やましいゲームの作り方 (ガガガ文庫)

【やましいゲームの作り方】 荒川工/nauribon ガガガ文庫

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PCゲーム業界のエピソードがここに!?

『人生はゲームだ』
そんなセリフをどこかで聞いたことがある。
ゲーム制作を生業としている俺には、ある種味わい深い。
膨大なシナリオ、盛りだくさんの選択肢、星の数ほどのグラフィックは超高解像度、BGMも効果音も絶えることがないし、もちろん幾多のキャラクターはフルボイス。さらに、プレイヤーのスペックによっては、難易度が変動する、業界でも類のないダイナミックシステム搭載ときた。採算度外視のその作りに、羨ましくてよだれが出そうだ。
俺の人生は、といえば、結構いいかげんだったわりには、そこまで大きな山も谷も無し……言うなれば、イージー寄りのノーマル、そのあたりだった。
『だった』と過去形なのは、このたび、ついにエンディングを迎えたからだ。
ちなみに今は俺の葬儀の真っ最中。
俺はどこに出しても恥ずかしいアラウンドフォーティ、略してアフォのおっさんだったんだが、息子の身体に乗り移ってしまったんだ――――あ、息子が『身体を返せ』と叫んでいる……。

息子(の身体)に協力してもらいPCゲーム作りに励む、ちょっと不思議テイストの業界ラノベここに誕生!!
変な作品だなあ!!(褒め言葉
いや、まったくおかしなお話である。ラブコメでもないし学園モノでもない、青春モノというには主人公がアラフォ〜のオッサン、しかも子持ちである。その上死んでいる。別段青春を謳歌し直す話でもない。
ぶっちゃけてしまうと、突然死んでしまってやり残してしまった仕事を、同僚や会社に迷惑がかかるし気になって仕方ないし、なんとか手伝って仕上げてしまう、という……お仕事モノなのか!?
業界の内輪話みたいなエピソードが度々介在するあたり、疑問符をつけるまでもなく業界モノのそういう話なんだろうなあ。しかし、お父さん当人は職場で恋愛が発生する余地がないみたいな事発言してますけど、社員がみんな二十代の若い女の子で、お父さんがまだ四十前。しかも、奥さんを亡くして独り身、なんて環境、たとえ高校生の息子が居るからって、全然脈なしなはずないじゃないですか。環境設定だけである程度フラグが最初から立っているようなものですよ? しかも、女社長ときたら、プライベートでも度々息子の朝ごはんとか用意してくれてるような親密さですし。
ところが、これがどうやら本当にそういう色恋沙汰の卦は皆無だったようなんですよね。えー。いやあ、お父さんがそういう話を、ないない絶対ない、みたいに言ってるのが妙にこう、実感が篭ってて、作者当人がお父さんに感情移入しているというか、自分を照らし写しているというか、シンクロ率高めて書いてらっしゃるのね、という生暖かい眼差しになってしまいました……ものすげえ失礼だなw
お父さんは気にしてないけれど、息子からすると自分の父親と体を共有して自分の生活を覗き見られるとか、精神的に死ぬよね、死ぬよね? 繊細でなくても死にます。死なせてあげてください。どんな恥辱プレイだよ。しかも、学校での自分の情けないありさまを余すこと無く見られるとか……死ぬ死ぬ死ぬ。
と、息子サイドで感情移入してしまうと正直たまらん気持ちになるのですが、これはもう心底お父さん視点で没入しているので、そういう息子の感情はなだめてポイである。ぞんざいというなかれ、そんなもんだ。

しかし、こうお父さん視点だと、息子と仲良くしてくれる女の子というのは不思議な感覚で見てしまうものなんですなあ。平栗さんその人が、妙なところでポワンポワンとしてて反応も可愛らしい、鑑賞していてキュンキュンしてしまう楽しい娘、という理由も大いにあるのだろうけれど、あくまで見守る対象なんですよね。普通のヒロインという感覚で見ていないんですよね。微妙に一線を引いて見守っていて、その視界の中にやきもきしている自分の息子の様子も写っているみたいな。
こうした感覚は、普通のライトノベルではとんと味わえない感覚なので、妙に新鮮で不思議なものであります。って、徹底して仕様がおっさん向けな気がしてきたぞ(笑
とはいえ、お父さんがいささかちゃらんぽらんなダメオヤジ過ぎて、父と息子の男同士の家族愛とか父親の威厳とかかっこ良さとか、そういうのが全然皆無なのも摩訶不思議さに拍車をかけている気もしないでもないけど。実は仕事場ではカッコ良かったんだー、ということも殆ど無く、仕事は結果的に見ればちゃんとやるけれど、結構アレすぎる手法やアコギな事もやってました、という働くお父さんの背中あんまり格好良くもないよ、というような姿でしたし。仕事内容に関しては家族モノという側面は一切無く、あくまで仕事モノ。世知辛い現実をうまく世渡してなんぼ。幻想は燻し殺す、みたいなお話でしたし。まあ暗い内容では全然なく、人脈は大事だよ、良い人と仲良くしてたら、たくさん助けてもらえるよ、という相互扶助的な話題が多く、また人それぞれに仕事に対しては真剣に打ち込み、自分なりに真面目に、深く考えて頑張ってるものなんですよ。意外と自分以外の人のそんな様子には気が付かないもので、だからこそもっと腹を割って話し合うものまた善いものですよ、というなんかイイ話にもなってましたし。
まあ、大概無理ですけどね! だいたいそこそこ交換できれば御の字でしょう。そういうのが成り立ってる職場って、殆ど理想的って言っていいんじゃないだろうか。その意味では、お父さんの勤めてたやましいゲームを作る会社は、お父さん自身大変満足していらっしゃったように、良い職場なんでしょうねえ。
だからといって、息子もそこに勤めるというのはどうよ、と思うけどw

って、続くのか!?