるような天才くんなのに。何気に、今回は沙耶も大立ち回りしていますし、アクション的にも派手な回だったような気がします。とは言え、そうした直接的な攻撃でどうにかなる相手ではなかったので、いつも思わぬアプローチから攻略法を導き出す湊さんがいない以上、代わりに沙耶が相手の素性や能力を見抜き、対処法を考えざるを得なくなるのでした。以前の彼女たちならばここで思考停止してしまいかねないのですが、湊の助手として根底からの発想の転換や、古い時代には未知の現象だったとしても現代においては解き明かされた物理現象であったケースなど、幾度も霊能者としての自分の中の常識をひっくり返されてきた経験が、ここで生きてくるわけです。若いが故に、古い考えにとらわれないとも言えますけれど、この子たちもちゃんと柔軟な思考を育てていたんだなあ。
正直、あんな録音で再現できるのか、とも思ったけれど、過去の伝承においても犬追物で代用できているからには、細かい周波数とかは問わないでいいんだろうな。しかし、夜泣き石の本当の正体が……、というのには素直に驚いた。こいつは相当にヤバい案件だったんじゃなかろうか。

第二話の「詐」はあらすじにもある通り、イカサマで信者から金を巻き上げる詐欺師との対決編。とは言え、本作は本物の怪異を現代の知識で攻略する、みたいな方策でまかり通るお話だけに、完全にイカサマではなくそこには降霊術とは違うものの本物の怪異・異能が関わってくる。彼岸の会の代表が総本山の出身者である以上、本物に対する知見も多く有しているわけですしね。
まあ、このイカサマの正体についてはそれほど複雑に入り組んでおらず、ある程度見てたら気づく事が出来るでしょう。ということは、あとは湊の悪辣で陰険で詐欺師をもだまくらかす手練手管を堪能するだけであります。
でも、ユウキや沙耶もこの頃は湊に任せっぱなしでその後をついてくるだけではなく、自分の考えで積極的に動くようになってきているのには目を細めたくなる。湊の武器となったものも、なんだかんだと沙耶が手に入れてきたものを活用したものでしたしね。
それと、あとから出てきたあれは、なんか【うしおととら】リスペクト、って感じでしたよね。キャラクターがまんまアレの通りでしたし。あの話はうしとらでも傑作だっただけに、結構感慨深い。お前は其処で乾いてゆけ。
攻略法は、凄まじいばかりに湊らしくありましたけれど。でも、この時は湊も相手の襲来は唐突すぎて何も準備していなかったはずですし、よくまあ徒手空拳でねじ伏せられたものです。あれの攻略法として伝えられているものとは、まるで真逆を行くやり方であったのは、やっぱり面白いなあと溜息をつかされるところですけれど。

さて、次回は満を持して、といいましょうか、理沙子と孝元に湊を含めた大人トリオにスポットがあたる可能性が高いそうで、過去編でも現代で改めて三人が組んで事件を解決するにせよ、これは素直に楽しみです。

葉山透作品感想