小夜音はあくまで小悪魔です!?3 (講談社ラノベ文庫)

【小夜音はあくまで小悪魔です!? 3】 東出祐一郎/吉田音 講談社ラノベ文庫

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一崎嶽人は元・最強自宅警備員にして死後その魂が人類を救う“魂遺物”となる少年である。現在守護契約中のメフィストフェレス小夜音、四大天使・ガブリエルの二人の美少女とキャッキャウフフの(!?)同居中の嶽人。そんな彼に神の御名の下にくだされた使命は「世界を救いたいなら死んで魂遺物となれ」だった!現在地球激突コース上にある巨大隕石をうっちゃって人類を救うためには、嶽人はさっくり死んで“魂遺物”にならねばならないらしい…困惑する嶽人と、状況を受け入れられない小夜音たちは起死回生の策を練り、神の意志に乾坤一擲の反撃を企てる!そして神の“真意”とは!?天と地を駆けめぐるアクションラブコメ第3巻登場。
おおっ、これは面白かった! てっきり東出さんの事だから、最後は神に対する反逆だー、とばかりに血みどろのバトル展開になると思ったら、最初の方針のとおりにポップでラブなお話のまま世界を神の滅びから救うお話になりましたよ。いやいや、いったいどこまで「作者=血みどろ」のイメージを固めてるんだか(苦笑
しかし、これが中々妥協しない突き詰めたお話で、結構読み応えあったですよ。自分一人が死ぬことで、大好きな人を含めた世界全体が救われることに対して、少年が感受し巡らす想い。この嶽人の心の成長というか、他人との関わり方、自分を含めた世界の中で生きるという事への受け止め方の変化へのアプローチが非常に実直といって良い真摯さと丁寧さで、思わず感嘆してしまったくらい。こういう、他者からのアプローチで主人公の意識が変革していくという展開は、結構なあなあで済ましちゃう人も多いんですよね。えらく何となく、で済ましちゃうような、流れでそういう風になっちゃう、という説得力が感じられない、ある意味キャラクターと向き合っていないというか、キャラクターの内面を掘り下げて解体し暴いていく作業を蔑ろにしているというか。そういうの、えらくしんどい、面倒くさい、というのは分かるんですけれど、それをやるとやらないとではやっぱり大違いだと思うんですよね。キャラクターに真に実と肉を与えるのは、そのキャラの裏も表も奥底までも暴いて解析して理解して行く事なのですから。
実のところ、ノベルゲームのシナリオライターはわりとそういう作業、得意な人多いと思うんですよね。ヒロインを攻略するのって、そういうキャラの内面を解体していき、同時に変革していくような展開が多いと思うし。まあ出来てるかどうかは人それぞれでしょうし、更に言うとそれが出来るのは長大なシナリオがあってこそ。一冊の文庫サイズに圧縮して、コンパクトに出来るかというと、それもまた難しい話だとは思うのですけれど。
でも、東出さんはそのあたり、完璧に適応すんでるんだなあ、という印象。特に今回は、嶽人くんが空虚な献身から、メフィストたちの愛情を受けて生きたいと願うようになり、そこからお祖母ちゃんに世界を見せてもらって、世界の素晴らしさを知り本当の意味での献身を心に抱き、そして神と直接対面し現状に対して疑問を覚える、という流れが性急さを欠片も感じないくらい丁寧でありながら、ほぼこの巻の前半部分までに収めてしまう、というコンパクトに纏め切っていた事からも間違いないかと。あの嶽人の心の移ろいの過程は美しいといっていいくらいスマートでしたし、その鏡写しのように、彼を取り巻くメフィストたちの切実な心情も描ききれていましたし。
嶽人とメフィストたちがもう夢中になってお互いを求め合うまでの気持ちに至るシーンなんて、想いと本能が綯い交ぜになって高まり切ってて、切実さといい純愛性といいエロさといい、最高だったですよ。
エロゲだったら、完全に本番突入でしたねw
正直、アレはもうヤッちゃってても話の展開的にも何らの問題もなかった気がするんだが、なんかレギュレーションでもあるんだろうか。

ともあれ、嶽人があれ? と疑問を覚えるまでの話の流れでも十分おもしろかったんですけれど、ここからまさかのちゃぶ台返し、前提の転換が行われる。というか、神様の隠された真意が明らかになるんですが、これはまるで予想もしていなかっただけに、「なんとーっ!?」と驚いたの何の。いや、これは面白い、実に面白い。
チェスをやっていたと思い込んでいてチェックメイトを打たれた、と思っていたら、実は将棋で必至にかかっていた、という感じか……いや、まったく説明になっていないな。
何にせよ、嶽人くんからすると根本的には状況は変わっていないんですよね。いや、ある意味余計に悪化したというべきか、大切なものを失ってしまう、という意味においては。
ただ、ここで自分が犠牲になれば、という選択肢が完全に消えてしまったのは、実に面白い。同時に、ここで彼が選んだやり方というのは、自分一人で頑張る、というやり方じゃなかったのも面白い。結局、嶽人とメフィストフェレス、そしてガブリエルや陽奈多、そしてお祖母ちゃんとの関係は一巻で得た結論と変わらず、一緒に手を繋いで、一緒に頑張ることが当たり前の関係。愛とは与え合うもの、という事をたとえ世界の危機を前にしても体現した、より純粋に高めた形に収まったということだったんですねえ。
詰まるところ、最後まで本作は素晴らしいラブ&ポップなハートフルストーリーだった、と言うことなのでしょう。二巻がかなりグダグダで大丈夫か、と思った本作ですけれど、エピローグの緩すぎる終わり方も含めて、とても大好きなお話でした。完結、オメ。

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