皇国のフロイライン (富士見ファンタジア文庫)

【皇国のフロイライン】 河端ジュン一/遙華ナツキ 富士見ファンタジア文庫

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4年前。桐原有は突如現れた「化物」により、幼馴染の女の子を失った。絶望の淵で己の無力さを噛みしめる彼の前に現れたのは、2人の少女。「あたしがあなたの剣になる」―真宮真琴は宣言し、「わたしが書庫になりましょう」―佐伯白乃は呟いた。そして現在―高校生になった桐原たちは「化物」を捜し、滅すためのシステム“皇国”を作り上げていた。だが、そうして今も「化物」を追う桐原の前に現れた、巨大な銃器を持つ少女。それは、あの日失ったはずの幼馴染の女の子だった…。新鋭が描く、希望と絶望に彩られた物語がいま開幕。
あらすじと導入だけで、あっこれは面白そう、読んでみたい! と思わせた時点で掴みは抜群。その上、一つ一つのフレーズが十分な打撃力を有しているというのは、ライトノベル作家としては大きな武器ですよ。
ポイントポイントで印象に残るシーンや、ガツンと来る心象描写を描いてきますし、この作者は感覚的な部分で「魅せ方」というのを見事に心得てる。このセンスがとにかく超抜しているのは、たとえばあざの耕平さんなんかがそうなんだけれど、この河端さんも間違いなくその系譜に連なるタイプなんだろう、と実感できる出来栄えでした、本作は。もちろん、まだまだ溜めとか振りとかが足りなかったりせっかちだったり、ちょっと安易に転がしてしまう部分や研鑽や掘り下げが物足りない部分などたくさん見受けられるんだけれど、どれも手を抜かず妥協せずに物語を書くという事象に身も心もどっぷりとのめり込んで行けば、いずれ研ぎ澄まされ磨きぬかれて拭われていく部分ばかり。そもそも、一本の物語として俯瞰してみれば、かなり構成も整っていて完成度も高いので、ほんとあとは貪欲に自分の描く物語の奥底に真髄に溺れていくことだけなんじゃないだろうか。そうすると、「魅せ方」の威力が弥増すんですよね。ばかみたいに面白いエンタメ作品を書く人の傾向には、そういう部分が少なからずあるのだと私は思ってますし、この人はそういうタイプなんじゃないかなあ、と。つまり、それだけ期待値がガンガンうなぎ登るようなスタートラインだったんですよね。
個人的には将来の有望株としてすごく買いたい。
もちろん、そのまま失速していってしまう可能性もあるのですけれど。
冒頭の掴みでは、幼馴染の少女の喪失こそが重要な軸だったにも関わらず、再会に至る展開はえっそんなんでいいの!? という拍子抜けを否めないものでしたし、その後の物語の転がし方も結構強引な所がありましたからねえ。
皇国のシステムも、やりたいこととその実証がもう少し伴っていない感じ。戦力が足りてないのもあるんだろうけれど、実行力がそもそもかなり怪しいですもんね。対バケモノ戦を最終目標としていたにも関わらず、色々と想定が甘すぎて実際に化物とぶち当たった時にろくに対抗も出来なかった、というのは最適解を求めるシステムとしては入力値がいい加減すぎたんじゃないでしょうか。
自分としては主人公の皇帝という立ち位置と、その役割については十分意味づけが叶っていたと思うのですが、ぶっちゃけ皇国というシステムがちゃんと成り立って動き出すには、異能者という存在の情報を得て、皇帝の能力が大まかにでも解明され、国内が安定し、小山内蓮という女王だか女教皇だかの戦力が加入した、次からが本番のはず。そういう意味では、今回は正しく導入回だったのでは、と。
今回は何だかんだと内輪の話になってしまいましたしね、皇帝の絶対性と無力さ、神算鬼謀を活かすにはどうしたって内乱じゃなく、戦争こそが必要ですし。もっとも、まだ白乃と蓮は不穏持ちで落ち着かないわけですが。
余談ではあるが、蓮の能力がひたすら大型火器というのは気合入っていて大好き。ハンドガンで妥協しないあたりが特にw