魔導書が暴れて困ってます。2 ま、どうにかしましょ (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。 2.ま、どうにかしましょ】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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伊佐木イリーナとともに危険な魔導書を封印しながら、六道島での穏やかな日々を送る謙児のもとに新たな美少女魔導師、宇此鳴アンリエッタが現れた。伊佐木家の分家にあたる宇此鳴家のアンリエッタの来訪に、イリーナの妹の冬菜はなぜか動揺する。時を同じくして、謙児同様に邪神の血をひく赤毛の男、ボルホス・ハドリッドが六道島に現れて…。瀬尾つかさの新境地、第2巻。
なんか、イリーナさんのイジられキャラがプロの域に達してきた気がする。プロの弄られ屋? ラストの猿のアルキメデスにかまけたやり取りなんて、コントとしてはほとんど完璧でしたよ?(笑
いやあ、しかし面白い。最近の瀬尾さんの作品は好んで読んでいるつもりなのですけれど、その中でも本作は特に充足が進んでいるように思う。第一巻はまだ手探りな部分が伺えたんですが、この二巻は謙児くんとイリーナさんの関係が定まったというか収まったというか、とにかく揺るがない形で完成されたせいか、作品全体にどっしりとした安定感が出た感があります。前半はアンリエッタの登場と冬菜の動揺、後半はボルホスの襲来からかなり目まぐるしく話が動く展開になるのですが、謙児・イリーナラインという幹がしっかりとあるために、新キャラの登場、既存キャラの掘り下げ、急展開の連続という荒波を見事に捌ききっている。謙児くんという主人公の性格も大きいですね。わりときつい境遇ですし、過去現在未来と彼にかかる負担は大きく、並々ならぬ覚悟を要求される身の上ですし、実際覚悟も完了しているはずなんですが、彼には覚悟を決め受け入れた人間に特有の切羽詰まった余裕の無さが見当たらず、むしろ泰然自若として鷹揚に構え続けている。自分の立場を理解しきった上で、自然体なんですよね。単に受け入れているどころか、積極的に自分のため、イリーナのため、自分を助けてくれる人慕ってくれる人を守るため、利するためにその立場を利用し活用するにも意外と貪欲なあたりは、強かな一面もかいま見える。見ていても非常に頼もしい。
邪神の子としては格上と言ってもいいボルホスとの対面でも、実際の実力差を抜きにして対等以上にやりあっていましたしね。駆け引き上手、というのとはちと違う感じ。むしろここは貫目で釣り合っていた、というべきか。
こうして見ると、結構王様気質、という部分が大きいのかもしれない、謙児くん。ヒロイン陣との関係も、どちらかというと侍らしてる、という感もありますし。アンリエッタなんて、攻略と言うよりも文字通り陥落させた、という感じでしたし。
後半の急展開の連発も、事前に小出しにしていた情報から予測される展開を上手いことひっくり返した上で、さらに真打ちは実は此方でした、という見事に鼻先を摘んで良いように引っ張り回された感があり、小気味よさを感じるくらいでした。なるほど、今回のお話の核心がそこにあるなら、クライマックスがそうなるのはむしろ自然だったか。お行儀の良いやり方で攻めてくると思っていた所を、正面からの強行突撃を食らった気分。真っ向勝負が奇襲となるって、完全に上手いことしてやられた、ってなもんですよ。参った参った。
うん、キャラクターの掛け合いもなんだか思ってた以上にハマってきて楽しくなってきた。これは好きなシリーズになりそうです。

1巻感想